第11回 HR EXPO (人事労務・教育・採用)[秋]第11回 HR EXPO (人事労務・教育・採用)[秋]

1on1の現状と今後 vol.1

1on1の可能性とは

リモートワークの進展による職場のコミュニケーション量の減少等をきっかけに各社で1on1の導入が進んでおり、当社の調査*では、約7割の企業が導入しています。

導入率が上がるに連れ、一定の効果を評価する声もある一方で、形骸化してしまったという声も聞かれます。本来、1on1はマネジメントコミュニケーションツールの一つで、変化の激しい時代、組織を変革していくにあたって非常に有効なツールであり、可能性に満ちています。本連載では、当社が100社以上の1on1導入・定着支援をする中で見えてきた成功の秘訣を場面ごとにご紹介します。読み進めていただく中で、自社にとっての成功イメージを描いていただけたら幸いです。

*「1on1ミーティングに関する実態調査」(リクルートマネジメントソリューションズ)

目次

  1. 1on1とは何か
  2. 1on1の可能性を考える
  3. 1on1導入には長期戦になる覚悟が必要

1on1とは何か

最初に、1on1を成功に導くために大切なことをお伝えします。
それは、1on1を推進する担当者自身が、1on1を通じて自社やチームをどのような組織に変えていきたいのかを自分の言葉で語れることです。

みなさんは、1on1をどんなものだと捉えていますか?
当社では、上司と部下が定期的に行う1対1の“対話”によるマネジメント手法だと捉えています。

1on1の中では部下がその時に上司と話をしたいことをテーマ(What)にし、2週間~1か月に1回の頻度(How Often)、時間は30分~1時間程度(How long)、また、上司が部下に仕事を“教える”というよりは、部下が考えていること・想いを部下に焦点を当てて“引き出す関わり”を大事にして対話しています。具体的には、上司の働きかけにより部下が自分で考え、解を導き出す時間、になるように意識しています(How)。
実施目的は多岐に渡り、各社様それぞれですが、1on1を実施することが目的ではなく、人・組織の成長を促すツールとして使っていることが多いです(Why)。目的のバリエーションについては第2回目でお話しします。

筆者が部下に対して1on1を実施する際には、部下が最高のパフォーマンスを仕事で発揮する支援のために(Why)、部下がその時に話したいことについて(What)、1週間に1回(How Often)30分~1時間程度(How long)、じっくり部下の話を聴いています。(How)
日常の会話では、緊急対応業務について指示をすることが多くなりがちなので、1on1の時間では前回の1on1からの間にどんな仕事をして、何を学んだのか会話をすることが多いです。

たまに、1on1は部下のプライベートなことを会話する時間だと捉えている方がいますが、上司と部下は仕事をするために形成された関係性ですので、趣味や休日の過ごし方などのプライベートの話を上司が部下に無理に聞き出す必要はありません。
1on1をわかりやすくお伝えするために「1on1では仕事以外の話をする」と伝わっている場合もあると思いますが、当社は、「1on1では人に焦点を当てて対話をする」と伝えています。
もう少し詳しくお伝えすると、部下を目にしたときに、仕事の進捗状態/成果を確認することは仕事上の会話、その仕事に対しての部下なりの考え方/感情/仕事を通じた成長について聴くことは人に焦点を当てた対話、だと整理出来ると思います。

【図1】各社様の支援の中で見えてきた1on1の実施概要

【図2】1on1で良く扱われるテーマ

1on1の可能性を考える

ここまでで、1on1の概要についてお伝えしてきました。

では1on1を行うことは、会社や皆さんにとってどんな可能性に繋がっていくのでしょうか?

昨今は「価値観の多様化」「働き方の多様化」などの背景から、「個を生かすマネジメント」の重要性が高まっています。

筆者が若手社員だった時には、業務中の上司との会話はほぼ進捗報告や仕事の相談でした。上司のことを知る/自分のことを知ってもらう機会は専ら宴席でした。
皆さんや筆者もそうであるように、人は様々な感情や考え方を持ちながら仕事をしています。最近の若手社員が急に感情や価値観が豊かになったというわけではなく、価値観は元から多様でしたが、仕事のやり方・場所・仕事に向かうモチベーションなどを個人が自ら選択・表明しやすい世の中になったのだと感じています。
筆者の世代では「感情は仕事に持ち込んではいけない」と諸先輩方に教わったことも多かったと思いますが、これからの時代は部下のモチベーション管理もマネジメント業務の一つとなっていきます。
もちろん、部下本人が自分のモチベーションを保つことが大前提ですが、上司として、モチベーションが上がらない状況であることをまずは知っておくこと、また、その要因が仕事にあるのであればなるべく要因を取り除く支援するように動くことは重要なのではないでしょうか。

更に、最近は「20年後には今やっている仕事の3分の1がなくなる、新しい事業の柱を創らないと」という話をよく耳にします。そこまで急激な変化が必要とされていない会社でも、このままで良いと思っている企業は殆どなく、皆さん何らか、自分たちが変化する術を探しているように感じます。

実際に、変化や新たな事業戦略遂行のために人事制度を改定する企業も多くみられ、JOB型人事制度への転換、ノーレイティング、キャリア自律をより求めるための制度改革、など最近多く聞きます。
そのどれもが、現場の上司が部下のことをよく知っていないと成り立たないものなのです。
例えば、「過去どんな仕事をしてきたのか」「今の仕事に何を感じているか」「仕事のやりがいは何か」「将来はどんな仕事で生きたいと思っているのか」「今の仕事に何を感じているか」などです。
こういった話題は、日常の業務の話題やチームのメンバーがいる場ではしにくいので、ここで1on1の出番です。
1on1では「人に焦点を当てる」とお伝えしましたが、その小さな一つの現場マネジャーのアクションが、実は大きな会社の変革の肝となっているのです。

一方、今のマネジャーの立場に立つと、世の中的な必要性は理解できるが、自社の今の環境下で1on1を本当にやる必要があるのか? という疑問もあると思います。
経営層の方針もあいまいな中で、ガバナンス対応、業務権限の細分化、仕事の成果が見えにくい、やりがいが持ちづらい、さらにリモート環境になり部下の状況が見えない。自分の組織運営はこれで良いのかと常に不安な中、「組織成果」を常に求められる現場の息苦しさがあると思います。そんな中で「部下個人のモチベーションに気を配れ」「部下を成長させよ」と言われても限界、と思われる方もいるのではないでしょうか。
現場が変わっていかないと自社事業の未来が発展していかないけれど、現場の忙しさ、苦しさも理解できる、というジレンマは殆どの1on1導入企業が抱えています。

実は、現場マネジャー視点でも1on1には大きな可能性があります。それは、1on1を通じて部下が育ち、より高いパフォーマンスを発揮してくれることでマネジャー自身、自分が使いたいことに時間を使えるようになっていくことです。
今の半分でも部下が細かな指示なく動いてくれたらどんなに楽でしょうか。指示に使わなくてよい仕事は何に使いたいですか? そんなことを考えたら、ワクワクして来ませんか?

1on1導入には長期戦になる覚悟が必要

ここまで読み進めていただいた皆さんには、1on1の可能性についてご理解いただけたのではないかと思います。

1on1導入に向けた詳細は次回以降連載していきますのでぜひ楽しみにお待ちいただきたいと思いますが、1点予めお伝えしておきたいことがあります。

それは、1on1導入には推進していく気力と上達までの時間が必要となるということです。
先ほど述べたように、現場にはプレイイングマネジャーが多く、更に様々な法整備などでただでさえマネジャーの負荷が高まっています。
その環境の中で、1on1は追加でコミュニケーションの時間を取れというメッセージでもあるので現場からの反発は必ずあり、推進者はそれを乗り越えてでも推進していく覚悟が必要です。
また、1on1コミュニケーションが当初目的である部下の成長支援の場となるまでには各社差はありますが、2年程度の時間がかかります。
初めて自転車に乗る時の練習のようなもので、周囲を見て乗り方はわかっていても、自分ひとりで乗れるようになるためには、漕いで転んで修正して、のプロセスが必要になるのです。

ただし、地道に正しく1on1を実施していけば、必ず成果はあがります。
とあるトップダウンの会社では、「役員の講話中に若手社員から質問が出るようになった」「部下から改善提案が出るようになって、部下もちゃんと考えていたと分かった」という声を最近聞きました。また、1on1をうまく活用している部ではエンゲージメントサーベイの結果が良い、という事例はよく耳にします。ダニエル・キムという元MIT教授は結果の質を上げたいのであれば、まずは関係性の質をよくすることが重要だという主張を発表されていますが、まさしくこの理論が実証されているのだと感じます。

あなたは、1on1を通じて自分の会社がどんな会社になっていると嬉しいですか?
その目指したい方向性に向けて、1on1に気力/コストを投資する覚悟はできそうでしょうか?
1on1を推進・実施することは自分にとって誇れる仕事だと想えそうでしょうか?
5回の連載の最後にもう一度、上記の3つを問いかけさせていただきます。
ぜひ、頭の中に3つの問いを思い浮かべながら、全5回の連載にお付き合いいただければ幸いです。

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