1on1の現状と今後 vol.5
1on1をうまく浸透・定着させるためのコツ
前回は、1on1を浸透・定着させるためのコツの一つとして1on1の定着ストーリーを描くStep1~4をご紹介しました。今回はStep3、4の詳細ついてご紹介するともに、浸透・定着の為のコツをご紹介します。
目次
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- Step3.1on1導入~定着までに想定される現場の反応予測
- Step4. 現場の反応予測に照らして必要なサポート・施策の検討
┗1on1の浸透・定着に必要な現場の安心感と効力感の醸成
┗効力感の醸成に有効な実践を振返る機会の提供と効果検証(アンケート等の実施) - 最後にお伝えしたいこと
Step3.1on1導入~定着までに想定される現場の反応予測
まずは前回のおさらいです。Step1は目的・状態・ゴール設定、Step2は導入プロセス設計でした。1on1を実施する目的やゴール、どのように組織に浸透していくべきか、考えて頂けましたか?
Step1.1on1を導入する目的/目指したい状態/ゴールの設定
Step2.導入プロセスの設計
Step3.1on1導入~定着までに想定される現場の反応予測
Step4.上記に照らして必要なサポート・施策の検討
Step3は、導入~定着までに想定される現場の反応予測です。
皆さんの会社で1on1を導入する場合、現場からどのような反応があるでしょうか。前向きな(後ろ向きな)人はどのくらいの割合で、それはなぜでしょうか。
営業系職種の場合には「顧客訪問の行きかえりで会話をしている」、オペレーション系職種の場合には「トラブル以外は話をする必要がないし、1日あたりの件数をこなしたいので時間が勿体ない」、企画系は「上司とざっくばらんに会話できる時間があると仕事を進める上でもありがたい」など、皆さんが日常行っている仕事のやり方も1on1に対する意識に影響を及ぼします。
また、「部下の人数が多い」「自分より年次が上の部下が多い」「労働時間過多で疲弊している」など現状置かれている人・組織状態によっても反応が変わります。
さらに、上司がメンバー層だった時の対話経験も影響します。指示命令・仕事の進捗管理の会話しかされてこなかった方は、1on1の意味や価値をすぐにイメージできません。「1on1=部下と話す時間」と捉え「それならばやっている(今は必要ない)」と、1on1の本質を知らないまま不要と判断される傾向にあります
仕事内容×人・組織状態×マネジメント層の対話経験、の3つの観点を以て各組織を捉えなおしてみると、次第に現場の1on1に対する反応がイメージできてきませんか? もし、具体的にイメージできない場合には現場視察やインタビューをお勧めします。現場の1on1に対する反応が予測できて初めて、適切なサポートや施策の検討ができます。予測ができないまま施策だけを検討・実施し、現場の実態とずれることで失敗の元になる事例をいくつも見てきました。必ず施策推進者の方ご自身が現場のリアリティを掴んでください。
Step4. 現場の反応予測に照らして必要なサポート・施策の検討
Step4は、現場の反応予測に照らして必要なサポート・施策の検討です。
Step3の解説でお伝えした通り現場状況は様々なので具体的に必要なサポートは企業・組織によって異なります。そのため、ここでは必要なサポート・施策は、何を目的として実施されるべきか? という観点からポイントをお伝えします。
1on1の浸透・定着に必要な現場の安心感と効力感の醸成
1on1は不慣れかつ長期的な施策です。形やルールだけ作って後は現場にお任せ、という企画側のスタンスでは失敗します。続けていくためには「これならできそう・続けられそう」という安心感と、「やってよかった」と思える効力感を意図的かつ継続的に醸成し、現場に伴走することが大切です。
安心感を醸成するための施策で最も代表的なのは研修実施による上司への1on1スキル付与です。
体系立てて1on1の進め方やスタンス・スキルを学習することで、不慣れなコミュニケーションを部下に行う不安を和らげる効果があります。
また、同僚と集まって1on1を巡って会話をすることで、不安や難しさを感じているのは自分だけではないと知ってほっとするという声もよく聞きます。
安心感を醸成する施策として最近よく実施されるようになったのは、部下向けの1on1目的理解の場の提供です。
1on1は上司部下双方が相手と会話する意思がないと成り立たちませんが、長らく上司のみが1on1の場を成立させる努力する構造になっていました。部下は1on1について理解を示してくれるか、自分と話をしたいと言ってくれるか、上司側も不安になります。
会社として部下に対しても1on1の意義・目的や1on1に臨むスタンスを直接アナウンスし、仕事の一つとして1on1に取り組んでほしいことを伝えておくことで、上司側の心理的なハードルはかなり下がります。
また、部下側も能動的に1on1に参加してくれるようになるため1on1の質が格段に上がります。上司・部下双方への適切な学習機会の提供は、安心感醸成の為に必須といえます。
効力感の醸成に有効な実践を振返る機会の提供と効果検証(アンケート等の実施)
数回1on1を実施しただけでも「お互いの考え方を把握し合えることで仕事の進め方がスムーズになった」「部下から話しかけられることが多くなった」などの良い変化は生まれます。
ただ、日常的には仕事を進めることに意識を向けているので、その小さいけれど大切な変化に気付くことは難しいです。あえて振返りの場を設けて1on1の実践が部下との関係性の深化や部下の成長に繋がっていると感じることで初めて「やってよかった」と効力感を感じられるのです。
この振返りを四半期~半年に1回は定期的に繰り返すことで、1on1を始める前とは大きく変化している自分や部下を実感し、1on1を続けることができます。
効果検証(アンケート等)をする場合には、必ず部下からの意見を聴くようにします。1on1の実践振返りはあくまでも上司側の主観です。部下からもやってよかったと言ってもらえることは上司にとって大きな自信になります。こちらも、四半期~半年に1回程度の頻度で継続的に取得し、現場に情報還元していくのが一般的です。
最後にお伝えしたいこと
ここまで「定着のストーリーを描く」を4つのStepに分けてご紹介してきました。参考になりましたでしょうか。
最後に、浸透・定着のためのもう一つのコツをお伝えします。実は第1回目にお伝えしていたのですが、覚えていますか?
それは、「あなた自身が1on1に対してどこまでコミットできているか。」です。以下3つの問いへの答えが明確で、自信をもってYESと言える場合には1on1はうまくいきます。ぜひ、もう一度ご自身に問うてみてください。
1.あなたは、1on1を通じて自分の会社がどんな会社になっていると嬉しいですか?
2.その目指したい方向性に向けて、1on1に気力/コストを投資する覚悟はありますか?
3.1on1を推進・実施することは自分にとって誇れる仕事だと想えますか?
全5回の連載はこれで以上となります。御社の発展に1on1が寄与することを願っています。【おわり】
★連載一覧:1on1の現状と今後
https://at-jinji.jp/expert/column/78
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