ミラキャリ通信 Vol.13

友人・知人との会話やSNSをきっかけに兼業や副業を検討する人が増加。他社で働く経験を通じて自社の魅力に気付く人も

リクルートが発行する、会社を越えて企業に参画できるサービス『サンカク』から「未来の働き方」、「未来のキャリア」について発信するプレスレター『ミラキャリ通信』の内容を転載して紹介するコラム(TOP画像は「ミラキャリ通信vol.13」より)。
参照『サンカク』:https://sankak.jp/

今回は、リクルートが2022年7月に公開した「兼業・副業に関する動向調査2021」のデータ集を前年の結果と比較しながら、個人・企業双方の兼業・副業の最新傾向について解説している。

目次

  1. 『サンカク』の現場から - Report from Sankak
  2. 会社からの制度説明、アドバイスがきっかけに
  3. 「友人・知人との会話」「SNS」を機に検討する人が増加
  4. 個人も企業も、兼業・副業での「スキルアップ」に期待
  5. 兼業・副業の仕事選びで「同僚との関係性」「理念共感」を重視する傾向が強まる
  6. 収入だけでなく、「新たな発見」に価値を見いだす
  7. 「ふるさと副業」への興味が強い
  8. 企業が兼業・副業人材を受け入れ、活用するために取り組むべきこと

『サンカク』の現場から - Report from Sankak

リクルートでは、2022年7月、「兼業・副業に関する動向調査2021」データ集(以下データ集)を公開しました。(https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20220720_hr_02.pdf)調査時点(2022年1月)で、兼業・副業を実施中の人は9.4%。これまで兼業・副業の経験はないものの「今後、実施したい」と考えている人は40.9%。「過去に兼業・副業経験があり今後実施意向あり」(5.6%)も合わせると、兼業・副業の実施意向がある人は過半数に達しています。特に20代~30代の若手層で実施率・実施意向が高い傾向にあります(データ集P7)。
この数値は、2021年1月調査の結果からほとんど変わっていません。ところが、始めるきっかけや目的、仕事選びの基準、実感している効果などについては、この1年で変化が見られます。個人・企業の双方について、兼業・副業の最新傾向をお伝えします。

会社からの制度説明、アドバイスがきっかけに

下のグラフは、「兼業・副業実施中の人」および「過去に兼業・副業の実施経験があり、今後実施意向(再開予定)がある人」を対象に聞いた「兼業・副業実施のきっかけ」です。2020年と2021年の調査結果を比較しています。
最も割合が高いきっかけは、2020年と同じ「すでに兼業・副業をしている人が身近にいた」(30.8%)。そして、2020年から大きく上昇したのが「会社から兼業・副業制度の説明があった」(16.5%→22.5%)です。同時に、「会社から兼業・副業のやり方等のアドバイスがあった」(14.8%→18.5%)という回答も伸びています(データ集 P11)。

実際、企業側でも兼業・副業の制度が充実しつつある状況がデータに表れています。本調査は企業の人事担当者も対象に行っており、兼業・副業を認める人事制度の有無を聞いたところ、「制度がある」と回答したのは50.5%と、過半数に達しました。(データ集P36)「制度がない」と回答した人事担当者も、うち3割強が「導入を検討している」と、積極的な姿勢を見せています(データ集 P37)。

「友人・知人との会話」「SNS」を機に検討する人が増加

このように、兼業・副業が社会に浸透しつつある中、兼業・副業に興味を示す人も増えています。「過去に兼業・副業の実施経験がなく、今後実施意向がある(やってみたい)人」にも、「実施してみたいと思ったきっかけ」を聞きました。2020年調査結果同様にトップとなったきっかけは「自分のキャリアを見つめ直した」ですが、その割合は2020年よりも高まっています。「転職・独立」を考える中で、お試し的に副業を検討している傾向も見受けられます。
また、2020年と比較して、「テレビ・新聞・雑誌でニュースや記事を見かけた」が減っている(19.7%→15.6%)のに対し、「友人・知人との会話で話題になった」(8.7%→11.9%)、「SNSで話題になった」(5.3%→8.2%)の項目に伸びが見られました(データ集 P12)。兼業・副業が「より身近になっている」様子が見てとれます。

なお、兼業・副業実施中の人のきっかけについて、新型コロナウイルス感染拡大と「関係している」と答えた人は43.1%に上ります。
さらに、コロナ禍の影響で兼業・副業を始めた人に対し、感染拡大が収束した場合の兼業・副業の継続意向を聞いたところ、9割以上の人が「継続予定」と回答しています(データ集 P14)。

個人も企業も、兼業・副業での「スキルアップ」に期待

「兼業・副業実施中の人」および「過去に兼業・副業の実施経験があり、今後実施意向(再開予定)がある人」に対しては、「兼業・副業実施の理由」も聞き、2020年と2021年を比較しました。1位・2位を占めるのは、2020年調査結果と変わらず収入面の理由ですが、それに次ぐ理由には変化が見られます。「本業では得られない知識・経験の獲得」「兼業・副業での経験を本業で活用」「転職・独立の準備に向けた経験」といった理由を挙げる人が2020年よりも増えています(データ集 P15)。

また、「過去に兼業・副業の実施経験がなく、今後実施意向がある(やってみたい)人」に理由を聞いたところ、「興味があること・好きなことをやりたい」が3位でしたが(データ集 P16)、「実施中・経験がある人」では、8位となっています(データ集 P15)。

このことから、兼業・副業を経験した人は、それによって得た知識・スキルが本業や今後のキャリアに活かせる点に手応えや価値を感じているのではないかと考えられます。

一方、企業側も、従業員が兼業・副業で「スキルアップ」することを期待しています。
兼業・副業を認める制度が「ある」もしくは「導入検討中」と答えた人事担当者に対し、兼業・副業制度の目的を聞きました。現在制度がある企業では、「従業員のモチベーション向上」「従業員の定着率向上・継続雇用」「従業員の収入増」などと並び、「従業員のスキル向上・能力開発」という回答が多く見られました(データ集 P41)。
兼業・副業を認める=従業員の自由な活動やキャリア形成を支援することでエンゲージメント向上につなげようとする狙いがある一方、「社外で得た経験・スキルを自社で活用してほしい」という人事担当者の声も聞こえてきています。
近年、ビジネス環境の変化が激しく、企業は新たな戦略を推進しようにも自社のリソースだけでは間に合わなくなっています。外部の知見やノウハウを取り入れていく必要に迫られる中で、従業員の兼業・副業をその手段の一つとして捉える人事担当者が増えていると言えそうです。

また、現在導入検討中の企業の目的を見ると、2020年調査結果と比較し、「働き方改革の促進」「従業員の自律性発揮」「多様な人材の活躍推進」「イノベーションの促進や新規事業開発」「外部人材の採用」「自社の組織文化や風土の変革」などの項目が伸びています(データ集 P41)。

兼業・副業の仕事選びで「同僚との関係性」「理念共感」を重視する傾向が強まる

兼業・副業の仕事選びについても、2020年調査結果から変化が見られます。
「兼業・副業実施中の人」および「兼業・副業の実施経験があり、今後実施意向(再開予定)がある人」に対し、兼業・副業の仕事を探すときに重視した点を聞きました。
トップの「給与・報酬」、2位の「自分の能力や経験を活用できる仕事内容」は2020年と変わりませんが、「一緒に仕事をする同僚との関係性」を重視するという回答が20.3%→27.4%と7.1ポイントも伸びています。
また「企業理念・ビジョンへの共感」「職場の従業員構成」の項目も、2020年より3ポイント程度の伸びが見られます(データ集 P17)。

「過去に兼業・副業の実施経験がなく、今後実施意向がある(やってみたい)人」の回答でも、仕事探しで重視したい点として、「職場の雰囲気や風土」「一緒に仕事をする同僚との関係性」などが2020年よりも伸びています。特に「企業理念・ビジョンへの共感」を重視するという人は、8.7%→19.2%と 10.5ポイント上がりました(データ集 P18)。

先ほど、兼業・副業を考えるきっかけとして、「友人・知人との会話」「SNS」が増えている傾向をお伝えしました。このことから「友人・知人に誘われた」「SNSで共感できる仲間を見つけた」などの体験が、仕事選びにもつながっている可能性がありそうです。このように、身近な人の影響から兼業・副業へ踏み出す人は、今後も増えていくのではないでしょうか。

収入だけでなく、「新たな発見」に価値を見いだす

「兼業・副業実施中の人」および「兼業・副業の実施経験があり、今後実施意向(再開予定)がある人」に「兼業・副業を実施して感じたこと」を聞いたところ、ここにも2020年調査結果との変化が見られました。「副収入を得られた」という回答が、43.0%→33.7%と9.3ポイント低下したのに対し、「新しい知識やスキルを獲得できた」が25.4%→30.6%と5.2ポイント伸びています。
また、「本業の労働環境の魅力を改めて感じた」(21.9%→27.5%)、「本業の仕事の魅力を改めて感じた」(18.2%→25.0%)など、他社で働く経験を通じ自社の魅力に気付いているのも興味深い結果となりました(データ集 P19)。
兼業・副業に対し、収入だけでなく、「新たな発見」に価値を感じる人が増えている傾向が見てとれます。

なお、「兼業・副業を開始するときの難しさ・煩雑さを感じたこと」については、4割近くの人が「特に障壁や難しさはなかった」と回答しています(データ集 P21)。

「ふるさと副業」への興味が強い

昨今、都市部で働く人が地方企業で兼業・副業を実施する事例が増えています。リクルートではこのような副業の在り方を「ふるさと副業」と称し、新しい働き方として注目しています。
本調査では、「ふるさと副業」を「回答者自身の住まいとは異なる地域での兼業・副業(テレワークを利用して現地に赴かない働き方も含む)」と捉え、興味の有無やその理由を確認しました。
なお、ここでの「ふるさと」とは、出身地でなくても、「学校があった」「旅行で訪れた」「応援したい企業や人がいる」など、何らかの理由で想起される回答者自身の住まいとは異なる地域を指します。

本調査では、「ふるさと副業」を実施したことが「ある」と回答した人は14.6%でした(データ集 P34)。「ふるさと副業」への興味については、「非常に興味がある」が17.5%「興味がある」が38.9%と、興味を抱いている人は過半数に達しています(データ集 P30)。
興味がある理由としては、「自分に関わりのある地域に貢献したい」(47.3%)を筆頭に、「地域問わず、地方創生に興味がある」(40.8%)、「自分の経験や能力を地方企業で活かしたい」(34.8%)との声が多く聞かれました(データ集 P31)。

「ふるさと副業」で希望する働き方は、「テレワークと現地訪問を併用して働きたい」が半数近くを占め、2割強の人が「完全テレワーク」を希望しています(データ集 P31)。地方企業としては、他エリアの副業人材の獲得のためには、テレワークでの勤務体制の整備が欠かせないと言えるでしょう。

企業が兼業・副業人材を受け入れ、活用するために取り組むべきこと

一方で、兼業・副業人材を受け入れる企業にも目を向けてみましょう。
2021年調査結果では、社外から兼業・副業人材を受け入れている企業は47.9%と、半数近くに達しています。また、「受け入れていない」と回答した人事担当者も、3割近くが受け入れを検討中です(データ集 P47)。受け入れ目的として「人手不足の解消」「社内人材にはない知識やスキルを持った人材の確保」「イノベーションの創発や新事業開発につなげる」などが上位に挙がっています(データ集 P50)。

兼業・副業人材を受け入れている人事担当者に「兼業・副業人材と持続的な関係を築くためのポイント」について聞きました。寄せられたフリーコメントの一部をご紹介します(データ集 P55~P56)。

●任せる仕事内容の工夫
・任せる業務の内容と期待成果を明確にすること
・兼業・副業での労働を希望する人材に対して、本人が希望する内容と会社側が期待する内容をしっかりとすり合わせてから採用すること。また、定期的にフォローを続けていく仕組みづくり
・事前の業務内容のすり合わせと権限の確認。期待する具体的役割の確認

●価値観の相互理解
・兼業・副業をやる人たちの価値観を社員全員で共有することは大事だと思う
・既存社員と対象者の相互理解。対象者も会社に対してロイヤルティを持ってもらう
・多様な働き方を認めて、双方理解すること。密に連絡を取ること
・価値観の受け入れと異文化の許容風土の構築

●関係性構築
・積極的に社内で関わってもらうための関係性構築のため、キーマンとの交流など、人事が積極的に関わること
・既存従業員との軋轢をケアして、居場所を作る配慮をする
・常にコミュニケーションをとり意思疎通をはかることによってニーズを把握すること
・能力もあるが、やはり社風と人間関係が良好に保てるか。人間関係がよければ仕事の能力も発揮できる

●既存社員との公平性担保
・兼業・副業で働く人と自社の従業員との隔たりをなくすこと
・正規職員と兼業等職員との待遇格差や職場環境の公平性などをどう保つかを検討すること
・業務の公平性と査定の公平性と人間関係のバランスを保てなければ難しいと思う
・既存の社員との格差を生じさせないこと。平等に扱い、評価をすること

企業が兼業・副業人材を受け入れる際に留意すべき点は、任せる仕事を明確にし、丁寧なすり合わせを事前に実施することです。上記の意見にあるように、「任せる業務の内容と期待成果を明確にすること」や「本人が希望する内容と会社側が期待する内容をしっかりとすり合わせてから採用すること」が大切です。
任せる仕事内容と同等に大切にしたいのが、兼業・副業人材を受け入れるスタンスです。立場は違っても、同じ悩みを共有する当事者、仲間として兼業・副業人材を受け入れることが重要です。
個人側の調査でも、兼業・副業の仕事を探す際に重視する点として「職場の雰囲気や風土」や「一緒に仕事をする同僚との関係性」、「企業理念・ビジョンへの共感」などがの割合が2020年と比べて伸びており、人事担当者側のコメントでも「価値観の受け入れ」や「相互理解」、「積極的な関係性構築」が受け入れのポイントであるとの回答が得られています。兼業・副業人材と言っても、同じ目標を共有する仲間という意味では既存社員と変わりはありません。任せる仕事の明確化と関係性構築の工夫の両輪を回していくことができれば、兼業・副業人材の受け入れが成果につながるのではないでしょうか。

画像引用元:ミラキャリ通信 Vol.13 より

【ニュースレター:「ミラキャリ通信 Vol.13 『兼業・副業に関する動向調査2021』データ集を解説 友人との会話やSNSをきっかけに兼業・副業を検討する人が増加 副業の仕事選びでは『同僚との関係性』や『理念共感』を重視する傾向強まる」より|2022年10月11日・株式会社リクルート】

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