第14回HR EXPO春(人事労務・教育・採用)|RX Japan株式会社第14回HR EXPO春(人事労務・教育・採用)|RX Japan株式会社

これから求められる 個を生かすオンボーディング vol.1

環境変化の中で重要性が増すオンボーディング

新しい仲間、特に新入社員を迎え入れることは、組織にとても良い刺激を与えてくれる。自分たちが顧客に届けている価値について再考したり、それを支える人や組織が大事にする文化や風土を見つめなおしたりする機会になる。

しかし、その良い機会のはずの迎え入れに対して、多くの企業で問題意識が高まっている。
せっかく迎え入れた若手社員が理由もわからず急に退職したり、メンタル不調になってしまったり、厳しい事業環境の変化の中で若手に早く活躍してほしいが手を打ち切れていなかったりなど。こうした声は大小関わらずよくお聞きする。

本連載では、この若手社員のスムーズな立ち上げ(=オンボーディング)の問題は、俯瞰するとどんなもので、それがなぜ生じているのか、どのように対処すればよいのか、体系的に整理し、みなさんと考えるきっかけにしたい。

目次

  1. 若者自体が変化している
  2. 世代間のギャップが生まれている
  3. キャリアに対する不安も高まってきている
  4. ビジネス環境の変化が若手の立ち上げに大きな影響を与えている
  5. オンボーディングはますます難しいものになっている

オンボーディングがうまくいくかどうかは人と組織の重要な課題になってきている。
オンボーディングがうまくいっているとはどういう状態だろうか。
それは一般的には、『新入社員が入社後スムーズに立ち上がり、定着し、戦力化すること』と定義できるだろう。厳しい人材獲得競争の中で、苦労と努力の末、ようやく仲間として迎え入れた若手社員たちがその状態に早期に達することは、たぶんすべての企業に共通の思いだろう。

昔から若手社員をスムーズに立ち上げるのは難しいと言われていたが、
企業からのご相談を伺っていると、昨今は、課題が複雑化し、難易度も上がってきているように思われる。

何が起きているのか、少し整理してみたい。

若者自体が変化している

新しく仲間になる新世代の若者(Z世代※1)たちは、デジタルネイティブであり、個を尊重する教育や生育環境の変化の影響を受けて、価値観や行動スタイルが上司世代と大きく変わってきている。

たとえばある若手のケースでは、学生時代からこれまで自分のやりたいことを選んで取り組んできたし、それでOKもらってきたので、育成者はやらなくてはいけないことに取り組ませるのが難しい。また、強く叱られたり、突き放されたりした経験も少ない。そのため、育成者は、「伴走して褒めて背中を押して」を繰り返す必要がある。これは一例だが、比較的皆さんの周りの若手にも「あるある」のケースではないだろうか。

育成者 :1048 名(過去 3 年以内に新人育成経験ある人)新人・若手 :424 名(入社 3 年目以内の人)の経験を比較した当社の調査結果(表1)によると、社会人になる前に経験していることとして、我慢・自力突破、叱られ、試行錯誤の経験値が減っており、育成担当との間でギャップが生じやすくなっていることがわかる。


【表1】出典:リクルートマネジメントソリューションズ インターネット調査(2018)

一方で、対話の経験値は学校教育を通じて増えており、物事への取り組み方に変化が起きていることがわかる。
前述の若手のケースでは、対話を通じ自身の中で「これは意味や価値が大きなものだ」と理解し、スイッチが入ると全力で取り組むということがあった。そこで生じる爆発力は周囲を驚かすことがある。このような点もZ世代の若手の特徴と言えそうだ。

世代間のギャップが生まれている

このような若手自体の変化が、育成における関わり方にも変化を与えている。

たとえば、別の若手のケースでは、育成担当や上司が叱っているわけでも怒っているわけでもないが、育成担当や上司のことを怖がり、ミスやうまく進まないことを相談してこない。失敗自体よりもできないと思われることを恐れているように見える。しかし関わる側は言うべきことは言わないといけない。そのため、この若手のケースでは、本人に注意する人とフォローする人として上司とリーダーで役割分担し、そのバランスをとることでの関り方を工夫している。

当社の新入社員意識調査の結果(表2)によると、若手の理想の職場・上司像は過去10年で大きく変化している。互いに鍛え合う活気のある職場は理想ではなくなっていき、その代わりに互いの個性を尊重し助け合う職場が理想になってきている。また、情熱的に仕事に取り組み周囲を引っ張る上司は理想ではなくなってきており、個々の強みや良い仕事を褒め丁寧に指導する上司が理想になってきている。
昔から、世代間のギャップはあったが、従来とは異なる価値の軸が生まれてきていると言えそうだ。


【表2】出典:リクルートマネジメントソリューションズ 新入社員意識調査(2022)

キャリアに対する不安も高まってきている

更に若手たちのキャリアに対する捉え方について注目してみたい。
キャリアの初期のタイミングである「今所属している組織」をどのようにとらえているかだ。

たとえば、早いタイミングで転職したある若手は「前職ではこのままでいいのかとずっと不安に思っていたし、同世代のSNSの発信が嫌でも気になって焦りが増していた」と振り返っていた。その一方で新卒入社のある若手は「今の仕事は刺激がある。よく心理的安全性というが、だからといってなんでも許されるぬるい感じとは違う。そうなると刺激はなくなる。」と語気を強めていた。それらは私にとってはとても印象的で、改めて心理的安全性とは何かを考えるきっかけになっている。

大手企業に勤める若手に向けたある調査の結果(表3)によると、いつまでその組織で働きたいかという問いに対して、3年以内が45%、5年以内が60%というイメージを持っていることがわかっているが、これはこれまでの3年3割という離職に対する定説に上昇圧力をかける結果だと考えている。


【表3】出典:リクルートワークス 大手企業における若手育成状況調査報告書(2022)

また同じ調査の別の結果(表4)の、そのような若手が持っているキャリアに対する不安感にも注目したい。これらは彼らの危機感の大きさを表している。このままでは成長できないかもしれない、友人などに差をつけられている気がするという捉え方が3割を超え、他で通用しなくなるのではないかという危機感に至っては5割弱となっている。不安定な世の中でいかに自分自身に力をつけるか、そこに強い危機感がある層が少なからずいることがよくわかる。


【表4】出典:リクルートワークス 大手企業における若手育成状況調査報告書(2022)

ビジネス環境の変化が若手の立ち上げに大きな影響を与えている

ここまで、若手側の視点でその変化を見てきたが、若手を受け入れる側の変化にも注目したい。

まず事業自体が、情報技術の発達やコロナ禍の影響などでVUCA※2の度合いを高めており、その変化は大きく多様で先をますます不透明なものにしている。既存事業はこれまでの延長線上では成長は難しく非連続な変化や創造を求められている。
これぞという正解は誰も持てないため、それぞれが各自の価値観を活かしながら自律的にアクションをつづけ、対等に解を探索し、協働していくことが欠かせないものになっている。

そのような環境下で、「自律と協働」を求められている個々人や組織は繁忙を極めており、ゆとりをもって人を育てる余裕を失っていることも少なくない。当社の調査(表5)によると「ミドルマネジメントの負荷は過重になっている」という課題が、現場における組織課題の上位に来ている。そして「新人若手の立ち上がりが遅い」、「それを支える職場ぐるみで人材育成を行う風土自体がなくなってきている」という課題感も強くなっている。


【表5】出典:リクルートマネジメントソリューションズ マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査(2021)

しかし、そんな中で求められる協働はというと、多様な人材や関係者との間で行うものが増えるばかりでますます難しくなってきている。そこにコロナ禍によって加速したリモート化が更に追い打ちをかけている状況だ。

オンボーディングはますます難しいものになっている

このように難しいことづくしにある現場では、マネジメントの負荷が高まっており、丁寧な若手育成を行うことが非常に難しくなっている。

一方で、前述のとおり生育環境の変化の影響を受けた若手たちは、生きることや働くことに対する価値観が変化し、モチベーションの源泉や、エネルギーの発揮する対象が異なってきている。

この双方の変化が相まって、若手の立ち上げをスムーズに行うこと、つまりオンボーディングを非常に難しいものにしている。しかし、この構造的な難しさを乗り越えようとする時、本人任せや現場任せではうまくいかない。それでは、負荷が偏りどこかにひずみが生まれてしまう。ではどうしたら良いのか。

上手く取り組んでいる企業は、この問題を構造的な問題として捉え、自社がつくり出したい状態とリアルで悩ましい現実の双方を踏まえた課題設定を行い、取り組みを進めている。
本連載の次回以降ではその具体例をご紹介しつつ、それらの中から見えてくるポイントを抽出しながら、オンボーディングを効果的に進めるためのキーファクターについて考えていきたい。

>>>これから求められる 個を生かすオンボーディング vol.2 各社の課題意識からみる、オンボーディングの捉え方の違いと共通点

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