第14回HR EXPO春(人事労務・教育・採用)|RX Japan株式会社第14回HR EXPO春(人事労務・教育・採用)|RX Japan株式会社

「70歳定年」時代に上司は「シニア社員」のキャリアをどう活かせるか

第2回 シニア社員が意欲低下する原因とは

前回のコラムでは、シニア社員の定義と就業意欲、加えて、高年齢者雇用安定法の改正で求められる企業対応について、ご説明いたしました。
連載2回目となる今回は、シニア社員に対する人事制度・人事施策の見直しをしないことで生じる、「シニア社員の意欲低下」という問題について解説していきます。

前回コラム:第1回 さまざまな企業が直面しているシニア社員問題
※前回、この連載でシニア社員を「55〜70歳で、管理職ではないビジネスパーソンと、管理職ではあるものの部下がいないビジネスパーソン」と定義している理由も説明しています。

目次

  1. シニア社員に対する周囲の声
  2. シニア社員の意欲低下の原因
    【1】疎外感
    【2】自信喪失
    【3】意欲低下
    【4】周囲からの期待低下
  3. 次回に向けて

シニア社員に対する周囲の声

まずは、さまざまな企業の経営層や人事、管理職の方にインタビューした際におっしゃっていたお悩みをご紹介いたします。

  • 役職定年でポストオフになったシニア社員の方は、意欲が低く、上司として関わりに困る
  • シニア社員の方の意欲の低さについて、特に若手社員が不満を募らせており、少なからず組織全体に影響を及ぼしていると感じる
  • シニア社員の方が、意欲高く仕事に向き合うイメージが、持てない

シニア社員に対して、会社として何も支援策を講じないでいると、意欲低下という問題が生じ、組織に悪影響を及ぼすことが分かると思います。

では、シニア社員は、どのように感じているのでしょう。
弊社リクルートマネジメントソリューションズによる、役職を外れた経験(ポストオフ経験)のある50~64歳の会社員766人への調査※1で、ポストオフ後の仕事に対する意欲・やる気の推移を見ると、「下がったまま」と回答した人が部長ポストオフでは36.0%、課長ポストオフにおいては44.6%にまで上りました。一方で、「一度下がって上がった」と回答した人は、部長ポストオフでは20.4%、課長ポストでは14.4%にとどまりました。

※1出典:リクルートマネジメントソリューションズ「ポストオフ経験に関する意識調査」2021年

シニア社員の意欲低下の原因

では、この意欲低下という問題は、何が原因なのでしょうか。この原因は、報酬・処遇に対する不満もさることながら、「周囲との関わりが原因」で起きていることが、シニア社員のインタビューで分かってきました。インタビューをもとに、意欲低下の原因を構造化したものが、下記の図です。

▼シニア社員の意欲低下が起こるBadサイクル

【1】疎外感

若手・中堅社員とのジェネレーションギャップや、ポストオフで組織上の役割を外れることで、周囲との関係が希薄になり、疎外感を覚えることが起点になります。

ポストオフ前は、さまざまな方が自身に相談に来て、自分なりのアドバイスや判断をし、周囲から感謝されることで、効力感や組織と繋がっている感覚を得ていました。一転、ポストオフ以降は、相談を受けることが大幅に減り、周囲とのコミュニケーション量が少なくなっていきます。
不定期な相談以外にも、定期的な会議にも変化が起きます。とあるシニア社員は、「ポストオフになり、シニア社員として見られるようになってから、役職者の会議に招集されなくなった。会議に参加できないことで、自組織にとって大事なことが、自分抜きで決まる感覚がつらい」とおっしゃっていました。自組織にとって大事な判断をする場に呼ばれなくなることも、疎外感を強める一因だと言えるでしょう。

【2】自信喪失

周囲からの相談が減ることで、自身が培ってきた経験・考え方に自信がなくなる、もしくは、自身のナレッジやノウハウを積極的に伝えることに引け目を感じることが次に起こることです。

シニア社員の所属する組織が、新しい戦略や手法を取り入れる際に、「シニア社員である自身のやり方は通用しないかもしれない」と不安になり、「組織にとって、邪魔にならないように気を遣いながら仕事をしている」と、シニア社員の方は口々に語っていました。

【3】意欲低下

仕事に対する自信が喪失すると、仕事に取り組む姿勢が鈍くなります。新しいプロジェクトや役割を積極的に参加しようとする姿勢も薄れ、その意欲や言動に対して周囲からネガティブにみられてしまいます。そこから、「シニア社員の○○さんは、意欲高く仕事に向き合うイメージが、持てない」という評価を周囲から受けることになります。

【4】周囲からの期待低下

意欲低下により、シニア社員からの働き掛けがないため、上司含め周囲から、期待や要望をかけられなくなります。周囲から期待をされていないことは、周囲の言動や眼差しから、シニア社員自身も察するので、そこから更なる意欲低下につながります。
意欲低下と期待低下は、相互に因果関係があり、経験のあるシニア社員とは言え、このループを自力で抜け出すのは難しいと感じます。


多くの企業は、シニア社員の意欲低下だけに焦点を当ててしまいがちですが、疎外感~自信喪失~周囲からの期待低下~意欲低下という「Badサイクル」の構造になっているのです。

また、このサイクル図は、シニア社員だけではなく、若手社員にも当てはまると思います。
ただ、シニア社員の特徴として、自己を犠牲にしてでも積み重ねてきた会社への貢献や実績といった自負がある分、敬意の感じられない視線や言動に対して、より敏感になり、疎外感を強めるものだと考えます。これは、シニア社員の「年長者は、敬うもの」という、若い頃から大切にしてきた価値観も関係しているのかもしれません。

次回に向けて

次回以降は、シニア社員の意欲向上が起こるGoodサイクルと、そこに至るまでの周囲の関わりについて、実際の企業様の事例を交えて、ご紹介いたします。

>>>第3回 シニア社員の意欲を高める関わりとは

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