これから求められる 個を生かすオンボーディング vol.2
各社の課題意識からみる、オンボーディングの捉え方の違いと共通点
前回は、若手社員をスムーズに立ち上げていくことの課題について、何が起きているのか、整理した。
(第1回 環境変化の中で重要性が増すオンボーディング)
Z世代と呼ばれる若手は、生きることや働くことに対する価値観が変化し、モチベーションの源泉や強みが上司世代と異なってきている。一方、VUCA時代と言われるようにビジネス環境も急速に変化しており、若手の立ち上げに大きな影響を与えている。この双方の変化が相まって、若手の立ち上げをスムーズに行うこと、つまりオンボーディングを非常に難しいものにしている。
しかし、上手く取り組んでいる企業は、この問題を構造的な問題として捉え、自社がつくり出したい状態とリアルで悩ましい現実の双方を踏まえた課題設定を行い、取り組みを進めている。
今回は、その具体例をご紹介し、それらの中から見えてくるポイントを抽出しながら、オンボーディングを効果的に進めるためのキーファクター探索に向けての整理をしたい。
目次
各社がオンボーディングに対して持つ課題観
すでに取り組みを進めている各社はオンボーディング(入社者のスムーズな立ち上げ)に対してどんな課題観を持っているのだろうか。私たちがさまざまな企業のお手伝いをする中で良くお聞きする課題例をいくつかご紹介してみたい。
A社 B社 C社 |
いかがだろうか。これらは若手が立ち上がるタイミングで比較的よくある問題であると言え、その問題に対してストレートに課題設定している例である。簡単ではない採用を乗り越えて迎え入れた若手を、停滞させたりアンコントローラブルに離職させたりしたくないという内容だ。
その一方で、以下のような課題と解決策を設定した例もある。
D社 E社 F社 |
これらは、オンボーディングそのものをなんとかしたいという形で課題設定しているものではないと言えるだろう。事業推進・戦略推進のために若手の「スムーズな立ち上がり」は欠かせないものと位置づけ、目的のための手段として「立ち上げ」に意図的に取りくんでいる例であると捉えている。
では、一見バラバラしているようにも、一貫しているようにも見えるこれらの例をどのように捉えて理解すると効果的なのだろうか。
若手がたくさん辞めるので何とか減らしたい。それは確かに喫緊の問題である。まずはそこから取り組む必要がある場合も少なくないが、その先には若手をスムーズに立ち上げ、一人前になってもらい、事業推進に貢献してもらうこと、この点も忘れずに取り組んでいきたい。
オンボーディングの課題は様々な形で現れる
まずは、上記の6つの事例について少し整理してみたい。そのために、若手のオンボーディング(スムーズに立ち上げ)に関わる対象や立場を3層に分けて捉える。そうすることで、全体像を捉えやすくなるし、何に取り組むかについて格段に検討しやすくなる。
まず、「若手本人」を第1層として捉える。
- スムーズな立ち上がりを求められる本人。
- ただし、環境に適応し、立ち上がり、一人前になっていくスピードやプロセスは、事業や組織よって様々
次に、「若手本人を直接的に支援する対象や立場」を第2層として捉える。
- 現場で若手の育成に関係する、上司や育成担当、職場の同僚。
- ただし、どのような役割分担・体制・接点量でその立ち上げ・育成に関わるのかは組織によって様々。
そして、「若手本人に対して第2層を通じて間接的支援する対象や立場」を第3層として捉える。
- 仕組みをつくり現場の若手育成を促進させる事業や経営のボード陣やスタッフ(人事はここに含まれる)。
- ただし、事業のボード陣が直接行ったり、事業人事やコーポレート人事が担ったり、その役割・体制・接点量は企業・組織などによって様々。
もしかすると、この3つの層は自然に、そしてアタリマエのこととして取り組んでいるかもしれない。一方で、これまでの顧客とのやり取りを振り返っても、その点を明確に意識し言語化して検討していることはそれほど多くない。そのため、検討を進める際には是非意識的にこの3層を明確にして進めていただきたいと思う。オンボーディングをどこから見て、どこを課題と捉え、どこに力を加えて何を実現しようとするか。繰り返しになるが、検討の具体化が格段にやり易くなるはずだ。
具体的なイメージをしてみると・・・
例えば、若手本人(第1層)の離職を防ぎ自社や自組織に定着させることを狙うとしよう。それを実現するためには、やらなくてはいけないことにまみれ、育成の優先順位が上がらない上司(第2層)への働きかけが最も重要だ。上司に対して手を打つため、一歩を踏み出しやすくするコミュニケーション支援(ガイダンスやガイドブック、あるいはアセスメントツールの提供など)の仕組みをコーポレート人事(第3層)が提供する。そして継続的にPDCAが回るように、人事が定常的に運用する・・・。
このように明確化することで、取り組み方がとてもシャープになる。
ここで、前述の事例A~F社のケースを同様の形で整理してみるとどう見えるか整理してみた。表を確認いただきたい。
多くの企業が動かしているのは第3層で、ターゲットは多くが第2層であることが分かる。その一方で、同じ第3層でもコーポレート人事・HRBP(現場人事)・現場ボードという違いがあり、第1層や第2層との近さが企業によって違うことも分かる。またターゲットの多くを成している第2層も上司、育成担当、その両者など企業によって取り組み方が違う。更に、直接第1層に働きかけるケースもある。
明日への第一歩
貴社の場合はどうだろうか。
自社の課題とそれに対してどのように手を打っていくか、あるいはすでに打っているか、是非、同じフレームワークで他社と比較しながら整理してみていただきたい。自社の取り組み方がどのような内容か客観的に確認できるだろう。もしかすると、より良くするためのヒントが見つかるかもしれない。
ただ、今回ご紹介している事例の各社も、何がベストか、答えが自動的に出てきたものではないことは注意しておきたい。事例各社も仮説を立て、取り組み方をいくつか検討しており、自社の大事にしている価値観や目指している状態、現実の制約条件を総合的に考えて、打ち手を選択している。企業によってはサーベイなどの調査を行って、仮説の検証を行った上で、その意思決定の精度を上げたりもしている。
いずれにしても、我々は何を課題として捉え、どの対象に対してどのような力を加えるのか、関係者の視界をそろえて取りくむことが重要になる。正解がないため、意思をそろえて取り組み続けることで自社にとっての正解を引き寄せる必要があるからだ。そうしないと様々な壁を乗り越えて成果を獲得することができない。
今回のフレームワークでの確認が、貴社の取り組み方を明確にし、関係者の視界をそろえて取り組むことにつながれば幸いである。
次回は、その明確にした課題に対して、効果的に取り組んでいくためのヒントになるものをご提示できればと思っている。
若手本人がスムーズな立ち上がるメカニズムとは。過去弊社がお手伝いしてきた実例の中から見出してきたその構造をお伝えすることで、読者の皆さんの効率的なオンボーディングの実現につなげていきたい。
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