第14回HR EXPO春(人事労務・教育・採用)|RX Japan株式会社第14回HR EXPO春(人事労務・教育・採用)|RX Japan株式会社

人事データ活用の実践

第3回 組織サーベイを活用して組織の機能を高める

従業員満足度調査やエンゲージメント・サーベイなど、組織の状態をとらえるための「組織サーベイ」を実施している会社は多いと思います。しかし、一歩踏み込んだ分析や現場へのフィードバックなどができておらず、せっかくのサーベイ結果が十分に使い切れていないケースもあります。そこで、第3回は、組織サーベイ活用のポイントをご紹介します。

参考:
第1回 自社でもできる、人事データ活用
第2回「人事データ活用の概要を把握する」

目次

  1. 組織サーベイとは
  2. 「分けて見る」ことで、さまざまな発見ができる
  3. 組織サーベイとヒアリングなど定性的な方法を組み合わせる
  4. 複数の項目への回答結果を組み合わせる
  5. サーベイ以外のデータも組み合わせる
  6. アクションを起こすこと、現場にフィードバックすることを欠かさない
  7. 編集部より書籍紹介

組織サーベイとは

組織サーベイとは、回答者である従業員の主観や心的状態から、組織の現状を把握することを目的に行われる、図表1のような調査です。

【図表1:組織サーベイのイメージ】

たとえば、「私は、現在の仕事に満足している」という項目に対する回答結果をもとに、「仕事に満足している人(あてはまる+ややあてはまるの選択者)の割合は、全社で80%」であったり、「仕事に対する満足度の全社平均値は3.8ポイント」のように、会社全体での満足度の状態を確認したりします。
(平均値を算出する場合には、「1:あてはまらない/2:ややあてはまらない/3:どちらともいえない/4:ややあてはまる/5:あてはまる」のようにスコア化します)

また、「私が所属する職場では、コミュニケーションが活発である」という項目に対する項目を、職場ごとに集計し、職場の活性度を把握したりします。
冒頭に示した従業員満足度調査やエンゲージメント・サーベイ、また職場活性度や経営理念の浸透度など、さまざまな組織の状態を把握するための組織サーベイが各社で行われています。
最近では、組織の状態より、個人のコンディションを把握することを目的に「パルス・サーベイ」の利用も増えています。単純化した形ではありますが、組織サーベイとパルス・サーベイの違いは、図表2のようにまとめることができます。

【図表2:従来型の組織サーベイとパルス・サーベイ】

出所:『人事データ活用の実践ハンドブック』(中央経済社,2021年,P105)

ちなみに、個人の特徴を捉えることが主目的で行われるパルス・サーベイでも、「仕事に対する満足度」など組織サーベイと同様のことが聞かれていることも多く、会社全体や職場などの単位でまとめてあつかうことで、組織の特徴を把握することもできます。

「分けて見る」ことで、さまざまな発見ができる

組織サーベイの結果は、会社全体の傾向だけでなく、部署や職種、また性別や年齢など、図表3のようにさまざまな属性別・セグメント別に「分けて見る」ことで、多くの発見ができます。

【図表3:組織サーベイ結果の一覧例​】

※対象人数を除く表中の数値は、各質問の選択肢に対する回答を「1:あてはまらない/2:ややあてはまらない/3:どちらともいえない/4:ややあてはまる/5:あてはまる」のように数値として扱い、平均値を求めたもののイメージ出所:人事実務vo1.1224掲載「人事データ活用実践講座 第5回 組織の『PDCA』のための組織サーベイ活用」(産労総合研究所,2021年)

たとえば、図表3からは「公正な評価について、営業職は3.6ポイントなのに対し、開発職は2.9ポイントと低い」という傾向が見られます。それによって、問題を抱えるセグメントを発見することができます。

さまざまな部門、職種、また年齢や性別、そしてそれらの組み合わせ。どこにどのような問題があるのかを把握することは、対話による聞き取りでは、時間の制約上難しいことも少なくありません。組織サーベイをセグメントごとに「分けて見る」ことで、さまざまな問題を効率的に発見することができます。

組織サーベイとヒアリングなど定性的な方法を組み合わせる

組織の状態について細かに把握しようとすると、組織サーベイの項目が膨大になりかねません。しかし、項目が多いと、回答者である従業員に負担がかかることになります。よって、「私は、自分自身への評価は公正だと感じる」というように、ある程度抽象的な項目を用いる代わりにさまざまなトピックについて情報収集を行う、あるいは「評価の公正性」など特定のトピックについて詳しく情報収集を行うなど、項目数を適正に収めるための設計の工夫が必要になります。

仮にある程度抽象的な項目を用いる場合は、問題のあるセグメントについて、追加でヒアリングなどを行うことが有効です。たとえば、図表3の例であれば、評価の公正さに対する評価が低い開発職の管理職、あるいは従業員にヒアリングなどを行えば、「短期で成果が出ないため、評価が中心化しがちであることに疑問を持っている」など、より具体的な問題の発見もできます。

複数の項目への回答結果を組み合わせる

組織サーベイの結果は、項目別の集計結果の高低だけではなく、関係性に目を向けることでも新たな発見ができます。

たとえば、組織サーベイの中で、「職務満足」と「仕事の特性」、それぞれに関する質問項目があった場合、相関係数などで両者の関係を確認することができます。分析例は図表4です。なお、数値は相関係数で、マイナス1~プラス1の間の値を取り、絶対値が1に近いほど、2つの変数の関係が強いことを意味します。プラスの場合は「一方が大きくなれば、他方も大きくなる」関係を示し、マイナスの場合は「一方が大きくなれば、他方が小さくなる」関係を示す数値です。

【図表4:相関分析の例

出所:人事実務vo1.1224掲載「人事データ活用実践講座 第5回 組織の『PDCA』のための組織サーベイ活用」(産労総合研究所,2021年)

図表4の例では、職務満足と仕事の特性との間の相関係数はいずれも0.3程度で、それぞれある程度プラスの関係にあると考えられます。厳密な因果の分析とはなりませんが、「何が満足度を高めるのか(あるいは、満足度は何を高めるのか)」についてのヒントを得ることができます。

サーベイ以外のデータも組み合わせる

組織サーベイ以外のデータを組み合わせることでも、新たな発見が得られます。

たとえば、図表5は、直近で品質不具合の問題があった職場と、なかった職場のサーベイ結果の平均値を比較したグラフです。

【図表5:品質不具合有無によるサーベイ結果の差】

この結果から、品質不具合に対する打ち手として、「マニュアルの明確さ」や「風通しのよさ」を担保することが有効ではないかというヒントが得られます。

データの結合に手間がかかることなどが理由となり、このような分析まで行われることはまだ少ないかもしれませんが、一つの有用なアプローチといえます。

アクションを起こすこと、現場にフィードバックすることを欠かさない

ここまで、主に人事部門が組織の状況を把握することを前提に、組織サーベイのデータ活用方法を紹介してきました。組織サーベイから分かったことについては、ぜひ従業員の皆さんに内容を公開するとともに、必要なアクションを起こすことを欠かさないようにしてください。

従業員の立場からすると、時間をかけて回答した組織サーベイの結果が公開されないことや、発見された問題に対して手が打たれないことは、不満の温床になりかねません。次に実施するサーベイへの協力も得られにくくなってしまいます。もし、現場に十分なフィードバックができていないと感じられるようでしたら、積極的にフィードバックを行うことをお勧めします。

また、このとき、部や課のサーベイ結果については、それぞれの部や課に結果を開示し、それぞれの組織の中で結果を読み取り、管理職の方、またメンバーの方が、自律的に職場の改善策を考えられるようにすることも、有効な施策となります。しかし、案外そのようなフィードバックがなされていないこともあります。
ぜひ、人事と現場、また、現場内での対話のツールとして、よりよく組織サーベイのデータ活用をしていただければ幸いです。

【組織サーベイ活用のポイントのまとめ】

  • 組織サーベイの結果は「分けて見る」ことで、さまざまな発見ができる。
  • 組織サーベイとヒアリングなど定性的な方法を組み合わせることで具体的な問題の発見につながる
  • 組織サーベイの結果は、項目別の集計結果の高低だけではなく、関係性に目を向けることでも新たな発見ができる。
  • 組織サーベイ以外のデータを組み合わせることでも、新たな発見が得られる。
  • 組織サーベイの結果は従業員に公開し、現場に積極的にフィードバックを行う。

以上、今回は組織サーベイ活用のヒントをお伝えしました。第4回からは、昇進・昇格場面でのデータ活用についてご紹介します。

>>>第4回 昇進・昇格選考を通じてより多くの活躍できる人を輩出する

編集部より書籍紹介

人事評価、業績、勤怠、適性検査、組織サーベイ、360°サーベイ、研修アンケート…
人事データを活用する考え方と実践方法を事例と合わせて初歩から解説

近年、ビジネスの世界では、テクノロジーやデータを活用することで、組織やビジネスのあり方を変容させるデジタル・トランスフォーメーション(DX)が注目を集めています。それは人事の世界でも同様で、HRテクノロジーやHRアナリティクスへの関心が高まっており、人事データ活用は以前と比べると確実に進みつつあります。

一方で、人事データを蓄積しはじめたものの十分に活用できない、またいくつかの分析を試みたものの、その結果がうまく活用できないというお悩みを耳にすることも少なくありません。

そこで、人事の実務の中で、「どのような課題を解決するために、どのようにデータを活用できるか。また何に留意すべきか」、その考え方や実践方法について解説する本書を執筆しました。リクルートマネジメントソリューションズは、適性検査「SPI3」や組織サーベイ、人事制度コンサルティングなどのサービスを企業に提供しており、60年近く企業のデータ活用を支援してきました。そのノウハウの一部を企業事例と合わせてご紹介します。

本書は、これから人事データ活用をスタートしようとされている方、また一度スタートしたもののなかなかうまく進めることができないと悩んでいる方におすすめできる一冊です。

【出版概要】
書名 :人事データ活用の実践ハンドブック
編著者:入江 崇介
ページ数:140ページ(A5判)
発売日:2021年4月26日
ISBN:978-4-502-38261-1
定価:2,420円(税込)
中央経済社:https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-38261-1
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4502382612/ref=sr_1__mk_ja_JP

【目次】
第1章 人事データ活用の概要を把握する
第2章 データを活用して採用のPDCAを回す
第3章 データを活用して研修効果を高める
第4章 昇進・昇格選考を通じてより多くの活躍できる人を輩出する
第5章 適合の観点でデータを活用して個人の活躍を支える
第6章 組織サーベイを活用して組織の機能を高める
第7章 人事データ活用における留意点

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