「70歳定年」時代に上司は「シニア社員」のキャリアをどう活かせるか

第4回 シニア社員の意欲向上を実現した企業事例

前回のコラムでは、シニア社員の意欲を高める関わりについて、ご説明いたしました。
連載最終回となる今回は、実際にシニア社員の意欲向上を実現した企業事例を紹介していきます。

前回コラム:第3回 シニア社員の意欲を高める関わりとは

目次

  1. シニア社員の意欲低下問題に悩まれていたA社様
  2. 3つの打ち手
    打ち手1:マネジメントコミュニケーションの再設計
    打ち手2:マネジメントコミュニケーションの質向上
    打ち手3:効果検証
  3. 成果
  4. まとめ

シニア社員の意欲低下問題に悩まれていたA社様

A社は、従業員規模1,000名程度の専門商社です。全社員に占めるシニア社員(55〜70歳で、管理職ではないビジネスパーソンと、管理職ですが部下がいないビジネスパーソン)の比率は約30%に上り、社長は「シニア社員の活躍促進は、事業上の優先度が高いテーマ」だと捉えていらっしゃいました。そこで、現場の実態を捉えるためにA社のシニア社員の方10名以上にインタビューすると、「周囲からの相談が減っていくことで、自身が培ってきた経験に自信がなくなり、自分なりのナレッジを積極的に伝えることに引け目を感じるようになった」や、「組織にとって、邪魔にならないように気を遣いながら仕事をしている」という声を多く耳にしました。まさに「意欲低下が起こるBadサイクル」に陥っていたのです。

3つの打ち手

シニア社員の意欲低下が起こるBadサイクルに陥っていることをA社の人事部長にご認識いただき、変革するために3つの打ち手を2年かけて実施いたしました。

1:マネジメントコミュニケーションの再設計
2:マネジメントコミュニケーションの質向上
3:効果検証


ここからは、3つの打ち手を詳細に解説いたします。

打ち手1:マネジメントコミュニケーションの再設計

コラム「第3回 シニア社員の意欲を高める関わりとは」で、シニア社員の意欲を高める関わり方のポイントについて、下記の通りお伝えいたしました。
この関わり方を日常のマネジメントコミュニケーションに取り入れることが打ち手の一つ目になります。

A社の今までのマネジメントコミュニケーションを見ていきましょう。A社は、半年間のスパンで目標設定と評価をするのですが、シニア社員とその上司が1対1で対話をする場は、期初の目標設定面談と期末の評価面談しかありませんでした。加えて、各面談は形式的なものになっており、機能しておりません。更に、毎月、各課毎(10名程度)の組織会議があるのですが、その組織会議も上司が一方的に話す場になっておりました。

まずは、ここから変革が必要だと考え、シニア社員の意欲を高める関わり方を取り入れて、マネジメントコミュニケーションを再設計していきました。
異動配置等で、初めて同じ組織になるシニア社員とその上司には、目標設定面談をする前に「個人面談」という場を設定していただき、相互理解を図って頂きます。
目標設定も昨期の踏襲ではなく、「この半年、組織にどのような貢献をしたいか」といった、貢献領域の明確化をした上で、その内容を目標設定に取り入れるようにしました。
更に、1on1という「上司と部下が、毎月行う1対1の対話の場」を導入し、シニア社員の上司から、シニア社員に対して認知・要望をして頂きます。勿論、評価面談でも、期初に設定した貢献領域に照らして、上司から、認知・要望するようにいたしました。
毎月実施していた組織会議については、頻度はそのままで、内容の変更に踏み切ります。組織会議の3回に1回は、上司以外の組織員(シニア社員を含む)が、「ナレッジを共有する場」にしました。この場の目的は、ナレッジ共有による組織学習は勿論のこと、シニア社員に貢献実感を得ていただくことを狙っておりました。
以下が、変革のイメージ図です。

打ち手2:マネジメントコミュニケーションの質向上

マネジメントコミュニケーションの再設計はしたものの、シニア社員の上司としては、相互理解の仕方や、認知・要望の仕方は分かりません。そのため、マネジメントコミュニケーション毎に質向上を図ることが次の打ち手になります。具体的には以下の通りです。

個人面談
相互理解をしやすくするために、シニア社員とその上司に対して、今までの社会人経験をもとに自身の動機の源泉を共有する充実度曲線というツールを学ぶ機会を提供

目標設定面談:
貢献領域の明確化をし、その内容を目標設定に取り入るために、シニア社員の上司に対して、目標設定面談の概要・シナリオ・ポイントを学ぶ機会を提供

1on1・評価面談:
認知・要望を適切に行うために、シニア社員の上司に対して、1on1と評価面談のスタンス・スキルを学ぶ機会の提供

組織会議:
ナレッジ共有するために、シニア社員の上司に対して、ナレッジ会議の進め方・ポイントをレクチャしー、フォーマットの展開

打ち手3:効果検証

マネジメントコミュニケーションの再設計・質向上を実施しても、シニア社員に変化が見られないと意味がありません。A社では、シニア社員の変化を捉えるために本人とその上司向けにアンケートとインタビューを実施して、定量面・定性面から効果検証を実施。そこから、課題が見つかる度に、マネジメントコミュニケーションについて再検討・改善していきました。

成果

定量面として、シニア社員の上司向けのアンケート結果をお伝えします。「シニア社員が、新たなチャレンジをしていると感じますか?」という質問に対して、「とても感じる」「やや感じる」の合計値が30%から、2年で65%に変化しました。
定性面としては、下記の声を聞くに至りました。
シニア社員「意欲低下の理由は、処遇ではなく、自身がどんな貢献をしてよいか分からないこと」「仕事したら、報酬よりも役に立っている実感が欲しい。それを、上司が理解して関わってくれている」
上司の声「シニア社員の貢献したいことを踏まえて、仕事をお願いすると、意欲高くどんどん仕事を進めてくれる」
このような声から、シニア社員の意欲向上のサイクルが回っていることが伺えます。

まとめ

本コラムでは、4回にわたり、「70歳定年」時代に上司は「シニア社員」のキャリアをどう活かせるかをテーマに連載してまいりました。

シニア社員の意欲低下問題について、多くの企業は、シニア社員の意欲低下だけに焦点を当てますが、疎外感・自信喪失・周囲からの期待低下・意欲低下というBadサイクルの構造になっていることが原因になっているケースが多いのです。


この構造を理解したうえで、シニア社員との関わり方のポイントを掴み、それをもとにマネジメントコミュニケーションを変えることが出来れば、シニア社員が意欲高く仕事に取り組む可能性が高くなるのです。労働力人口総数に占める、シニア社員の割合が、上昇する日本社会において、一人でも多くのシニア社員がいきいきと活躍し、組織に良い影響を与えることを願ってやみません。【連載おわり】

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