新入社員の命綱?

オンボーディングで構築したい4つの人間関係とは?

「オンボーディング」とは、新入社員のモチベーション維持を助け、組織の一員として溶け込ませ、早期定着・即戦力化を図ることです。​前回の記事では、オンボーディングの3つのプロセスと、組織理解(組織とのつながり)に関する施策を紹介しました。今回最後となる本記事では、人間関係の構築(人とのつながり)と、成功体験(成果とのつながり)について、深掘りしていきます。

第1回:入社後半年は、試用期間? それとも投資期間? なぜ今、オンボーディングが必要なのか?
第2回:新入社員の早期定着には「3つのつながり」が必要? オンボーディングのプロセスとは?

目次

  1. オンボーディングの3つのプロセス(前回のおさらい)
  2. 【プロセス2】人とのつながり
    新入社員を支える4つの関係
    施策【1】入社前からできること
    施策【2】入社時~入社後にできること
  3. 【プロセス3】成果とのつながり
    施策【1】育成プロセスを設計する
    施策【2】相互学習や能力開発の機会提供
    施策【3】部署横断的なミッションの設定
  4. まとめ

オンボーディングで必要な3つのつながりとは?(前回のおさらい)

オンボーディングの施策は、各社によって様々であり、各組織のカルチャー、サイズ、業界にあわせてカスタマイズしていくことが重要です。しかし、オンボーディングプロセスを設計する上で、1.組織理解(組織とのつながり)、2.人間関係の構築(人とのつながり)、3.成功体験(成果とのつながり)といった、3つのつながりを構築していく視点がポイントです。

<図:オンボーディングの3つのプロセス>

  1. 組織とのつながり:組織の目的、所属する部署や担当業務を理解し、組織における自分の役割やミッションを理解するプロセス
  2. 人とのつながり:社内のオフィシャル・インフォーマルな人間関係を構築していくプロセス
  3. 成果とのつながり:組織からの課題やチャレンジに応え、自分の能力を発揮し、ミニ成功体験を通じて自信を高めるプロセス

これら3つのプロセスを意識しながら、新入社員の心理的変容のタイミングにあわせて、自社ならではの施策を考え、実行し、社内に浸透させる(仕組み化する)ことが大切です。

今回は、【プロセス2】人間関係の構築(人とのつながり)と、【プロセス3】成功体験(成果とのつながり)の概要と具体的な施策について詳しくみていきます。

【プロセス2】人とのつながり

オンボーディングにおいて、最も大切なのが、新入社員が人間関係を構築し、自分のサポートネットワークをつくることができるようサポートすることです。このプロセスでは、新入社員を支える4つの人間関係を意識することがポイントです。

新入社員を支える4つの関係

オンボーディング期の新入社員を支える人たちには、大きく4つのタイプがあります。

 

  • 同期:同時期に入った同僚。お互いに助け合い、切磋琢磨しあう関係です
  • サポーター:1-2年先に入社した先輩。業務以外の相談や、組織での生き残り方(やり方)など、暗黙知を教えてくれる、組織の翻訳者・橋渡しのような存在です。
  • マネージャー:直属の上司・リーダー。評価への影響があり、主に業務や職種に関するアドバイス・サポート、スキルアップ支援をしてくれる存在です。
  • メンター:利害関係のない上司・またはメンター。日々の業務というよりも、社員の中長期的なキャリア成長を視野にいれたアドバイスやコーチングを提供してくれる存在。外部のメンターが、この役割を担う場合もあります。

このように、ヨコ・ナナメ・タテの関係が構築できると、新入社員は様々な視点を得られ、組織にとけこみ成長していくことができます。

また、社内には、大きく分けて2つの人間関係があります。オフィシャルな関係(例:上司、チームメンバーなど)と、インフォーマルな関係(例:気の合う同僚、ランチする同僚、趣味が同じ、社内部活など)です。新入社員がこのようなオフィシャルな関係と、インフォ―マルな関係の双方を意識することも大切です。

では、この人との関係構築はいつから始めるのが良いのでしょうか?人とのつながりのプロセスは、入社前から始めることができます。

施策【1】入社前からできること

  • 社員の自己紹介:Slackなどを使っている企業では、内定者も入れるSlackチャネルを整備し、社員と内定者の自己紹介を促すこともできます。社内のイントラの一部を内定者も閲覧できるようにし、入社前から社員の自己紹介プロフィールを閲覧できるようにするのも一案です。
  • サポーターやメンターとのマッチング:新入社員の日常的な相談に乗ることのできるサポーターやメンターを入社前に紹介し、オンラインなどでコミュニケーションする機会を設けることもできるでしょう。入社前から「誰に相談できるか」がわかることで、入社前の不安を低減することができます。

施策【2】入社時~入社後にできること

  • 入社日イベント(ランチ・お祝いなど):入社日を「忘れられない日」にするために、例えばプレゼントを渡す、花や風船を座席に飾る、ウェルカムランチをするなど、自社なりのイベントを考えてみましょう。
  • ランチセットアップ:バディーのような世話係が、社内の各チームとのカジュアルランチの日時を設定するのを助けたり、または、チームが次のチームを紹介するテレフォンショッキングのようなゲーム感覚で知り合う機会を設定していくのもいいでしょう
  • サポーター制度:直属のチームや上司の他に、ちょっとした困りごとを相談できるようなサポーターをマッチングする制度があると、組織文化や組織のやり方によりスムーズに溶け込むことができるでしょう。サポーターは、組織の橋渡しであり翻訳者のような存在です。

【プロセス3】成果とのつながり

入社後30日を過ぎたころに、「貢献できた」というミニ成功体験をつくることが、モチベーションの維持・向上に効果的といわれています。この「成果とのつながり」のプロセスでは、組織からの課題やチャレンジに応え、自分の能力・スキルを発揮し、向上していることを「実感」してくことが狙いとなります。

もちろん、まだ入社間もないため、大きな成功体験は難しいかもしれません。しかし、正しい方向性にむかって、自分が「成長している・前に進んでいる」という実感を醸成させることがポイントです。新入社員の育成プランをもとに、小さな成功のマイルストーンを超えられるよう、意図的にそのプロセスを組み込んでいきましょう。

では、どんな施策ができるでしょうか?

施策【1】育成プロセスを設計する

【施策①】育成プロセスを設計する
プチ成功体験は、中長期的な育成計画の中で設計されることが重要です。まずは、配属先の管理職・教育担当者に働きかけ、担当業務別の育成計画を策定してみましょう。また自分の成長を確認し、「認知」する時間を意図的にとりましょう。

◇担当業務別の育成計画の策定
◇業務に関連する資格取得のサポートやOff-JTの機会提供
◇キャリアビジョンの確認、研修・コーチング
◇スキル面でのメンター制度(業務面でのスキル育成に特化したメンター)

施策【2】相互学習や能力開発の機会提供

グループで学習しあうカルチャーをつくることも、成果創出にむけて有益です。
◇担当業務のスキルアップや能力開発に関する読書会(例:ブッククラブ)
◇ピアラーニング・新入社員同士のグループ学習

施策【3】部署横断的なミッションの設定

オンボーディング期間に新入社員が取り組む、自社ならではの「オンボーディングプロジェクト」を設計することも一案です。「うちの会社では、必ず新入社員がこのプロジェクトに取り組む」といった、自社ならではのマイルストーン・プロジェクトを設計することも一案です。

例えば・・
◇自分のオンボーディング体験について、ブログやnoteの記事を書いてもらう
◇1年目の社員旅行や年末の忘年会は、新入社員が企画する、など

ミッションを達成した後は、チームでランチ・お祝いをする、プレゼントを贈るなど、イベントのように演出し、マイルストーンを祝うムードづくりも重要です。

まとめ

今回は、3回にわたってオンボーディングの概念やプロセス、導入に向けた施策などについて紹介してきました。オンボーディングの施策ややり方にひとつの正解はなく、会社のカルチャーや、業種・業界、サイズや企業の成長ステージを加味した上で、自社オリジナルの施策を検討していくことが大切です。

まずは、自社が「なぜ、今、オンボーディングに取り組むのか」。その目的を考えてみることから始めてはいかがでしょうか?また、オンボーディングという言葉を使わなくても、どの企業もオンボーディングに関連しそうな取り組みをすでにされているのではないでしょうか?まずは、自社のすでにやっている取組を棚卸ししてみることもお勧めです。

その上で、オンボーディングを通じて、新入社員にどのような状態になってほしいのか?入社1年後の姿から逆算してゴールを設定してみましょう。また、オンボーディングに関わるメンバーや役割は何なのか?各時期にどのような取り組みを行っていくのか?必要な外部サポートはあるのか?などを、社内でディスカッションしながら設計していきましょう。

組織も人材から「選ばれる」立場になってきている時代です。だからこそ、「試用期間」として認識されてきた期間を、今後は戦略的な「投資期間」として活用し、双方の歩み寄りを通じて、情緒的なつながりや貢献意欲(エンゲージメント)を高める努力が、今、企業には求められているのではないでしょうか?

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