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社史から読み解く“自社らしいマネジメント” 第5回

変化の時代と自社らしいマネジメント

前回はホクト株式会社(以下、ホクト)の社史を実際に紐解きながら、
社史とは、「自社の発展‐成長の歴史」であり、「歴代経営者の葛藤‐決断の連続」
「自社の発展‐成長を産み出したもの~経営者の決断と現場の無数の努力」
について読み解いてきました。

特に創業や葛藤・決断場面に着目し、自社らしい働きざまについてみてきました。
そして、“先が見えない時代だからこそ直面する様々な難局を乗り越える力の核心は、誇り・情熱の染み込んだ自社らしい働きざまにある”という考えをお話ししました。
今回は、そのことについて、詳しくお話ししたいと思います。

参考:第4回 社史から読み解く“自社らしいマネジメント”~ホクト株式会社

目次

  1. 三つ子の魂百まで!?
  2. 自社らしい働きざまは企業の競争優位を産み出す
  3. 変化の時代に必要なこと
  4. 自社らしいマネジメントを再実感する意

三つ子の魂百まで!?

前回、ホクトの社史を読み解いた1つの発見は、創業時で培われた働きざまが、きのこの大規模生産に乗り出すという一番の決断場面においても受け継がれ、それを乗り越える働きざまになっていたことにあります。

何となく分かったような感じになりますが、一体どういうことでしょうか?

創業の苦難を乗り越えた働きざまというのは、正にそれがゆえに経営者の心に強烈に焼き付きます。そして、焼き付いた思いは、次に似たような困難な状況に直面したときに、“あのときはこうした”という意思決定の基準となり、“あのときもできたのだから今回も!”と乗り越える原動力になります。
そうした意思決定や働きざまを積み重ねていくと、“こういうときはこういう見方・感じ方、判断・行動をするのがうちの社員だ”と感じられるようになっていきます。そして、そのうち、その企業にいる人にとってはそうすることが自然なことになっていくのです。
(ホクトの社員の方が“うちって何か新しいことをやっても最初のうちは苦労するけどそのうちものにするんですよ”と言っていたことが物語っています)

このことの面白いところは、その企業にいる人にとっては自然な振舞いでも、他社の人にとっては自然ではないケースが多いということです。ホクトのケースでも、なぜ、他社がやっていないようなことに巨額の資金を投じて挑戦するのかと感じる人もいるでしょう。
リクルートにも「お前はどうしたいの?」というマネジャーから投げかけられる有名な言葉がありますが、メンバーに問う前に局面をどう打開するか、それを考えるのがマネジャーの仕事だと思う人もいるでしょう。どちらかの考えが正しいのではありません。

“三つ子の魂百まで”ではないですが、創業のときに強烈に焼き付いた記憶は、大小さまざまな意思決定基準となり、そこに属している人にとってはそうすることが自然で当たり前であるという思考・行動を形成していくということです。
(※このことは、第2回にも触れております。気になる方は改めてご覧ください。)
参考:第2回 自社らしいマネジメントとは?

自社らしい働きざまは企業の競争優位を産み出す

そのことにどんな意味があるのかもう少し考えてみましょう。

病院向け食品を提供している会社の話です。
この会社では、病院ごとに入院患者の特性に合わせたメニューを考えることを強みにしていました。そのために、管理栄養士が単に栄養価を計算するだけでなく、多くの病院に頻繁に顔を出し、とことん話し合っていました。そのマイナス面として、管理栄養士の採用コストやメニュー数増加に伴う食材調達コストが高くなることがあります。そのため、利益率は競合他社より低く、場合によっては契約価格が折り合わず、契約が取れない・途中で打ち切られるということが発生していました。

あるとき、中途入社した社員から“もっとメニューを共通化してコストを抑えませんか?”という提案がされました。しかし、それを聞いた社長は「病院患者の人たちに、明るく楽しい時間を提供するのがうちの会社の使命なんだ!」と幹部クラスに改めてその意味を伝える時間を設けたと言います。

普通に考えると、この社員が提案したことは否定されるべきことではありません。むしろ当然の発想です。しかし、この会社ではそういう判断は取られませんでした。この会社では、“一人ひとりの病院患者の為に明るく楽しい時間を提供する”という意思決定の基準のもと、判断・行動されていたのです。管理栄養士を多く採用すること、自社内でメニューを考案するのではなく実際に現地に足を運ぶことを徹底するといった仕組み・働きざまはその結果生み出されたものでした。もし、目先のコスト高に目が奪われていたら、このような働きざまをすることはできなかったことでしょう。そして、その結果、多くの同業他社とのコスト競争に巻き込まれていたかもしれません。

自社らしい働きざまが共有・浸透している、言い換えると自社らしいマネジメントによって再現されている状態というのは、自社の持続的な競争優位が実現している状態であると言えるのです。

変化の時代に必要なこと

このことは更に別の角度から見ると、次のようなことも意味します。

それは“通常他社の人であれば、やらない・やれないような判断・行動をとることができる”ということです。
先程の例でも、管理栄養士が足を運び、メニューを考案するといった、他社ではやりたくてもやれない、もしくは一時はできてもやり続けることができないようなことを実践しています。
“なんで、あなたたちはそこまで奮闘・努力できるんですか!?”と他社の人から驚かれた体験はありませんか? 逆に、他社の人を見て、“どうしてあの会社の人たちはあんなことをできるんだ?”と驚いたことはありませんか? そのような他社ではやらない・やれないような奮闘・努力を生み出している源泉こそ、創業以来培われた自社らしい働きざまなのです。

先が見えない変化時代では、何が正解かはやってみないとわからないことが多々あります。そのようなときに必要なのは、世の中・他社ならやらないような状況において、少しでも早く、力強く、例え僅かであっても前に進み、その現実の中から学んで突破口を見出していけるかどうかです。そして、その少しでも早い、力強い一歩を後押しする力、それが自社らしい働きざまと言えます。

そのためにも、自社らしい働きざまだを自覚化し意図的に再現できるかどうか、言い換えると、それを導き出すマネジメントが大事になるということです。

自社らしいマネジメントを再実感する意義

自社らしい働きざまの効果・効能について考えてみました。最後に一番心にとめておいてほしい事をお話しします。

先程までお話ししたとおり、自社らしい働きざまは大小様々な意思決定が積み重ねられて初めて、“自然な振舞い”になっていきます。途中、他社の人であればやらないようなことをやる≒多くの人がやらないような苦労を背負うことで、怯んだり、易きに流されそうになることもあるでしょう。そういうときに、経営者・管理職の人たちが、“そうだ”“それは違う”などと叱咤激励していかなければ、本来大事にすべき働きざまを見失ってしまいます。まさに、「価値(大事にしたいこと)は再実感されないと枯れていく」のであり、その意味で、自社らしいマネジメントとは、現場に対して自社らしい働きざまを促す、言い換えると自社らしい働きざまを再発見・再自覚してもらう行為だと言えます。
※最後に、ご参考までに大事にしていることを伝えるためのヒントをまとめましたので、ご参考ください。


【連載終わり】

■社史から読み解く“自社らしいマネジメント”(河島慎)
https://at-jinji.jp/expert/column/76

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