これから求められる 個を生かすオンボーディング vol.5

データを活用して若手の成長サイクルを見える化~データから見えてくる若手がぶつかる壁~(後編)

前編は若手の心理メカニズムを成長のサイクルで捉える方法を、若手に起こりがちな問題に対して当てはめてご紹介した。
また、実際に複数の企業のデータを分析し、非常にリアリティを感じる内容についてもお伝えしした。
今回は、その「成長サイクル」を、私たちがよく接する若手の「あるある」の状況に結び付けてみた時、どのように捉えられ、若手を立ち上げる時のヒントになるのかについて考えてみたい。

参考:第4回 データを活用して若手の成長サイクルを見える化~データから見えてくる若手がぶつかる壁~(前編)

目次

  1. 一見、バラつきがある、「若手の立ち上げ時によく聞く声」
  2. 若手の心理メカニズムに目を向けると見えてくること
  3. 若手に起こりがちな「あるある」の状況を整理してみると・・・
  4. 「あるある」の状況を「成長サイクル」で表現してみる
  5. データを使って可視化してみるとどのように見えるのか?
  6. 明日への一歩

一見、バラつきがある、「若手の立ち上げ時によく聞く声」

みなさんのまわりで若手が陥りがちの『あるある』な状況にはどのようなものがあるだろうか。

例えば以下のような若手の問題はよく耳にする。
  • なかなかなじめない。
  • 失敗が怖くて足が止まる。
  • やりたいことと現実の違いに思い悩んでしまう。
  • 経験が次につながらない。
  • 状況に流されたり、まみれたりが続く。

まとまりのないようにしか見えないこれらの問題は、次から次へと現れ、人によって違う現れ方をすることも少なくない。また周囲からの見え方と本人の中での感じ方が違うことも少なくない。とても複雑な状況が起きているように感じる。

しかし、場当たり的に対峙していては、本人も周囲も疲弊しかねない。
では、この複雑な状況にどうやって効果的にそして効率的に対応していくか。その点を考えていきたい。

若手の心理メカニズムに目を向けると見えてくること

一見まとまりのない、この悩ましい問題に対して、ご紹介してきた「成長サイクル」を当てはめて考えてみる。

  1. 行動し期待に応える
  2. 大小の成功・失敗から学びを得る
  3. 持っているもの・得たものを次に生かす
  4. 特徴を生かし自分らしさを発揮する

 
参考:成長サイクルについて

この1から4を繰り返すサイクルは、人によって、行動の起こし方が、「とりあえず行動してみる」とか「自分の得意なことややりたいことからじゃないと・・・」という具合に違いがある。どれくらいのスピードや量で回転しているかも違う。また、どれくらい支援を得て回転しているのか、どれくらい自律して回せているのかも違うと言える。
 
しかし、このサイクルに注目することで、目の前にいる若手が、サイクルのどこで目詰まりを起こしているのか、或いは何がサイクルを回すことに対して悪影響を及ぼしているのか。その点をしっかり捉えることを可能にする。
そして、サイクルの目詰まりを解消すべく周囲が支援を行い、本人がそこに向き合うことを後押しする。
 
このような特徴を生かし、フレームワークとして活用することで、若手に起きている問題を構造的に捉えていきたい。

若手に起こりがちな「あるある」の状況を整理してみると・・・

まず、成長サイクルを活用するために、若手に起こりがちな「あるある」の状況を整理してみる。
表1をご覧いただきたい。

<表1>

前段でお伝えしたよく耳にする問題も含め、若手の状況を分類し「5つの問題」にまとめてみた。
いかがだろうか。もし他の状況があるようであれば是非この整理に照らしてみて、くくることができるのか、6つ目の問題として捉えた方が良いのか検討していただきたいが、今回はこの「5つの問題」で進めてみる。
 
まず、この若手に起こりがちな問題だが、「オンボーディングに生じやすい5つの壁」とし、以下のように名付けてみた。

【壁1】 職場適応の壁
【壁2】 期待行動(大小さまざま)の壁
【壁3】 意味づけの壁
【壁4】 経験学習の壁
【壁5】 主体性・自律の壁

この壁に対峙し乗り越えていくために、「成長サイクル」を活用して、どこに問題が生じて壁が生じるのかを明らかにするように考えてみる。そうすることで具体的なアクションが想定できるようになるのはないか。

「あるある」の状況を「成長サイクル」で表現してみる

前述の5つの壁に対して、原因の仮説を立てながら、「成長サイクル」でどのように表現し捉えることができそうか整理してみたのが表2である。

 <表2>

「1.職場適応の壁」や「2.期待行動の壁」は、サイクルを回すためのスタート地点にある壁と言えそうだ。また「3.意味づけの壁」や「4.経験学習の壁」はサイクルの回転の中で起こる壁であり、「5.主体性・自律の壁」はサイクルが継続し自分自身で回せるようになるところで生じる成熟への壁と言えそうだ。
 
このように捉えていくと、まとまりのないように見えた前述の『あるある』が、かなり分かり易く整理できてくる。

データを使って可視化してみるとどのように見えるのか?

前編では3社のデータ分析についてお伝えしたが、
使用している問いによって5つの壁を捉えてみることで、データによる可視化について考えてみる。

壁1:心理的安全性が担保されていない (【B】が低下)
壁2:期待に応えるため動きがとれていない (【1】が低下)
壁3:継続して意味づけができていない (【1】➡【3】➡【R】が繫がりになっていない)
壁4:サイクルが目詰まり回っていない (【1】➡【2】➡【3】➡【4】がどこかでひっかかっている)
壁5:サイクルが自律的にまわっていない (【B】【1】~【4】【R】、すべてが継続・安定しない)

このように整理すると、どの壁にぶつかっているかがデータを使って表現できる。

ちなみに、前回分析した3社の集計値(図表参照)で見てみても、将来性に問題があると評価されている若手は全ての要素で低くなっている。これは若手の中で「成長サイクル」の様々なところで問題が生じていることを意味しているのではないだろうか。個々がそれぞれ別々の壁にぶつかっている、その集合体としての結果だろう。

この傾向は、各社によっても違う。また、事業や職種、更には組織、もっと言うと年次や男女、新卒採用キャリア採用によっても違ってくる。それは、それぞれによって生じやすい壁が違うことを意味している。組織的な共通施策を推進する場合などは、そのあたりの違いを見極めて効果的に手を打ちたい。
 
一方で、究極まで分解していくと、この違いは個々によって全く違う。それは個性の違いもあるし、置かれている状況も違うことで起こる。若手の立ち上げをテーマにしているマネジャーや育成担当、チームメンバーなどは、この個々の違いを踏まえて対応していく事が求められる。
 
前編でご紹介したO氏やP氏のケース、或いは皆さんにお勧めした「周囲におられる若手で掘り下げてみること」で、今置かれている彼らの状況を分析し、状況とその要因を構造的に捉え、効果的に手を打っていっていただければと思う。

明日への一歩

少しまとめてみたい。
前回と今回に渡り、前後編として「データを活用して若手の成長サイクルを見える化~データから見えてくる若手がぶつかる壁~」として、「成長サイクル」と「あるあるの5つの壁」についてお話してきた。
 
「成長サイクル」という見方で、若手の心理面を分解してみると、それがスムーズに回っているか、どこで目詰まりが起きているかに目が向くようになり、成長がうまく進むように力を加えることができるようになる。
 
一方、「あるあるの5つの壁」は、私たちがよく見聞きする若手の苦しむ状況を捉え易くする時に有効な見方で、そこに「成長サイクル」の考え方を添えてみると、その壁はどこに引っかかりがある壁かが捉え易くなる。また、この5つの壁は、立ち上がりのスタート地点・真っ最中・そしてその先の成熟へとステップアップしていく中で生じる連続した壁と言えるため、その本質として「成長サイクル」が継続的に回っていくことが重要だろう、という投げかけをしている見方と言える。
 
私自身、最近、新しい部署で新しいミッションを担うことになった。もはや若手ではないが、新しい環境や職務でスピーディーな立ち上がりを求められている。その意味で今回お話している内容は私にも当てはまる。職場の皆の配慮で安心安全な環境はあるが、その中で成長サイクルを高速で回し、より早いタイミングで自律モードに成熟することが期待されている。 
そのように考えると、異動、役割チェンジ、昇進昇格、そしてキャリア採用後の立ち上げのような場面でも、今回お伝えしていることは同じように当てはめて考えることができるだろう。是非皆さんのまわりにおられる、そのような方々についても、今回のアプローチを試していただけると幸いである。
 
次回は、少し観点を変え、本人の個性という側面に目を向けてみる。
ここまでは、本人の状況に注目して、成長がうまく進んでいるのか、その原因は何なのかに目を向けることで効果的に対応できるようになることを想定してきた。しかし、立ち上がる中でそれを阻む壁は次から次へと現れる。
周囲からの支援も含め効果的に手を打つことはとても大事だが、最後はその壁を乗り越えるため向き合い続けられる強さがあるかどうかが鍵になる。本人がエネルギーを高め突破する強さを発揮するため、本人のやる気の源泉といえる「志向や価値観」に働きかけ、本人の突破力を高めていくアプローチについて考えていきたい。

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