ミラキャリ通信 "ふるさと副業"イベントレポート

「ふるさと副業」への取り組みが拡大。食品・工芸メーカーと都市部人材を副業でマッチングして課題解決へ

リクルートが発行する、会社を越えて企業に参画できるサービス『サンカク』に特化した活動レポート『ミラキャリ通信』“ふるさと副業”イベントレポートの内容を転載して紹介するコラム(TOP画像も「『ミラキャリ通信』“ふるさと副業”イベントレポート」より)。
『ミラキャリ通信』は、『サンカク』が提供する社会人インターンシップやスポットディスカッションから見えるトレンドや副業の実態など、参加者の声と合わせて発信している。
参照『サンカク』:https://sankak.jp/

今回は、『サンカク』の事業責任者 古賀敏幹氏のインタビューと、「ふるさと副業」のイベントをレポートを紹介している。

目次

  1. 「ふるさと副業」—地方企業と首都圏人材の共創—
  2. [兼業・副業実施中+実施意向あり]の8割近くが「ふるさと副業」に興味があると回答
  3. 石川県主催 「食」の企業・3社の課題解決に取り組む
  4. 「日本の工芸」をテーマとした「ふるさと副業」イベントを開催

「ふるさと副業」—地方企業と首都圏人材の共創—

「自分の成長は鈍化しているのではないか?」
社会人になって何年もたつと、そんな不安が湧き上がることがあります。今の会社を辞めることなく、他社で新たな経験をすることで、成長の機会を得られたらいいのでは——そんな発想から生まれたのが、社会人のインターシップサービス『サンカク』です。

※『サンカク』サービス概要
大手企業からベンチャー企業まで、規模や業種にかかわらずさまざまな企業が事業課題に関するテーマを掲げ、それらに興味を持ったユーザーがディスカッションを重ねてアイデアや解決策を提示していくサービス。ディスカッション参加者は、参加後に企業から副業や転職のオファーが届く可能性もあります。

この『サンカク』のノウハウを生かし、2018年から取り組みを始めたのが「ふるさと副業」です。
コンセプトは、「地方企業と首都圏人材の共創」。首都圏(都市部)で働きながら本業では得られない挑戦機会を求めている人と、事業創造に必要な知見・スキル不足に悩む地方企業のマッチングを図ります。

『サンカク』事業の責任者である古賀 敏幹は「いつか故郷の和歌山に、何らかの形で貢献したい」という思いを抱き続けていました。あるとき、地方企業の人材ニーズの課題解決に『サンカク』の仕組みが活用できると考え、福岡からスタートしたのです。

「ふるさと副業」の取り組みでは、すでにオンラインマッチングイベントを複数回開催しており、実績も生まれています。
例えば、2020年には、石川県主催で「社会人インターンシップ交流会」を実施しました。参加企業の1社・創業111年の老舗和菓子店「株式会社 柚餅子総本家中浦屋」では、首都圏在住の副業者5名を迎え、デジタルマーケティングチームを編成。ECサイト上半期の売り上げを前年同期比3倍以上に拡大することに成功し、現在も継続しています。

[兼業・副業実施中+実施意向あり]の8割近くが「ふるさと副業」に興味があると回答

今回レポートするイベントでは、それぞれ100名以上のエントリーを頂きました。そのことからも多くの方が「ふるさと副業」に興味があることが分かりました。また、2020年末から2021年初頭にかけて行った「兼業・副業に関する動向調査2020」では「ふるさと副業」を「回答者⾃⾝の住まいとは異なる地域での 兼業・副業(テレワークを利⽤して現地に赴かない働き⽅も含みます)」 と捉えて、興味を確認したところ、[兼業・副業実施中+実施意向あり]の 76.6%が、「ふるさと副業」に興味があると回答しまた。加えて、[兼業・ 副業実施意向なし]の 34.4%は興味があるという結果でした。兼業・副業の実施意向がない⼈であっても、⼀定数はテレワークなどを活⽤した地⽅企業での兼業・副業に関⼼がある様⼦がうかがえます。

出典:「兼業・副業に関する動向調査2020」
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2021/0422_8329.html

「ふるさと副業」への興味 [兼業・副業実施中+実施意向あり]

■兼業・副業実施中の人、過去に兼業・副業の実施経験があり、今後実施意向(再開予定)がある人および過去に兼業・副業の実施経験がなく、今後実施意向がある(やってみたい)人(単一回答 n=1,090)

「ふるさと副業」への興味 [兼業・副業実施意向なし]

■過去に兼業・副業を実施した経験があるが、今後の再開意向がない人および兼業・副業の実施経験がなく、今後も実施意向がない人(単一回答 n=366)

石川県主催 「食」の企業・3社の課題解決に取り組む

石川県では第2回目イベントを2021年8月に実施しました。今回のテーマは「地方発のプロダクトのスケール戦略を考案せよ!」。参加したのは次の3社です。

●株式会社オハラ(石川県金沢市)
こんにゃくメーカーとして昭和34年に創業。食品の加工、製造販売・OEM 事業を手掛ける。規格外や世間の認知度が低い食材の商品化を目指し、これまでくずきりや五郎芋金時などの自社スイーツを開発・販売。
<求める人材>
季節ごとの自社新商品の具体的な販売戦略の企画と、それを実行できる人材。

●株式会社ヤマト醤油味噌(石川県金沢市)
明治44年創業。しょうゆやみそに代表される発酵食の製造・販売を行う。本社工場内では「日本型食生活=一汁一菜に一糀」のライフスタイルを体感できる「ヤマト糀パーク」を運営。
<求める人材>
BtoC事業を強化する方針の下、自社の取り組みや糀パーク・ Eショップを世に広く伝える認知拡大施策の企画と実行ができる人材。

●株式会社 金沢大地(石川県金沢市)
環境保全型農業を営むオーガニックファーム。農業の6次産業化に積極的に取り組み、自社農場・国産有機農産物を主原料とする加工食品の企画・製造・販売を行う。ワイン醸造所・地産地消フレンチレストランも運営。
<求める人材>
2021年2 月に発表した自社ブランド「Local Organic Japan」の成功・拡大に向け、販売戦略の企画ができる人材。

今回は114名の方からエントリーがあり、当日参加いただいたのは、20代から60代まで幅広い年代の48名。「新規事業企画」「新商品開発」「ブランド戦略」「エリアマーケティング」「プロモーション・PR」「Webマーケティング」「ECサイト企画・運用」などの経験を持つ皆さんです。

参加した動機として、「自身の経験・スキルが生かせる」のほか、次のような声が聞かれました。

「数年前まで石川県に住んでおり、企業のことは知っていた。全国区になるくらい有名になっていただけるようお手伝いができれば、と思った」
「金沢を訪れると必ずお店を訪問し、都度増える商品ラインナップや販売員の提案力に魅力を感じていた。ビジネスに可能性を感じ、機会があれば貢献したいと思っていた」
「母の実家が石川県。金沢で就職する道を探っている」
「自分は瀬戸内の出身で、地元に貢献したいという思いが湧いてきている。今後の指針になる活動に参加してみたいと思った」
「創業100年超の企業のブランディング施策立案は、そうそう経験できるものではない」

多様な業種のプロが、それぞれの視点でアイデアを出し合う

オンラインイベント当日は、企業ごとに設けられたルームで、各社のテーマに基づき個人ワークやグループディスカッションを行いました。

こんにゃくメーカーである株式会社オハラの課題は、「秋冬シーズン向けに開発した自社ブランド商品の売上拡大」。4チームに分かれて実施されたディスカッションでは、

「『ヘルシー』よりも『食感』を訴求してはどうか」
「濃厚な味付けを売りに、お酒とのセット販売を仕掛けては」
「○○メーカーとタイアップすれば、新たな販路を開拓できそう」
「アレンジレシピコンテストを開催し、一般消費者を巻き込む手もある」
「ユーチューバーやインスタグラマーにレシピ考案を含めたプロモーションを依頼する方法も」

——など、参加者たちは、自身の本業で経験してきた戦略や事例のエピソードも交えながら、アイデアを出し合いました。

グループディスカッション終了後は、各グループが集まり、自分たちが設定したターゲット顧客と提案内容を発表。4グループが設定したターゲット顧客層はすべて異なり、それぞれから異業種とのコラボレーションが提案されました。

オハラの須田 一喜社長からは、総評としてこんなコメントが伝えられました。

「当社を選び、考えてくださった皆さんに感謝します。非常にためになりました。商品開発の前にやっておけば、もっと良かったかもしれない(笑)。私たちが考えていたこととリンクする部分もあったことがうれしく、自信につながりました」

イベント終了後、参加者からは次のようなコメントが寄せられています。

「これまで接点がなかったいろいろな業種の方々と議論をすることができ、とても刺激になった」(※同意見多数)
「別業態の知識を得ることができた」
「皆さんのいろんな知見を組み合わせて一つの案を練り上げるのがとても楽しかった」
「さまざまな意見に触れられたことで、今後の自身の考え方に大きな影響を受けたと実感」
「改めて自分がどんな強みを持っているかを実感できた」

「日本の工芸」をテーマとした「ふるさと副業」イベントを開催

「ふるさと副業」では、「地方」だけでなく、特定の「産業」にもフォーカスした取り組みにも乗り出しています。その第一弾となるテーマが「日本の工芸を人材面からサポートする」。
日本の工芸品の産地出荷額は、ピーク時の1/6にまで減少し、危機にひんしています。そこで、奈良の老舗・株式会社 中川政七商店との協業により、「工芸メーカー」と「地方や工芸に副業で貢献したい人」とのマッチングを図る取り組みを2021年9月に開始しました。

●株式会社 中川政七商店(奈良県奈良市)
1716年に麻織物の卸問屋として創業。現在は工芸をベースにした生活雑貨のSPA事業、産地支援事業、ビジネスデザイン事業を展開。「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げ、全国800社の作り手と共にものづくりをし、約60店舗の直営店でのブランディングを中心に消費者に届けている。
2021年9月、オンラインイベント「ふるさと副業 日本の工芸を元気にするデジタルブランディング」を開催。
主催の中川政七商店をはじめ、同社のパートナー企業であるものづくりブランド5社が参加しました。

●漆琳堂(福井県)
200年にわたり継承してきている伝統工芸漆塗りを事業の中心に、越前漆器の製造・卸売を行う。もともと業務用漆器が主体であったが、自社ブランドを10年前に立ち上げた。

●かもしか道具店(三重県)
三重県菰野町に窯を持つ山口陶器のブランド「かもしか道具店」を展開。萬古焼の技術を生かした食卓に幸せを届ける道具を作る。

●TO&FRO(石川県)
石川県の繊維メーカーが作る、軽量・コンパクトという機能性の高さをコンセプトにしたトラベルギアブランド。

●虎仙窯(佐賀県)
「鍋島焼文化の確立」というビジョンを掲げ、自社ブランド「鍋島虎仙窯・KOSEN」を展開。

●THE(東京都)
「未来の定番を作る」というコンセプトの下、しょうゆ差しから電動自転車まで幅広い日用品の新たな「定番」を生み出す。
6社が目指すのは「デジタル手法を活用した工芸のブランディング・販売強化」。各社、取り組み状況や課題感はさまざまです。
そこで、デジタルマーケティングの知見を持つ方を募集。160名以上からご応募いただき、エントリーシートでの選考を経て36名の方にご参加いただきました。

参加者は1社を選び、事前にその企業のECサイトでオンライン購買を体験。改善提案の仮説を立てた上で、当日のディスカッションに臨みました。

マーケティングのプロたちが課題を分析し、改善策を提案

中川政七商店のワークには、グローバル展開する生活雑貨企業でのEC経験者、大手旅行会社でのプロモーション経験者、GAFAの1社に数えられる企業に在籍中のプランナー、美容商品のWeb広告担当者、SaaS企業のマーケティング担当者など、多様なバックグラウンドを持つ人材が集結。

最初に、同社ECサイトでのショッピングを体験した参加者から、デジタルマーケティングのプロとしての視点での感想・課題が伝えられました。一例を挙げると、

「初めて訪問した人にゴールデンゾーンを訴求できるといい」
「画像のクオリティーが高いが、ページによってはサイズを変えた方がいいと感じた」
「贈り物探しで良い体験ができた。ギフト商品をより推してもいいのでは」
「○○の操作性については改善の余地がある」

——など。

社内でも課題に感じていたことに対し、外からの視点・プロの知見が入ることで、改善へ向けた施策を改めて整理するそうです。

その後、6名の参加者が「集客(新規顧客開拓)」と「リピーターへの施策/ファンのロイヤル化」のテーマに分かれ、グループディスカッション。

「集客(新規顧客開拓)」のグループでは、ブランドに適したSNSマーケティングの手法や、訪問したユーザーを離脱させない方法などのアイデアが飛び交いました。
一方、「リピーターへの施策/ファンのロイヤル化」のグループでは、「ポイント付与・還元の仕組み」「顧客との商品開発」などについて、参加者が本業での経験・ノウハウを語り、議論が盛り上がりました。

その他5社の課題に取り組んだチームでも、「ブランドの認知向上」「ターゲット設定」「ECサイト内での購入動線」「UIの改修」「SNS広告の活用」など、それぞれのテーマでディスカッションが展開されました。

終了後、参加企業からの感想コメントは次の通り。

「Webのプロがどんな視点を持っているかを知れた。できているつもりでできていなかったことに気付けた」
「素晴らしい経歴の方々から第三者目線での指摘を受け、学びしかなかった。これを機にブラッシュアップを実行に移していきたい」
「独り善がり感が強く、お客様に伝わる伝え方をしていなかったことに気付けた」
「ふんわりと思っていたことも、どこからスタートすればいいのか見えてきた」
「ブランドを立ち上げたばかりの頃の初心に立ち返れた」

主催の中川政七商店・千石社長は「伸びしろしかない」と総括しました。

また、参加者の皆さんのアンケートでは「イベントの良かった点」として、次のような項目が挙げられました。

「こんな機会がなければ出会えない人と話ができた」
「オープンな会話ができた」
「参加者の方々の専門性が高く学びが多い」
「参加者のモチベーションが非常に高く、刺激を受けた」
「深い議論や具体的な施策まで進められた」
「好きなブランドなのでビジョンに触れられてよかった」
「経営者の熱い思いを聞けた」
「工芸品を広める仕事にいつか携わりたいという、将来の夢への一歩となった」

いずれのイベントでも、企業・参加者の双方が、「異なる視点を持つ人々とのディスカッション体験」に対し、大きな価値を感じていただいています。
今後も「ふるさと副業」の取り組みを、さまざまな地方・産業へ広げていきたいと考えています。

【ニュースレター:「ミラキャリ通信 "ふるさと副業"イベントレポート 兼業・副業経験者+実地意向のある人の8割が関心を持つ『ふるさと副業』への取り組み拡大中 地方自治体や工芸メーカーと都市部人材を副業でマッチング」より|2021年10月18日・株式会社リクルート】

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