社史から読み解く“自社らしいマネジメント” 第3回
“自社らしいマネジメント”を“社史から読み解く”ことの意義
前回、自社らしいマネジメントとは、直面する「場面」でどう振る舞うのかという点に集約されるということ、自社らしいマネジメントを考えるヒント・きっかけは「創業」~「これまでの歴史」の中に行動として隠れているということをお伝えしました。そして、社内で大事にされている言葉(経営理念・行動指針等々)には、自社らしいマネジメントが宿っている可能性がある、ということでもあります。
今回は、“社史から読み解く”とは、どういうことなのかを考えていくのですが、読み解くためには、正しい方法・ルールがあります。
目次
社史をどう見ていますか?
皆様は自社、他社の社史をじっくり眺めたことはありますか? 会社によってはホームページで詳細が公開されていたり、冊子としてまとめ社員に配っていたり、経営者の方が書かれた書籍として出版されている会社もあるかもしれません。人によっては諸先輩からの伝え聞きという人もいるでしょう。
さて、社史に触れたとき、どんなことを感じるでしょうか?
“うちの会社って、過去はすごかったのね”“いい会社に入ったなぁ”というような肯定的な感想ならいいですが、場合によっては“またこの話か?”“うちにはこのエピソードしかないのか”なんて感想を持った人もいるかもしれません。
ただ、いずれの感想にも共通しているのは、社史につづられている出来事の結果に着目しているということです。このような見方では、読み解くことは難しくなります。
社史とは何か
自社らしさというものが、その会社特有のものの見方・感じ方だとすると、それはどう浸透していくのでしょうか?
ところで、改めて、社史とはいったい何でしょうか?
結論から言いますと、社史とは「自社の発展‐成長の歴史」であり、「歴代経営者の葛藤‐決断の連続」だということです。社史に書かれていることは、会社の歴史≒その時々の選択肢とその結果・事実になります。少し深読みすれば、経営者が悩みに悩んで選んだ選択肢と結果のみが、社史として書かれているのであって、その裏には、「本当は取りたかった選択肢や捨てざるを得なかった選択肢、結果としては選択しなかった選択肢」が隠れていると言えます。
では、「自社の発展‐成長の歴史」であり「歴代経営者の葛藤‐決断の連続」とはどういうことでしょうか?
企業の寿命30年説とも言われていますが、そうした平均寿命を超え発展‐成長する会社には一つの共通項目があります。それは「経営者の決断」です。他の経営者であれば怯んでしまうような状況・場面≒成功するか・失敗するか、良くて五分五分、通常状態でも3:5といったような状況の中で、“それでもやる”と思い切った決断を行う。それがきっかけとなり、発展‐成長していく。逆に言うと、経営者の決断なしに発展‐成長する企業は極まれであるということです。
具体例を挙げながら解説します。
自社の発展‐成長を産み出したもの~経営者の決断と現場の無数の努力
きのこ製造大手のホクト株式会社。スーパーに買い物にいけば、必ずと言っていいほどホクトのきのこを目にすると思います。しかし、元々の祖業は、包装資材の販売会社ということは案外知られていません。その後、農業資材を扱うようになるなかで、ある出来事をきっかけにして、「ぶなしめじの大規模生産」に乗り出し、今では全国で30か所を超えるきのこ生産センターにて商品のブナシメジ・ブナピー・エリンギ・マイタケ・霜降りひらたけ・生どんこを生産しています。
そうやって書くと、へぇそうか、で終わりそうですが、もう少し細かく見ていきますとこれが本当に大きな決断であったことが分かってきます。大規模生産に乗り出す直前、当時のホクトは農業資材も扱っていました。ということは、農協やきのこ農家がお客様であり、売上の数割占めていたのです。言い換えると、きのこの大規模生産に乗り出すことは、農協やきのこ農家のライバルになることを意味し、最悪その分の売上を失うことに繋がります。
しかも、当時、ぶなしめじを大規模生産で成功させた企業はありませんでした。そのような状況の中、大規模生産に乗り出すことを決めたわけです。一体、何がホクトの背中を押したのでしょうか?少なくとも言えることは、その決断が無ければ、今のホクトはなく、もしかしたら地域の一商社で終わっていた可能性があるのです。
では、企業の発展‐成長は経営者の決断だけで成り立つのでしょうか?
そうではありません。決断を支える、「現場の無数の努力」が必要です。いくら経営者が決断しても、その実現をするのは現場です。経営者同様に、現場がその状況の中でもモチベーション高く保ち、声かけ合い、試行錯誤し続けなければ、決断そのものが足枷となり、企業は衰退していきます。
先程のホクトの例でも同じです。いくら経営者が大規模生産に乗り出すと言っても、現場がその実現に向けて努力し続けられなければ、決断の負担に耐えかね、下手をすると倒産していた可能性もあるわけです。
種菌をどうするのか、肥料は? 栽培は? 売り先は? 様々な苦労を現場の試行錯誤で乗り越えたからこそ、今があります。
「経営者の決断」と「現場の無数の努力」、この両輪が回って、初めて企業は発展‐成長していくのです。
つまりは、「“自社らしいマネジメント”を“社史”から読み解く」作業というものは、自社が発展‐成長を実現してきた働きざまを解き明かし、伝承していく作業に他なりません。
とすると、「社史を読み解く」とは、たんに書かれているエピソードを覚えることではなく、
- 当時の自社を取り巻く現実(時代・業界・事業)はどんなものだったのだろうか?
- 当時、自社が取りえた選択肢は何と何があったんだろうか?
- どうして、当時の経営者は、(社史に描かれている)選択肢を決断したのだろうか?
- 経営者の決断を実現していくため、現場ではどのような働きざまがあったんだろうか?
ということを丁寧にみていくということになります。詳細は、実際の企業例と共に次回お話しします。
もうお気づきの方もいるかもしれませんが、このコラムのテーマでもある「自社らしさ」「自社らしいマネジメント」というのは、3・4のことになります。
第1回でもお話ししましたが、先が見えない環境変化期だからこそ、改めて自社がなぜ発展‐成長してきたのか、それを支えてきた働きざま・マネジメントとは一体何かを再認識・再実感し、拠り所にしてみませんか?
持続成長の5条件
下の図は、我々が「自社らしい働きざま」を見出すときの観点、「持続成長の5条件」です。
「働きざま」といってもわかったようで掴みにくいものを掴むための観点です。観点を置くことで、自社らしい働きざまの特徴が浮かび上がってきます。働きざまを再現持たせるのがマネジメントの機能の一つだとすれば、この観点はマネジメントしていく観点ともいえるでしょう。この観点に照らして、「自社らしいマネジメント」のあり様についてみていきましょう。
この5つの条件に照らして、自社・職場をみたときに、それぞれの項目に、どんな特徴をもっているでしょうか?自社の発展‐成長を産み出した特徴は何だろうか。そして、それらは今現在どうなっているでしょうか?参考までにいくつかのキーワードをあげておきます。是非、皆様の会社らしいあり様について考えてみてください。
モチベーション 「自分の成長」「お客様のため」「世界初」・・・ 顧客接点 「お客様と一緒に」「あっと驚かせる」「要望に応える」「個」「マス・集団」・・・ S-PDS 「目標を定めて」「前例ないところへ」「何度でも粘り強く」「決まったやりかた・ルーティン」・・・ コミュニケーション 「トップダウン」「ボトムアップ」「自由に」「報連相」「お客様の声」・・・ 意思決定の基準値 「経営理念」「売上」「挑戦」・・・ |
今回は、社史とは企業の発展‐成長の歴史であり、それは経営者の決断と現場の無数の努力で実現されてきていること、社史から読み解くことは、それはそのまま「発展‐成長を生み出してきた働きざま」を見出す作業であることを確認しました。
次回は今回例に掲げたホクト株式会社の事例をもとに、実際に読み解いていきたいと思います
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