パラレルワークをはじめるには? 個人と企業のメリット・デメリットをお伝えします

みなさんは「パラレルワーク」という言葉を聞いたことがありますか。
パラレルワークとは「同時並行で様々な仕事をすること」で、いわゆる副業・複業をすることを指します。最近ニュースでも「大手A企業が副業を解禁しました」などニュースになることがありますよね。

私が勤めるニットは世界33カ国、400人のメンバーがおり、働き方も多種多様です。農業を営んでいる者、本業で正社員をしているなどパラレルワークをしている者など大勢います。
そして私自身もニットで正社員として広報に務めながら、大学で非常勤講師をしているまさにパラレルワーカーです。
今回はニットのこれまでの経験などを交えて、パラレルワークとは何か、そしてはじめる際のメリット・デメリットを個人と企業目線でお伝えしたいと思います。

※こちらの記事は下記のnoteの記事「パラレルキャリア・副業の始め方」を@人事の読者様向けに一部編集させていただいております。
https://note.com/micakozawa/n/nc8d1349b9d32

目次

  1. パラレルワークが注目されるようになった背景
  2. 個人視点から考えるパラレルワークのメリット・デメリット
    メリット:①人脈が広がる
    メリット:②多様な物事の見方が養われる
    メリット:③リスクを少なくして転職できる
    デメリット:本業への支障
  3. 企業視点から考えるパラレルワークのメリット・デメリット
    デメリット:①優秀な人材の流出
    デメリット:②就業規則変更の必要性
    メリット:会社へのロイヤリティを持つ
  4. 編集部より関連記事紹介

パラレルワークが注目されるようになった背景

まず、私なりにパラレルワークが注目されるようになった背景を個人側と企業側のそれぞれ視点で考えてみました。

個人にとっては、一昔前まで50年と言われた企業寿命が短命化しており、今や25年以下だと言われています。大企業でも経営破綻するかもしれない時代です。終身雇用や年功序列などの実質的破綻によって、日本型雇用システムは機能しなくなり、自分の人生設計に対する責任が以前に比べて大きくなっています。その結果、定年まで同じ職場で働きたいと願っても、定年前に企業寿命が訪れてしまう可能性が高く、その時に路頭に迷うことのないように、個人としては、第二、第三の活動を始めておくことも重要になってきます。

一方で、企業にとっては「どのように生きるべきなのか」という人生における命題に向き合う人が増え、様々なライフステージに応じて柔軟に対応していく施策や制度が必要になってきています。副業や自分らしい生き方・働き方を尊重することで、少しでも、会社へのマインドシェアを持ってもらえるか、ということがとても重要です。副業NGの場合は、逆に会社を辞める引き金になり得てしまう、という怖さもはらんでいます。

では、そもそもパラレルワークとはどういう働き方なのでしょうか。意味は「同時並行で様々な仕事をすること」ですが、下記のように大きく3種類あると私は考えています。それぞれどれくらいの割合で仕事をするかで表現が異なります。

3種類のパラレルワーク

▼副業
本業がある上で、サブの仕事という意味。小遣い稼ぎで実施している人も多い。

▼複業
いくつかの業務に優先順位がない状態で取り組むこと。同じ時間の掛け方や割合で取組むことを指す。

▼兼業
いくつかの仕事と兼ねるという意味。兼業農家といった表現が以前からあるように、全く違う職種を同時並行する際に「兼業」を使う場合に使われます。

個人視点から考えるパラレルワークのメリット・デメリット

それでは、いざパラレルワークを考えるとなった際にどのようなメリットやデメリットがあるか整理していきましょう。
個人がパラレルワークを考える上でのメリットは大きく3つあると考えています。

メリット:①人脈が広がる

パラレルキャリアとして活動する過程で、本業では関わる機会のなかった様々な人々と出会うことができます。人脈は講習などで取得できる知識などと違い、「個」の時代に突入する上で、とても価値のある資産です。

メリット:②多様な物事の見方が養われる

同じ価値観をもった集団の中では物事に対する固定概念がつきやすくなってしまいます。しかし、副業によって様々な人と関わりを持つ中で、個性的な価値観を持つ人物や、大きな苦難を乗り越えた人物に出会える可能性が生まれます。これにより意識改革や視野の拡大へと繋がり、柔軟な発想力を養うことができます。これは本業においても効果を発揮し、企業側に大きな利益をもたらすことになり得ると思います。

メリット:③リスクを少なくして転職できる

これまでの転職は、A社100%→B社100%という転職のスタイルがほとんででしたが、A社80%→B社20%とB社の仕事を副業という形で試してみることで、「思っていた働き方や仕事とは違うな」と感じたら、B社への転職は辞めれば良いと判断できます。その場合、80%のA社の仕事があるので、金銭的に急に困ることはありません。自分のペースでしっかりと転職活動をすることができます。

デメリット:本業への支障

一方でデメリットもあります。
それは「本業に支障が出てしまう」ということです。

パラレルキャリアを実施することにより心身共に大きな負担がかかります。どうしても本業の時間外での仕事となるため、夜中や土日での作業が増えたりして、社員が体調管理やタスク管理を怠ってしまい、本業に対して支障が出てしまうこともあります。副業を行うことは自己管理能力やタイムマネジメントを身に付ける実践的方法として有力ですが、慣れるまでの間はトラブルの原因にもなりうることをしっかりと理解しておく必要があります。

企業視点から考えるパラレルワークのメリット・デメリット

では、企業がパラレルワークを解禁するデメリットはなんでしょうか。
あえて2つのデメリットからお伝えしたいと思います。

デメリット:①優秀な人材の流出

企業が副業解禁しない一番の理由だと思います。社員が、多くの出会いと発見から刺激を受けることによって、社員の成長を期待することのできる副業という道ですが、本業外の活動が軌道に乗ることによって、自社を退職して本格的に活動することを検討し始める社員が出てくることも予測されます。

デメリット:②就業規則変更の必要性

これまで副業を認めていなかった企業が、この解禁を導入するにあたって、様々なトラブルを避けるためにも、就業規則において正しく線引きを行う必要があります。

例えば、
・同業他社での副業NG
・週当たり上限●時間 等

参考:「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定しました(厚生労働省)

企業外活動という特性から企業内での育成コストが発生しない副業ですが、就業規則の変更や周知の徹底がなかなかスムーズにいかない場合もあります。

これらのことを考えねばならないのは【人事】の皆様です。副業解禁にするメリットは理解できるものの、その制度設計は骨が折れるし、副業解禁後の人材流出の恐怖感にも苛まれるし、ということは非常に共感します。

メリット:会社へのロイヤリティを持つ

しかし、副業解禁にはそれ以上の企業メリットがあります。それは「社員の自分らしい生き方・働き方の選択を応援することにより、結果的に会社へのロイヤリティを持つことになる」ということです。

副業NG、トップダウン、細かいマニュアル、監視体制…など、会社がルールを設ければ設けるほど、社員の当事者意識は醸成されず、指示待ち人間になり、視野は狭くなっていきます。自由度の高い会社も増えている中で、そういう組織の在り方では、事業存続も難しくなっていくようにすら感じます。

もちろん、ある一定の規律やルールは事業運営上、必要です。しかし、根底に一人ひとりの生き方・働き方を尊重した多様性のもとに、ある程度の自由さがあることで、自立的に成果を出してもらえる組織こそ、強いと言えるのではないでしょうか。

社員が副業を通じて、人脈が広がったことによって、新たな顧客を創出してくれるかもしれない。また、多様な物事の見方が養われることで、柔軟な発想力が身に付き、本業においても効果を発揮し、企業においても、イノベーションが生まれるかもしれない。

そういった可能性に賭けてみる、ということが必要なのではないかと考えています。
今回の記事で少しでも皆さんが副業・複業・兼業などのパラレルワークに前向きになっていただけたらと思います。
読んでいただき、ありがとうございました!【おわり】

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特集:「副業」新時代-企業の向き合い方

人事担当者や経営者向けに、副業導入が企業に与える影響やメリット、リスク。諸外国の副業と日本の労働市場における副業の立ち位置、実際に導入する際には就業規則や社内ルールの制度構築や法律違反リスクや懸念点にどう対処すればよいのかなどをまとめた特集を企画した。社会保険労務士・松井勇策氏、弁護士の佐々木尊子氏の協力のもと、企業が「どう副業と向き合うか」について解説する。

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