【新入社員を見守る伴走者へのアドバイス 2023】
新入社員研修から見えた今年の新人の傾向と今後の対策
人材育成担当者の皆さんはピークを乗り越えたものの、引き続き新入社員研修と個別対応で連日さまざまな困難に立ち向かっていることと思います。そしてその中で数年ぶりにリモートから対面に変えた研修で気づいたことや、コロナ後ということであの手この手を打ったが本当にこれで良かったのか? 他社の新入社員の特性や動向が知りたい…などの気になることが浮かび上がってきているのではないでしょうか。
執筆時点で約1,800人近い新入社員に研修を実施した中で見えてきた傾向と、現時点でフォローや強化が必要と思われる分野を解説します。
目次
今年ならではの新入社員研修
今年はパンデミックの影響を大きく受けた大学生活を過ごした経験を持つ新入社員です。一方で、企業はこの間にリモート研修を立ち上げてようやく形が整ってきています。当社もそうした状況に対応して各社への研修を実施してきました。
そこで講師として取り組んだ状況を以下の切り口でお伝えします。
研修の実施形態
2023年4月3日~21日の間に講師として担当した研修の延べ受講者は1,760名です。お客様の考え方によって研修の実施形態が対面研修、リモート研修、ハイブリッド研修の3パターンがありましたが、どれもとてもうまくいきました。
ハイライトと成功ポイントを紹介します。
参考:「何もないよりはまだ良いハイブリッド研修」の効果を高めるための工夫ポイント(2022年3月)
https://at-jinji.jp/expertcolumn/432
研修内容
全体的に見ると実施されている研修内容はパンデミック前とほぼ変わらないです。新入社員研修ならではのビジネスマナー、仕事の進め方、部門紹介は当然あります。以前より価値観教育とコンプライアンス研修を実施しているケースがあるように見えます。場合によって充実した技術研修もあります。
私は主にヒューマンスキルを担当しており、今年の新入社員研修の内容は図のとおり論理思考力、コミュニケーション、主体性向上の3つがメインです。
受講態度
- 去年・一昨年と比較して、今年の新入社員は全体的にストレスが少なくて、明るくて前向きです。研修に対してとても素直に取り組んでいます。
- また傾向として新入社員同士に助け合うという気持ちが強いです。例えば、リモート研修の場合にネットワークトラブルのある受講者がいると他のメンバーが代わりに画面共有をしたり、テクニカルサポートをします。
- 気になることとして対面研修の場合に一部の受講者が疲れて、集中力が少し落ちるケースがあります。これは演習がありすぎて、自分のエネルギーを使い果たし、スタミナ切れになっているようです。
- もう一つ面白い傾向は外部要因に影響されやすいことです。例えば、講義中心の研修の次の日だと演習に積極的に取り組んだり、金曜日だと集中力が少し落ちたり、部屋が暑いと眠くなったりします。当然だれでもある程度そのようになるものですが、今年の新入社員についてはその傾向が例年より強い印象を持ちました。
習得度
- どの受講者も自分のベストを尽くして積極的に学ぼうという姿勢を見せました。研修内容の理解度については問題ないです。ただし、グループディスカッションの内容が表面的なケースが多いです。
- また、話し合うことができても、新しいスキルを演習で使ってみる、ロールプレーなどをするとレベルが比較的低いです。スキルを身につけるために今後、反復演習が必要です。
- もう一つ残念なことは受講者同士のフィードバックが浅くて、あまりお互いの刺激と成長につながらないことです。
アドバイス
今後の必要なフォローについてはもちろん新入社員によって異なりますが、現時点で今後の強化とフォローが必要な分野はこの4つです。
(1) ロジカルシンキング・コミュニケーション
この1、2年、新入社員の論理思考力が弱くなっている傾向があるとよく耳にします。多くの新入社員はロジカルシンキングの基本的な概念(ピラミッド構造、MECEなど)はわかっているが、うまく使えないです。ライティングとスピーキングをする時にこの問題が特に目立ちます。
解決のヒントとして、もちろんロジカルシンキング研修を受けさせた方が良いですが、それだけだと不十分です。抽象的な概念を実際のビジネスシーンで使ってみないと身につけられないです。ライティングの場合にツール別(ショートメッセージ、メール、レポート、資料作成、プレゼンテーション)の具体的なヒント、演習、フィードバックが必要です。口頭のコミュニケーションに関しては研修の上に継続的な定着演習フォローがあって初めてしっかりと身につけられます。
(2) レジリエンス
配属されないとわからないが、感覚として今年の新入社員は指摘や批判を受けるとダメージが大きくて、落ち込みそうです。推測ですがパンデミックの中で人間関係のコンフリクトが少なくて、問題を直面して乗り越える経験が少ないと思います。
解決策として配属直前に職場のよくある問題と解決ヒントを中心にした研修を実施したり、配属後にケアをしてくれるメンターをつけたり、定期的にフォローする仕組みや研修を実施することをお勧めします。
(3) 応用力
新入社員は業務経験がないために研修で学んだことをどのように使うかのイメージがないのはある程度当然ですが、今年の新入社員にこの傾向が特に強い気がします。想定できる背景として、パンデミックの中で経験が限られ、今までのインプットを行動に起こす機会が少なかったことです。
応用力を強化するためには配属後の仕組みが必要です。(例:毎朝のチェックイン、毎晩の振り返り、毎週のリフレクション、毎月のメンターとの1on1ミーティング)。それ以外に新しいスキルを身につけるために反復練習のできる機会が必要です。その時に適切なフィードバックも不可欠です。
(4) 広い視野
2022年入社の新入社員の配属後の個別フォローで感じたことは周りに対する意識が低い、視野が狭い、物事を考える視点が少ない、先を考える能力が鍛えられていないことです。今年の新入社員も同じような傾向がありそうです。視野を広げて、多面的に考えるようになるためにメンターや上司からの気づかせる質問が効果的です。周りに対する意識を高めるためには多くの人との交流とさまざまなビジネス経験が有効ですが、短時間で効果を高めるには意図的に人と交流機会を作る必要があります。
最後に、先のことを自分でよく想像できないことがおそらく今後のキャリアに対して不安を感じることにつながる可能性があります。定期的にキャリアパスを見せたり、先輩社員のキャリアを情報共有したり、上司と自分のキャリアについて話し合ったりできるようになるために、キャリアデザイン研修を受けさせることをお勧めします。
まとめ
今年はパンデミック後に大学に入った初の新入社員研修です。リモートに慣れている分、ニーズによってどのような研修形態にしてもうまくいきそうですが、新入社員のロジカル実践力、レジリエンス、応用力、広い視野を強化するためのフォローが大切になる可能性が大いにあります。
今後は「新入社員を見守る伴走者」として走り続ける中で出会う場面のホットな実感を大切にしてゆきましょう。
そして新人育成の3本柱である「教える・気づかせる・支援する」が効率よく実践できる育成プラン・実践の仕組みになっているかをリアルタイムで検証してみてはいかがでしょうか。未来を支える新人のためにもがんばりましょう!
参考:経営者の期待に応える/研修目的に沿っている/研修改善に役立つ/職場の理解を得られる 2022年度の研修レビューって本当にできていますか?(2023年2月)
https://at-jinji.jp/expertcolumn/427
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