今年の新入社員に驚くべき傾向を発見!?

あなたの会社の新入社員育成は「リモートゆでガエル」を生み出していませんか?

7-9月の間に表1のように新入社員に関する多くのフォロー研修を実施してきました。そこで4月の導入研修で気づかなかった課題が色々出てきました。当社のお客様だけかどうかまだ判断がつきませんが、気をつけないとこれが何年か後に社会的な課題になる可能性があると心配しています。

例年実施しているプロコーチの今年の報告の中に「視野がせまい、周りへの意識が低い、ストレスは少ないが環境変化についていけない」というのが初めて挙げられました。これはあきらかに企業における「ゆでガエル問題」と共通する良くない傾向で、たいへん驚きました。
もし仮にこれが、リモートワークに起因しているすとれば、2年後が深刻です。想像してみてください。2020年春以降入社の新入社員(大学卒)が学生時代をフルリモートで過ごしてきた世代で占められてしまうということです。新入社員を受け入れる先輩・若手社員も4年目までがすべてリモート世代ですから、私たちは気づかぬままに「リモートゆでガエル」を生み出しかねません
一度自社の新入社員は大丈夫なのかを確認してみてください。必要であればいまからすぐに対策を打ってください。

今回のコラムでは、対策の中から、新入社員の個別対応、メンター制度の強化、チーム意識の強化、長期的なフォローについて紹介します。

目次

  1. これまでの新入社員教育における主体性向上への取り組み
    (1)長年の課題は主体性向上
    (2)配属後の個別対応には1対1@20分のコーチングが有効
    (3)メンター制度における以前からの課題
  2. 2022年 個別コーチングで指摘された問題
    (1)昨年までの主要指摘項目
    (2)今年の指摘項目で出てきた心配な兆候
  3. 「リモートゆでガエル現象」への対策
    (1)配属後の個別対応
    (2)リモート時代にふさわしいメンター制度の強化
    (3)社員の主体性を発揮させる場としてのチーム意識強化施策
    (4)若手社員の成長を継続させる長期的なフォロー
  4. まとめ

1.これまでの新入社員教育における主体性向上への取り組み

(1)長年の課題は主体性向上

新入社員の長年の課題は主体性を十分発揮しない、言われたことをしっかりやるが自らは積極的に動かないことです。数年前から新入社員の主体性を向上させるために様々な業界の多くのお客様の新入社員とこのような取り組みをしています。ポイントは次の5つです。

【主体性を発揮させるためのポイント】

  1. 研修そのものを受身的にさせないで受講者主体にする
  2. 配属後にメンターが成長支援できるようにする
  3. 継続的に個別コーチングでフォローする 
  4. 秋頃に中間振り返りと目標設定の研修をする
  5. 1年目の終わりに成果発表をする

(2)配属後の個別対応には 1対1のコーチングが有効

特に有効なのが個別にきめ細かく対応できる短時間の個別コーチングです。
1対1で行い、次のような流れで行うのがポイントです。

◎個別コーチングの流れ(20分の場合のタイムスケジュール)
0:00 挨拶
1:00 テーマの確認
2:00 取り組み内容
8:00 良かったこと、うまくいったこと
12:00 取り組むうえでの障害、難しかったこと
16:00 何があれば取り組みができるか
19:00 ネクストアクション
20:00 終了

このコーチングの効果は以下の通りです。

最初に安心させ、次に記憶を引き出して自分の言葉で語らせ、整理させ、結果を考えさせ、気づきや反省を引き出し、次の行動を決めさせるやり方は、新入社員から見ると、やさしく聞いてくれて、肯定的なあいづちを繰り返し、最後は背中をそっと押してくれるので、自分の自発性が最大限に発揮できたと感じることができます。
しかも社内の人にあまり知られたくないことも安心して吐き出せるので、見守られている感が強く、安心感もあります。多くの新入社員から「またコーチングを受けたい」というコメントが出るのは納得できます。

さらにコーチは、結果をまとめて人事に報告する中で「対策が必要な状況、背景となっている職場の環境や上司・同僚の状況」という危険信号を検出する役割も担っています。

しかし注意すべきことはコーチングのスキルが不足していると業務レビューの場に変質しやすいことです。
例えば、忙しい上司がコーチを担当すると最悪のケースは上司が余計な時間を使われているという気持ちが顔に出て、未熟な新人への説教タイムや指示・命令の場になってしまいます。先輩社員のコーチも考えられますが、わずか20分でこの育成のプロセスをやりとげられる社員は多くはないでしょう。
多くの企業で外部のプロコーチが活躍している理由が良くわかります。

(3)メンター制度における以前からの問題

新入社員一人ひとりに先輩社員をメンターとしてアサインしている企業は多いのですが、残念ながら以下のようにうまくいかない例が少なくありません。

【メンター制度における以前からの問題】

  • 先輩だからと言って育てるスキルは期待できない(良くても教えるだけ)
  • 教えるスキルもメンターによってばらつきが激しい
  • 一律に2年目3年目の社員をメンターとしてアサインしている
  • 新入社員育成の優先順位が低く、メンターに十分時間を与えていない

2.2022年 個別コーチングで指摘された問題

このような課題をかかえている新入社員育成ですが、実際の現場では具体的にどのような問題が起きるのでしょうか。当社が実施している個別コーチングに関して、多くのプロコーチが指摘した共通項目をレビューしてみました。

(1) 昨年までの主要指摘項目

昨年までの新人個別コーチングで共通して指摘されていた「主体性」に関連する項目について、傾向とその要因や背景を抜粋してまとめました。主体性に関してもさまざまな要因があり、与えられた知識・環境の不十分さや、チーム意識の希薄性などもあります。

(2) 今年の指摘項目で出てきた心配な兆候

今年も主体性欠如の指摘がありましたが、加えて「視野がせまい、周りへの意識が低い、ストレスは少ないが環境変化についていけない」という指摘がどのコーチからも出ました。
これは2017年から新入社員の個別フォローを本格的に実施していて初めてのことです。あくまで、当社のお客さまのケースであり、それもまだ少数ですが「社会人としてのベース(基本的な経験値)が低下した」と読み取れる非常に心配な兆候です。

これを見て驚きました。成長せずに衰退する残念な企業を例えて表現する「ゆでガエル問題」と非常に似ていると感じられます。すなわち自己中心的で成長しない社員が毎年一定比率で蓄積する兆候が出たということです。

もちろん社員の資質や性質にはばらつきが大きく、そのような心配のない新入社員も多数おり、全員の問題にはなっていません。しかし、マネジメントが難しい、コミュニケーションが悪くなる、社員同士の人間関係が弱くなるといった、リモート化の懸念事項として以前から挙げられていた指摘に非常に似ていることは問題です。

いま世界的に成長している企業は、育成・研修をリモート化により飛躍的に質的・量的進化させていることが分かっています。こうした企業に続くためにも、リモートの時代に発生した懸念に対しどのように対処していけば良いかを考えてみましょう。

3.「リモートゆでガエル現象」への対策

(1) 配属後の個別対応

検討ポイントは次の通りです。これまで導入していない企業には、既にご紹介した個別コーチングの導入が極めて有効です。

【個別対応の強化にあたっての検討ポイント

  • まずコーチングのような配属後のヒアリングをしましょう。 そうしないと、現場での行動と成果がわかりません。
  • 次にヒアリングは簡単なパルスサーベイではなく、しっかりと情報を引き出せるスキルのある人と時間をかけて行いましょう。
  • そして、ヒアリングによって得られた情報を他の施策につなげて使いましょう。

(2) リモート時代にふさわしいメンター制度の強化

リモート主体のためメンターの役割は以前より重要になっています。冒頭でもお伝えしましたが、新入社員につくメンターの彼らも、リモートの影響を受けて課題があるのにも関わらず気づかぬまま(または周囲が指摘しないまま)、後輩である新入社員のフォローをしてしまう可能性があるからです。
リモートならではコミュニケーションの難しさに加えて、こうした背景がある点を踏まえてメンター制度を強化(見直しに近い)していく必要があります。

【メンター制度の強化が必要な背景】

  • 今後は配属時に社会人ベースができていない新入社員が増えてゆく。
  • リモート主体のため新入社員が他の先輩や学べる機会やOJTが少なくなっている。
  • この1-2年で入社した先輩は、以前のようなOJTでちゃんと育てられていないため、学ぶ経験が不十分。後輩へ良い育成のできる若手社員がなかなか育たないことが懸念される。

従って 強化すべきポイントは次のとおりです。

【メンター制度の強化のポイント】

  • 優秀なメンターを人選する(少なくてもビジネスの基本ができていて、人に教える関心があって、新入社員から見て尊敬できる成果を出している人)
  • 効果的な成長支援ができるようにしっかりとトレーニングする(例:一方通行ではなくて相手と対話をしながら教えるテクニック、教えるだけではなくて効果的に質問を使って相手に気づかせるコーチングスキル、わかったことができるように効果的な練習する機会を与えるコツなど)
  • 定期的に他のメンターを集め成功事例を共有させる

(3)社員の主体性を発揮させる場としてのチーム意識強化施策

以前は入社時に「社会人への意識転換」を目的とした集合実体験型研修がさまざまな形で行われ、その強烈な刺激によりベースの低かった新入社員にも気づきを与え、基本的経験値が押し上げられていたと考えることはできないでしょうか。
そうだとすればパンデミック対策でそれが出来なくなった結果として、「視野がせまい、周りへの意識が低い、ストレスは少ないが環境変化についていけない」社員の比率が従来より増えた理由が納得できます。

そこで今後はチームビルディングを一歩進めた、社員が自分の主体性を発揮する訓練の場としてのチーム意識強化施策が必要になってくると考えられます。もちろんリモートで行うのでやり方には慎重な検討が必要です。

【チーム意識強化施策の検討のポイント】

  • 実施時期は配属後の個別フォローで最初のヒアリングの後が適切。
  • ちょっとしたプロジェクト(例:お客様への提案作成、業界分析レポート作成など)など、テーマは会社特性に合わせメンバーが主体性を発揮できそうなものとする。
  • 対面スキルを強化するためにロールプレイと対面シミュレーションを中心に行う。
  • 同一メンバーで最低2回以上行い、互いに成長を確認できるようにする。

(4)若手社員の成長を継続させる長期的なフォロー

以前から定着フォローが重要とよく言われていますが、今年の新入社員のように配属後も社会人ベース(基本的経験値)が弱い場合には定着フォローがさらに大切ですし、長く続ける必要があります。

まとめ

まだ大問題にはなっていないですが、気をつけないと知らないうちにこのパンデミック問題によって痛い面にあう可能性があります。ぜひ、新入社員の個別対応、メンター制度の強化、チーム意識の強化、長期的なフォローをして問題を乗り越えましょう。

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