入社後半年は、試用期間? それとも投資期間?

なぜ今、オンボーディングが必要なのか?

コロナ禍による働き方の変化の影響で、新たに入社した社員の早期離職、内定者の内定辞退などの人事課題が浮かび上がっています。
こうした企業の課題の解決に力を入れているが、新入社員の早期定着・即戦力化を支援する研修プログラム「オンボーディングカフェ」を提供している、株式会社アイムインです。独自のサービスを通じて多様な人財が響きあう組織づくりを後押しする同社の代表・田中瑠津子氏が、いま求められている「オンボーディング」について、ノウハウ・ナレッジを披露します。

目次

  1. はじめに
  2. オンボーディングとは?
  3. オンボーディングとオリエンテーションの違いとは?
  4. なぜ、オンボーディングが必要なのか?3つの理由
    【理由1】定着率・パフォーマンスの向上のため
    【理由2】企業の内側が「見える化」される時代だから
    【理由3】組織と社員の「歩み寄り」が求められる時代だから
  5. まとめ

はじめに

「せっかく採用した新人が、すぐに辞めてしまう」、「コロナ禍で入社した社員にフォローができず、メンタル面や即戦力化に課題を感じている」・・・こんな悩みを感じている人事担当者の方々も多いのではないでしょうか?

新規大卒就職者のうち3割が、就職後3年以内に離職するといわれる時代が続いていますが、昨年からコロナ禍におけるオンライン採用の加速化などを受け、内定辞退者の増加に課題を抱える企業も増加しています。そんな中、新入社員・中途入社者の早期定着・即戦力化や、内定辞退防止にむけた施策として、「オンボーディング」の取組みに対する注目が高まっています。

今回は、この「オンボーディング」について、3回シリーズで、オンボーディングの概念やプロセス、導入に向けた施策などをご紹介していきます。

オンボーディングとは?

オンボーディングとは、内定者や採用した新入社員が重要なパフォーマンスを発揮できるように、早期定着・即戦力化を行うための一連の施策を指します。GoogleやMeta(旧Facebook)などのグローバルIT企業では、早くからこの「オンボーディング」を導入し、新入社員の早期定着・生産性の向上につなげているとされ、日本でもIT企業を中心に取り組む企業が増えているようです。

オンボーディング期間は、「入社時」ではなく「内定後」から始まるのが特徴的です。期間は、主に90日、長くて半年から1年くらいといわれ、新入社員の場合は半年程度、中途社員は90日程度をオンボーディング期間として設定することが多いようです。

オンボーディングを実施している企業では、これまで「試用期間」としてみなされている期間を、「オンボーディング期間」として捉え、新入社員や内定者の早期定着・即戦力化にむけ「先行投資をしている」といえるかもしれません。

オンボーディングとオリエンテーションの違いとは?

「うちの会社では、入社時に人事が社内規定の説明やITの使い方などを説明しているので、それでいいのでは?」と思われる方もいるかもしれません。確かに、そのような「オリエンテーション」は重要な取り組みです。

このようなオリエンテーションは、仕事をする上で必要な基本情報・ツール・制度について(どちらかというと)一方的に「教える」ことを目的とし、大抵の場合1-2回で終了するものです。対して、「オンボーディング」の主目的は、「社員の情緒的コミットメント(帰属意識)を高める」ための中長期的なプロセスです。

オリエンテーションは、オンボーディング施策の重要な要素ではありますが、オンボーディングはより社員の感情的変容にフォーカスした中長期感の取り組み(プロセス)といえるでしょう。

なぜ、オンボーディングが必要なのか?3つの理由

ではなぜ、今オンボーディングを取り入れることが必要なのでしょうか?今回は、社会の変化や、デジタル世代の求職行動の特徴なども加味しながら、3つの理由を考えてみたいと思います。

【理由1】定着率・パフォーマンスの向上のため

比較的新しい概念である「オンボーディング」がもたらす従業員の定着率・パフォーマンス向上・離職率への影響に関するエビデンスに基づく調査はまだ少ないのが現状です。

最近の国内調査(*1)では、オンボーディングの施策に力をいれている企業ほど、「定着率・パフォーマンス」が高いという結果が報告されています。特に、オンボーディング施策の中でも、人事との定期的な面談、メンターや相談役などの支援制度といったきめ細かい支援が、中途入社者の離職率の低下やパフォーマンス向上に影響を与えると報告されています。

また欧米では、「Onboarding Margin(オンボーディングマージン)」という、オンボーディングを導入することによる採用コスト抑制効果や早期定着による生産性の向上のパーセンテージなどを試算し、Fortune500企業の給与データなどをベースとし、経済効果を定量的に換算する取り組みもされているようです(※2)

*1:参考『中途入社者のオンボーディング』と『入社後活躍』 に関する調査・分析 ~甲南⼤学 尾形教授との共同研究~(エン・ジャパン)
※2:参考:『Successful Onboarding: A Strategy To Unlock Hidden Value Within Your Organization』(Mark Stein、Lilith Christiansen共著、McGraw-Hill社、2010年)
→Aamzon書籍情報:https://www.amazon.co.jp/Successful-Onboarding-Strategies-Unlock-Organization/dp/0071739378

【理由2】企業の内側が「見える化」される時代だから

終身雇用の就労モデルが崩れ始めた日本では、転職者の数が増え続け、転職はもはや当たり前の選択肢となりつつあります。また、スマホ等を通じてワンクリックで、転職先を探し、応募できる便利な時代となりました。

デジタル世代の転職活動では、ウェブでの情報収集が主流となりつつあります。スマホで転職活動を行うデジタル世代は、企業側が発信するウェブサイトなどの「公式な」情報だけでなく、従業員や応募者の「口コミ」情報も重視しています。口コミを通じて、自分と会社の相性やギャップを精査し、企業のカルチャーや職場環境、人間関係、成長機会などをチェックし、自分と合うかを総合的に判断しているといえます。

このように企業の内情が口コミやSNSでオープンになってしまう時代において、入社後にどのような扱いを受けたかも赤裸々に公開されていく可能性も多いにあります。もしオンボーディングの期間が社員にとって「大切にされた」という体験であれば、(たとえその社員が退職をしても)その経験はポジティブなものとして、そのような口コミに記載される可能性があるでしょう。オンボーディングを通じて、社員のポジティブな経験を意図的につくりだすという企業の努力が必要な時代となっているといえます。

【理由3】組織と社員の「歩み寄り」が求められる時代だから

これまでは、入社後の3か月間ないし6か月間は、「試用期間」として、主に会社が従業員のパフォーマンスを「見定める」期間として理解されてきました。しかし、これも転職時代においては、「企業と従業員の双方がお互いのフィット感を確かめる」期間として意味づけが変わってきています。

合わなければ「辞める」という選択肢をもつ従業員と企業との力関係は、以前より対等なものとして理解され、この期間にできる限り双方の期待値や価値観をすり合わせていく(歩み寄る)努力が必要とされているのではないでしょうか。

そのためにも、一方的な「オリエンテーション」だけでなく、数か月にわたり、双方向のコミュニケーションを大切にしながら、互いに歩み寄るオンボーディングのプロセスが重要性を増してきているといえます。

まとめ

オンボーディングという言葉を使っていなくても、おそらく殆どの企業において、人材の定着・即戦力化の取組を実施していることでしょう。コロナ禍において、新入社員のメンタル不調や、内定辞退、社内コミュニケーションの活性化などの課題が浮彫りとなった今、企業として新入社員とどう向き合うのか、入社後の数か月を「試用期間」とみるのか、「投資期間」としてみるのかが問われているのかもしれません。

また、オンボーディングを「きっかけ」として、組織全体のコミュニケーションを活性化し、人材の育成計画について見直し、また採用広報や採用ブランディングを向上させることにつながる可能性もあります。オンボーディングは、新入社員だけでなく、組織全体の活性化を促すとりくみとして捉えることもできるのではないでしょうか。

次回は、オンボーディング施策を検討する上で重要な3つのプロセス1.組織理解(組織とのつながり)、2.人間関係の構築(人とのつながり)、3.成功体験(成果とのつながり)について解説します。

>>>第2回 新入社員の早期定着には、「3つのつながり」が必要?オンボーディングのプロセスとは

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