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「つながらない権利」を理解して、リモートワークでのハラスメント・長時間労働リスクを回避しよう

「つながらない権利(right to disconnect)」とは、勤務時間外や休日に仕事上のメールや電話への対応を拒否する権利のことで、フランスの2017年1月施行の労働法改正に盛り込まれたことで世界的に話題になりました。(出典:海外で法制化進む「つながらない権利」 は日本でも主張できるか海外で法制化進む「つながらない権利」 は日本でも主張できるか

休みの日に上司からメールが入っており、休日出勤や長時間労働をせざるを得ない人もまだまだ多いのではないでしょうか。しかしそんな働き方をしたことでメンタル不調になってしまう人もいるでしょう。プライベートも含めて自分らしい人生を選択できる働き方が一番だと思っています。

今回はこの「つながらない権利」について、詳しく解説していきます。

目次

  1. コロナ禍によるリモートワーク拡大により深刻化した「つながりやすい環境」
  2. 海外で法整備が進む中、日本人がつながってしまう理由
  3. 「リモハラ」を防止するためにも企業が整備するべきことは?
  4. 働く側も「つながらない権利」で自分らしい働き方を確立しよう

コロナ禍によるリモートワーク拡大により深刻化した「つながりやすい環境」

スマートフォンやインターネットの発達によりワークスタイルが大きく変わりました。いつでもどこでも仕事ができる、メールで報告をすればわざわざ帰社しなくてよくなったなど、社員にとってのメリットが多くあります。一方で、帰宅途中で緊急連絡が入って会社に戻らざるを得なくなった、休日に得意先から呼び出されることが増えたというように、本来の業務時間外の労働を求められることが増えました。実際、新婚旅行中に顧客対応を余儀なくされ、結果、新婚早々夫婦喧嘩に発展したという話を聞いたこともあります。

今回のコロナ禍による在宅ワークが広がって以来、常時パソコンのビデオカメラをオンにすることを義務付けたり、ランダムなタイミングでパソコン画面を勝手にスクリーンショット撮影する機能の導入などがニュースで問題になりました。就業時間内とはいえ過剰な監視や頻繁な報告は生産性を著しく落としかねません。

また、以前より上司からの就終業時間外のメールや電話に悩んでいたが、姿が見えないことでサボっているのではと疑われたことで、チャットは即返信、2時間ごとの業務連絡を義務付けられ、さらには夜中でも休日でも連絡にすぐ対応せず翌日や週明けに返信すれば「やる気がない」と叱責を受けるという話も聞きました。

在宅勤務とはいえ本来は就業時刻が終わればプライベートな時間です。一刻を争うような緊急事態であればやむを得ないかもしれませんが、そうでないのに頻繁に業務関連のメールが届けば大きなストレスになりますし、それでは実質年中無休でオフィスにいるのと変わらず、長時間労働を引き起こします。

オフィスと違って仕事をしている姿が見えないため、「仕事をしていないかもしれない」と心配になるかもしれません。しかし実際のところ、取引先からの就業時間外の連絡に即時対応することによる働きすぎや、上司からの頻繁な連絡を監視のように感じてストレス過多になり、メンタル不調を起こすケースは多々あります。
労使トラブルを引き起こさないためにも、上司と部下間の信頼関係を構築し、信じて任せるマネジメントを実施することが、リモートワークにおいてはとても重要です。

海外で法整備が進む中、日本人がつながってしまう理由

海外ではコロナ禍よりも前から「つながらない権利」について対策が進んでいました。どこよりも先に動いていたのはフランスで、冒頭で紹介したように17年の労働法改正で「つながらない権利」を行使するための条件を労使交渉で取り決めることが規定されています。また、イタリアでも同年に「スマートワーキング」に関する法律が策定されており、カナダでは20年に法制化の議論が開始されました。21年1月にはメキシコにて「つながらない権利」の尊重がテレワーク法で使用者に義務化され、同年7月には私生活とのバランスがとれる在宅勤務実現のために、つながらない権利の確立を盛り込んだ「ニューディール・フォー・ワーキング・ピープル」が英国で発表されました。

ドイツのように法的アプローチではなく企業と労働者間での交渉を選ぶ国もあり、フォルクスワーゲンやシーメンスのような多国籍企業ではつながらない権利を保障する企業協定があります。

参照:WOMAN SMARTキャリア 深刻化する時間外メール 「つながらない権利」に注目

日本でも「つながらない権利」を求める声は大きくなってきていますが、法制化の動きにはつながっていません。
21年3月に厚生労働省が改定した「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」においては、以下のような注意喚起はされましたが、強制力はありません。

<メール送付の抑制等>
テレワークにおいて長時間労働が生じる要因として、時間外等に業務に関する指示や報告がメール等によって行われることが挙げられる。このため、役職者、上司、同僚、部下等から時間外等にメールを送付することの自粛を命ずること等が有効である。メールのみならず電話等での方法によるものも含め、時間外等における業務の指示や報告の在り方について、業務上の必要性、指示や報告が行われた場合の労働者の対応の要否等について、各事業場の実情に応じ、使用者がルールを設けることも考えられる。
<労務管理上の留意点>
テレワークを実施している者に対し、時間外、休日又は所定外深夜のメール等に対応しなかったことを理由として不利益な人事評価を行うことは適切な人事評価とはいえない。

参照:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」

「つながらない権利を放置したままにすることのリスクと

2021年3月に株式会社NTTデータ経営研究所が従業員10名以上の企業に対し、経営者・役員を含む雇用者に対して行った調査(有効回答者数:1,021 人)では、「就業時間外の緊急性のない業務連絡への対応」については「対応したいと思う」が18.6%、「対応するのはやむを得ないと思う」が46.7%という結果が出ています。

出典:株式会社NTTデータ経営研究所「新型コロナウイルス感染症と働き方改革に関する調査」P21より

日本では仕事とプライベートの境目があいまいなため、勤務時間外の業務連絡にもあまり抵抗がありません。さらに「24時間、働けますか」というコピーが流行したように、就労時間外でも連絡があればすぐに反応しなければ責任感がないと思われてキャリアに悪影響が出るかもしれないという恐れより「対応しなければならない」と感じている人は少なくないでしょう。
ですが、こうした問題を放置すれば、社員の休息時間の不足につながって、心理的にも身体的にも健康のバランスを崩すリスクが生じ、そこから会社全体の業績にも影響がでる可能性があることを理解しなければなりません。

業種や労働条件にもよりますが、勤務時間外にも業務連絡がある可能性があれば、企業側はその旨を「労働条件通知書」や「就業規則」などに明記し、従業員に周知徹底してトラブルを未然に防ぐ必要があります。「緊急だったから、つい連絡をしてしまった」というケースにおいても、連絡をする側の十分な配慮の必要性を周知するとともに、企業はその対応時間を「労働時間」として扱い、当然賃金面でも保証をする必要があります。

「リモハラ」を防止するためにも企業が整備するべきことは?

就業時間外の業務連絡への即時対応を求めるのは、長時間労働のリスクだけでなく、「リモハラ(リモートハラスメント:パワーハラスメントの一種)」を引き起こしかねません。

22年4月より、中小企業においても改正労働施策総合推進法(通称「パワハラ防止法」)が前面施行され、事業主にはハラスメント防止のための雇用管理上の措置が義務付けられました。
リモートワークでもオフィスと同様にパワハラに値する行為を行ってはならない旨を周知・啓発して、ハラスメントの防止対策を行わなければなりません。
そんな中、就業時間外の「つながらない権利」の尊重は、リモハラの抑止策として有効です。

「つながらない権利」を侵害してしまいがちなのは、かつての長時間労働が当たり前だった世代の人に多く、往々にして上司や取引先という優位的な立場にあります。
そもそも勤務時間外に連絡をしなければ「つながらない権利」の侵害は起きなくなるため、管理職への教育や研修を行って意識改革を働きかけるのは必須でしょう。取引先が相手の場合、取引の契約内容を明確にすることで勤務時間外労働を必要としない体制を作ることが求められます。

「労働時間」が1日8時間、1週間で40時間を超えた場合、企業は従業員に対して残業代の支払い義務が生じます。
業務時間外に「つながる」ことを社内ルールや指示で明確に強要していなくても実質的につながり続けている状況を知りつつ放置した場合、企業はそれを「黙認」したとして「手待ち時間」を「労働時間」として判断される可能性があることを、経営者や人事担当者は意識する必要があるでしょう。

働く側も「つながらない権利」で自分らしい働き方を確立しよう

ここまで人事担当者や経営者の方向けに書きましたが、最後は働くビジネスパーソン向けにお伝えします。

社会人として会社のために責任をもって業務を遂行したいと思うのは当たり前のことです。必要があれば残業や休日出勤をするのもやむを得ないでしょう。ですが、それとプライベートの時間でも仕事を受け入れるというのは別です。

これからもリモートワークの日々が続くかもしれません。もしかするとオフィス出勤の日々が戻って来るかもしれません。いずれにしても、必ずどこかで「ここまでは仕事の時間。ここからはプライベートの時間」と明確な線引きをすることで、きっともっと自分らしく働きつつ、より活躍できるようになるでしょう。

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