第14回HR EXPO春(人事労務・教育・採用)|RX Japan株式会社第14回HR EXPO春(人事労務・教育・採用)|RX Japan株式会社

真面目な定着でリード/ジャーニーが浸透/ユーザー目線と楽しさではビハインド/効果測定が課題

【人材育成ワールドカップ】日本のレベルはグローバルに比べてどう?

今回のサッカーワールドカップでは日本が大活躍でした。最少失点に抑えた前半の我慢強さ、選手交代で大変身して一気に逆転した後半、そしてこれを固い守備で守り切る。ボール支配率20%未満での強豪撃破はグローバルに大きなインパクトを与え、日本ならではの強みの可能性も議論されるようになりました。

私は1990年代から日本で人材育成関連の仕事をしていますが、その頃の日本の企業研修は講義中心のインプット型研修がまだまだ多数派でした。しかしグローバルでは研修成果をアップするアクションラーニング、パーフォマンスコンサルティング、コーチングフォローなどに積極的に取り組んでおり、いかに実ビジネスで成果を出すかに注力していました。効果的な人材育成に関して日本はグローバルより10年以上遅れていた印象です。
さて、今はどうでしょうか?

12月上旬に参加した2つの人材育成イベントは、日本とグローバルを比較するための素晴らしい機会になりました。
一言で言うと日本はかなりパワーアップして、サッカー日本代表のようにグローバルに負けていないレベルまできました。ではどの項目で日本の人材育成は進歩したのか。比較項目ごとに重要ポイントをピックアップしてご紹介します。

目次

  1. 参加したイベントと比較項目
    (1) ATD2022 ジャパンサミット       
    (2) ラーニングイノベーションフォーラム                
    (3) 結論:比較項目の一覧表
  2. 比較した項目ごとの重要ポイント
    (1) マイクロラーニング
    (2) ラーニングジャーニー
    (3) 定着フォロー(ラーニングトランスファー)
    (4) 研修効果測定
  3. クロージング

参加したイベントと比較項目

(1) ATD2022 ジャパンサミット    

1つ目のイベントはATDジャパンサミットです。世界最大の人材育成団体であるATD(Association for Talent Development)の年一回の日本イベントが12月5日〜9日に開催されました。テーマは「未来をつくる Talent Development 」グローバルの成功事例、トレンド、ベストプラクティスを日本のニーズに合わせて紹介するイベントです。
ここでグローバルの状況がよくわかります。
https://japansummit.td.org/agenda

(2) ラーニングイノベーションフォーラム   

2つ目のイベントは当社開催のラーニングイノベーションフォーラムです。12月6日の半日という短い時間ですが、内容は2022に日本のお客様が実施した研修プログラムの中から「これが良い!」というベスト事例紹介です。
これによって日本の状況がわかります。
https://ide-development.com/blog/learninginnovation2022/

(3) 結論:比較項目の一覧表

結果的に日本とグローバルの人材育成レベルがそれほど変わらないことになりましたが、それぞれの長所と短所と傾向があります。概要はこの図のとおりです。

それでは一つずつ項目を詳しく見ていきましょう。

比較した項目ごとの重要ポイント

(1) マイクロラーニング

マイクロラーニングとは短いオンデマンドコンテンツのことを指します。内容はチェックリスト、ブログ、記事、数分のビデオなどです。この数年マイクロラーニングが一気に普及して、大切なトレンドの1つになりました。グローバルでマイクロラーニングを作る時に大切なことは、とにかく受講者が飽きないように一生懸命考えて工夫することです。その結果、良いマイクロラーニングは受講者目線になっていて、興味を惹きつけるために面白くて即役立つ実践的な内容で、しかも飽きない長さです。それに比べて日本のマイクロラーニングは残念ながら長い上に、比較的堅苦しい教育テレビのトーンのインプット中心となっています。

ATDジャパンサミットで講演したマイクロラーニングの達人のカーラ・トーゲルソンはマイクロラーニングの賢い使い方とヒントを4つにまとめていました。

事前課題:(10分以内)研修内容のエッセンスをわかりやすくインプットすると受講者のスタートラインを整えることができるし研修を演習中心にできる。
定着フォロー:(1分程度)研修にあった内容を忘れないように定期的にリマインダーを送る。
オンデマンド学習:(4分以内)研修と切り離して、ユーチューブのように受講者が自ら探して学習するスタイル。適切なコンテンツを簡単に検索できることが成功ポイント。
職場での支援ツール:(5分以内)研修よりはチュートリアルのように社員が職場で困った時に答えやプロセスを教えてくれるツール。

(2)ラーニングジャーニー

研修の成果を高めたい場合は単発やりっぱなし研修より数回の研修シリーズの方が効果的です。そのような長くて複雑(eラーニング、集合研修、個別コーチング、職場実施の組み合わせ)な研修プログラムはラーニングジャーニーと呼ばれています。グローバルでも、国内でも様々な効果的なラーニングジャーニーの例があります。

例えば、ATDジャパンサミットでリーダーシップ研修が有名なDDI(Development Dimensions International)によれば、マイクロラーニングとラーニングジャーニーの使い分けポイントは次の通りです。
ミクロ:簡単なことをすぐ知りたい場合
ジャーニー(マクロ):総合的な能力を向上したい場合

またATDのBEST受賞企業からグローバルなラーニングジャーニーの導入事例発表がありました。

テーマ:リーダーシップ
研修対象者:早期選抜の次世代リーダー
企業:Sony Electronics USA
ポイント:経営者と職場を巻き込んで、研修と業務をつなげることを重視しています。研修期間中受講者は経営課題について考えて、最終回に経営者に向けてオリジナル提案を発表します。

このようにグローバルなラーニングジャーニーの強みと特徴は複数の研修スタイルが混在したブレンドラーニングが進んでいることです。集合研修だけではなくて、それ以外の上司の巻き込み、個別コーチング、アセスメント、ITツールの活用などを積極的に取り組んでいます。

グローバルと比較して日本のラーニングジャーニーが優れているポイントは段階を踏んで丁寧に受講者が
パワーアップできるようなしっかりした研修設計です。

例えば、

テーマ:Win-Win ネゴシエーション
研修対象者:交渉の機会が多い従業員
業界:自動車部品
ポイント:基本→応用→実践の流れで受講者が無理なくスキルを身に付けるステップアップ
テーマ:ロジカルなコミュニケーション
研修対象者:新入社員営業職
業界:製薬
ポイント:対面でもリモートでもわかりやすく伝えるベースをしっかり押さえる研修と定着の組み合わせ

日本のもう1つの特徴はどのような内容の研修でも高い能力やちゃんとしたビジネス成果を求める時にはラーニングジャーニーを使うことです。それに比べてグローバルのラーニングジャーニーではリーダーシップ以外の研修例は少ないです。

(3)定着フォロー(ラーニングトランスファー)

同じラーニングジャーニーでもインプットのみだとビジネス成果につながりません。成果を出すためには職場実施と定着フォローが必要です。グローバルに関しては2000年以降成果・定着・フォローの重要性と高める方法について数えきれないほどの研究、発表、記事がありました。
それに比べて日本で「わかる」から「できる」、行動変容、定着フォローの話が広がったのは最近の10年と出遅れていましたが、最近になり日本の定着フォローのレベルがかなり高くなりました。
その理由は3つあります。

1. OJTの文化
日本では職場でマネジャーがメンバーを育成することが言うまでもなく当たり前の考え方の一つです。全マネジャーが上手にできているとは言い切れませんが、欧米によくある「育成は自分の仕事じゃない」というマインドを乗り越える必要がありません。

2. 真面目な受講者
ワールドカップでの試合後の日本人サポーターが行う会場清掃が典型ですが、一般市民であっても真面目な日本人の文化は世界で称賛されています。定着フォローや職場実施というのは割と地味かつ継続が必要ですので日本人の真面目さが大切な成功ポイントの一つです。

3. 多彩な定着フォローのバリエーション
日本の定着フォローの取り組みを見ると色々なバリエーションがあります。例えば、OJT、実行計画、上司面談、職場勉強会、事後課題、などです。一方、グローバルの定着フォローでは強い上司の巻き込みと個別コーチングというワンパターンがほとんどです。

ラーニングイノベーションフォーラムの事例を見ても定着フォローについて多くの取り組みがありました。

(4)研修効果測定

グローバルでも日本でも研修効果測定を強化する必要がありますが、数十年前とあまり変わらないのが現状です。違いがあるとすればグローバルは少し実験と試行錯誤をしていますが、日本では研修終了アンケートと一部の知識確認以外の取組みがほとんど見られません。
人材育成担当者からよく聞くことは「研修効果をもっと測りたい…」「効果測定って必要ですね…」ですが、なかなかスタートを切ってくれません。

代表的な理由は4つです。
・どのように研修効果を測れば良いかがわからない
・測定精度が100%じゃないとトライできない
・成果があんまり出ていないという悪い結果を恐れている
・研修効果測定の重要性に納得していない

そこで研修効果測定を導入するためのヒントを3つお伝えします。

1. 小さなスタート(Baby Step)から始める
簡単なところから始めてプチ成功体験することです。一番力を入れている研修プログラムに絞って、効果測定をします。成果が大きいほど測り易いし、一度でもやると勢いが付きます。

2. 既存のメソードを使う
初めて行う時には周りの理解が少ないために信頼性についての疑問を多く持たれてしまいます。少しでもわかりやすく説明できるように既存のメソードを使いましょう。(例:カークパトリック4段階、フィリップス5段階、ブリンカホフ など)個人的にはブリンカホフのサクセスケースメソードを強くお勧めします。利点として実施しやすく結果がわかりやすいので改善につながりやすいからです。
詳細については 「研修効果測定の基本の3ステップ」 を参考にしてください。

3. 定性評価から始める
測定精度に対する不安を乗り越えるために定性評価から効果測定に取り組むことをお勧めします。
研修後にうまくいった受講者のヒアリングをしましょう。ポイントは
・職場でどのように研修内容を実施したか?
・職場でどのような成果が出たか?
・良い成果を出せた理由と原因は何か?
このような情報を持っていると効果測定が怖くなくなるし、そこから定量的に測るヒントも色々得られます。

クロージング

今回は12月に参加した2つの人材育成イベントから、以前に比べて日本の人材育成レベルがだいぶ上がって、グローバルに近づいてきていることをご紹介しました。
これを維持し、さらにレベルを上げるための重点ポイントは以下の通りです。

・定着フォローに対して自信を持って、頑張り続ける
・ラーニングジャーニーも継続して、さらにブレンドラーニングを入れて効果を高める
・マイクロラーニングをもっと受講者目線で見直して、面白く即役立つようにチューニングする
・研修効果測定に挑戦する

是非チャレンジしてみて良い成果につなげてください。

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https://ide-development.com/

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