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2022年4月から変わる、男性の育休。「男女を問わず育児ができる社会」を考える。

2022年4月からいよいよ施行される、いわゆる「男性の育休」制度。法改正があることは知っているけれど、具体的にはどのような内容なのかはわからないという方も多いのではないでしょうか。

今回は、男性の育休について、現行制度との違い、そのメリットや懸念点について紹介するとともに、男女ともに安心して育休取得をし、男女問わず育児ができる社会の実現に向けて何ができるのかを考察します。

目次

  1. 「男性の育休」とは?
  2. 「男性の育休」制度の内容とは?
  3. 男性の育休取得に向けた社内整備や理解が必要
  4. 「男性の育休」のメリットと懸念点
  5. 「男女を問わず育児ができる社会」の実現のために

「男性の育休」とは?

少子高齢化が進む中で、育児や介護をする人が、仕事と家庭を両立できるよう支援する法律が「育児・介護休業法」です。そこに、昨年「男性の育休取得に関する項目」が追加され、2022年4月1日から段階的に施行されることが決定しました。

そもそも、日本における男性の育休取得の割合をご存知でしょうか。厚生労働省の調査によると、2020年度における民間企業での男性の育休取得率はわずか12.65%とのこと。前年の7.48%から2倍近くも上昇してはいるものの、政府の掲げる「2020年までに13%」という目標には届きませんでした【図1】。政府は新たに「2025年までに男性の育休取得率30%」を目標に掲げています。
【図1: 育児休業取得率の推移】

出典:「育児・介護休業法の改正について」(厚生労働省)

「男性の育休」制度の内容とは?

この法改正が閣議決定される前後から、各メディアでは「男性育休が義務化!?」と話題になりました。しかし、男性の育休取得が義務化されるわけでは決してありません。では、「2025年までに男性育休取得率30%」という政府の掲げた目標実現を加速させるための「男性の育休制度」の具体的な内容はどのようなものなのでしょうか。現行制度との違いから見ていきましょう。

◆申請期限が短くなった
(現行制度)原則1か月前まで→(新制度)原則2週間前まで

◆取得条件が撤廃された
(現行制度)1年以上の勤務という条件付き→(新制度)パート/契約社員/非正規労働者も対象

◆休業中の就労も可能になった
(現行制度)原則不可→勤務先と事前調整の上、一時的/臨時的に就労可能

分割取得ができるようになった
(現行制度)原則不可→(新制度)出生後8週間以内に最大4週間を2回に分けて取得可能

特に私が注目したのは、「分割取得が可能になった」という点です。現在の育休制度では、分割取得は原則できないのに対し、新たな育休制度では、2回まで分割して取得できるようになります。この分割取得は、男性の育休でも適用されるため、夫婦で育休制度を併用すれば、男性は子どもが1歳になるまでに計4回の育休取得も可能になります。

出典:厚生労働省 パンフレットPDF「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

男性の育休取得に向けた社内整備や理解が必要

上述の通り、民間企業での男性育休取得率はまだまだ少ないというのが実状です。その理由は、「会社で育児休業制度が整備されていなかったから」が23.4%、「収入を減らしたくなかったから」が22.6%、「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから」が21.8%という結果になっています【図2】。男性が育休取得する上での社内整備や、それに対する認知・理解が追いついていないことがわかります。

【図2 「男性・正社員」のうち、末子の育児のために休暇・休業制度も利用しなかった理由

注)文中および図表内の就業形態は末子妊娠判明当時のもの。
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(平成30年度))

もし仮に、男性が育休を取得したとしても、たったの数日間である例がほとんどのようです。働く女性が増えたにも関わらず、女性の家庭での負担はまだまだ重く、出産を機に退職する女性もまだ大勢いるのが現実です。同じ女性として、この古い体質には危機感を抱いています。

「男性の育休」のメリットと懸念点

では、男性が育休を取得することのメリットには、どのようなことがあるのでしょうか。働く側/企業側それぞれの立場から、そのメリットと懸念点について考えていきます。

【働く側】

◆メリット
・夫婦が協力して、家事・育児を行うことができる
・夫婦で、家庭内のノウハウが溜まる
・給付金を取得できる

◆懸念点
・職場復帰できるのかという不安感を持つ
・不当な評価をされないかという不安が生じる
・収入の減少(育休・産休中は、給与の67%)

一定期間、夫婦で子育てに専念することで、育児だけではなく家事に対する大変さ、またそのノウハウを夫婦で共有できます。そこから、子育てに関わる姿勢や気づきが得られるでしょう。

一方で、職場での理解が促進されていなければ、復帰への心配を抱いてしまうこともあるでしょう。また、育休取得に伴う解雇や、不利益な扱いは当然禁止されていますが、それでも職場復帰をした際に、人事考課等で不利益な評価(いわゆるパタニティーハラスメント)を受けるのではないかという不安を抱く人もいるかもしれません。そうならないために、普段から上司や同じチームのメンバーと育休に対してのディスカッションをしたり、コミュニケーションを図ることで自分の意思を伝えたり、休業取得中の体制作りを整えておくことが必要です。

【企業側】

◆メリット
・働き手に優しい会社であるブランディングが醸成できる
・優秀な人を採用しやすくなる
・メンバーの状態が把握しやすくなる

◆懸念点
・社内の人への負担が増える
・組織体制構築が必要になる
・制度導入・変更へのパワー問題が生じる
・復帰後の支援が増加する
・男性育休への理解促進の雰囲気醸成が必要になる

企業においては、いち早く男性の育休制度を導入し、その理解が組織に促進されることで、従業員エンゲージメント向上につながることが考えられます。また、対外に対しても、働きやすい企業であることのアピールにもなるため、良い人材を確保する上でも効果的なのではないでしょうか。

反対に、過去に育休を取得できなかった先輩従業員の不公平感が生まれるかもしれません。また、引き継ぎがうまくいかなかった場合など、仕事の負担が増えることによる労働環境の悪化や、不満感が出てくることも懸念されます。

私のTwitterでこの男性育休について発信をしたところ、「中小企業で人がいなくて育休出来ない、ってのは結構深刻な問題なんですよね…ただでさえ人手不足なのに」という声をいただきました。特に中小企業では産休・育休取得者の代替としての人材確保なども難しく、助成金活用などの対策は必須であると感じます。

「男女を問わず育児ができる社会」の実現のために

ユニセフの報告書「先進国の子育て支援の現状」によると、有償の育休期間を世界と比較した場合、実は日本の男性向け育休制度の手厚さは、世界一位(満額換算で30週間に相当)の評価を受けています。しかし、実際の男性育休取得率は、諸外国と比べて低水準にとどまっているのが現状です。男性の育休取得にどうつなげていくのかは、国や企業、働き手の今後の課題であると言えます。

ただし、一概に「男性の育休促進」だけを推進していくのではなく、「男女ともに安心して育休を取得し、男女問わず育児ができる社会」を目指すことが重要なのではないかと私は考えています。

近年では、「マタニティハラスメント」や「時短ハラスメント」など、育休取得に対するハラスメントも社会問題となっています。今回の改正では、妊娠・出産の申し出やそれにかかる育休取得の申し出、育休取得男性の不利益な取り扱いが禁止されるだけでなく、企業に対して、上司や同僚からのハラスメントを防止する措置も義務づけられています。育休取得には組織の協力が欠かせません。「該当する当事者だけが知っておけばいい」という意識ではなく、社内研修などを通してしっかり周知し、人事や管理者を中心に全社的な理解促進に努めることが大切です。

この改正を機に、企業のみならず、社会全体での理解がもっと深まることを期待します。それでこそ、男女問わず育児ができる社会に繋がるのだと思います。

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