個と組織を生かす リモートマネジメントの教科書

第1回「リモートワークのもたらす変化とチャンス」

「人と組織」をテーマに、マネジメントが直面するさまざまな課題の解決にあたるリクルートマネジメントソリューションズの協力のもと、「リモートワーク」および「リモート時代のメンバーマネジメント」をメーンテーマに、シニアコンサルタント/主任研究員の武藤久美子氏が5回にわたりコラムで解説します。

第1回目のテーマは、「リモートワークのもたらす変化とチャンス」です。リモートワークがあるからリモートマネジメントが生まれました。よって、リモートワークが個人や組織に何をもたらすのかを改めて知ることは、リモートマネジメントのあり方を考えるうえで重要です。

目次

  1. リモートワークがもたらす変化
    変化①「ワークライフバランスからワークインライフへの移行」
    変化②「組織や個人の生産性やパフォーマンスの低下への懸念」
    変化③「リモートワークのソロワーク化」
  2. リモートワークがもたらすチャンス
    チャンス①「オンラインミーティングによるフラットなコミュニケーションの実現」
    チャンス②「働きやすさの意味の変化」
    チャンス③「社内外とのコラボレーションの機会創出」
  3. 「リモートワークのもたらす変化とチャンス」のまとめ
  4. 編集部より書籍紹介

リモートワークがもたらす変化

まず、マネジメントや人事施策の実施の難度を上げる可能性のある、リモートワークがもたらす変化を3点挙げます。


【画像「2021年3月9日開催メディア向け共有会資料」より:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ】

変化①「ワークライフバランスからワークインライフへの移行」

1つ目の変化は、「ワークライフバランスからワークインライフへの移行」です。
日本企業では、主として、ダイバーシティ&インクルージョンや女性活躍推進の一環で、「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」を推進してきました。この言葉は、仕事と生活を天秤にかけることを想起させます。ワーク(仕事)だけがライフ(生活)から切り離されて表現されていることからもわかるように、「仕事か生活か」はある種、対立構造にあったのです。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多くの人がリモートワークを経験することになりました。
リモートワークを一定期間経験したことにより、良くも悪くも、生活の中に仕事が取り込まれました。これがいわば「ワークインライフ」です。このワークライフバランスからワークインライフへの移行、つまり、生活空間に仕事が取り込まれることで、メンバーには仕事に集中できる環境を自分で整える責任が生まれました。在宅勤務の環境を整えたり、オフィスや通勤の存在が一役買っていたオン/オフの切り替えも自分で行ったりする必要があります。

一方で、リモートワークの進展で、家族と過ごす時間が増えたり、新たな趣味を始められたりと、生活が充実するメンバーもいます。このような日々を過ごすことで、仕事が、生活の様々な要素の1つに過ぎなかったと感じるメンバーも出てきたことも、リモートマネジメントを考えるうえでは重要です。

変化②「組織や個人の生産性やパフォーマンスの低下への懸念」

リモートワークを導入する経営層やマネジャーから次のような声を聞きます。

  • リモートワークになって、チームで進める仕事に余計な手間が増えた
  • リモートワークでメンバーがさぼっている/働き過ぎている
  • リモートワークが続くと、企業や組織が徐々に弱っていく気がする
  • 今の業務に関係する人以外と、気軽に顔を合わせる機会が減ることで、将来に向けた取り組みの種が減ってしまいそうで心配

上の2つは短期・中期の、下の2つは長期的な、組織・個人の生産性やパフォーマンスの低下を懸念する声です。「懸念」の存在は、リモートと対面の良いバランスを図ろうとしていたところに、原則出社への揺り戻しをもたらします。

現時点でリモートワークの生産性議論に決着をつけるのは早いでしょう(本件には、対面の仕事をそのままリモートに持ち込むか、リモートに合ったものにするかという観点も考慮する必要があります)。しかし、組織やマネジャー、メンバーが、早期に、リモートワークという環境を生かせる状態になることが、まずは大事でしょう。

変化③「リモートワークのソロワーク化」

リモートワークが可能となっているメンバーの中には、出社しなくても支障なく業務が遂行できていると感じている人がいます。出社しなくても支障なく業務遂行できているなら一見問題なさそうですが、これには3つの問題が潜んでいます
1つ目は、学びの機会や新たなアイデアにつながるような刺激が減っていると感じるメンバーが存在することです。2つ目は、メンバーが業務遂行できていると思っていても、会社やマネジャーは、新しい動きをメンバーが行わないといった理由から、メンバーが仕事をしていないと、異なる認識をする場合があることです。3つ目は、メンバーによっては、支障ない業務遂行や成果について、「会社や組織のおかげ」という気持ちが薄れて、「自分(だけ)の力」だと感じる場合があることです。

これら3点は、リモートワークが「ソロワーク」化しやすいことから生じます。ソロワークとは、業務遂行に関係のある人だけと最低限のやりとりを行って業務を遂行することで、他の人の存在や、組織への所属意識を感じられる機会なく仕事をすることを指します。

メンバーが会社の方向性や職場、周囲とのつながりを感じられる状態をつくることは、リモートワーク下ではより重要になるでしょう。

リモートワークがもたらすチャンス

次いで、リモートワークがもたらすチャンスを3つご紹介します。ここでいうチャンスとは、人事領域や働き方をアップデートしたり、積年の課題を解決する糸口になったりしそうなことを指します。


【画像「2021年3月9日開催メディア向け共有会資料」より:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ】

チャンス①「オンラインミーティングによるフラットなコミュニケーションの実現」

1つ目は、「オンラインミーティングによるフラットなコミュニケーションの実現」です。
「ボトムアップ」「現場がチャレンジする風土」……これらの言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。言葉は様々ですが、メンバー発で動ける体制を築くという議論は、以前から何度もなされてきました。何らかの施策を講じた企業もありますが、施策がうまくいったかといえば必ずしもそうではありません。
その理由の1つが、「何を言ったかではなくて、誰が言ったかが重視される。特にこの場合に序列がものをいう」という慣れ親しんだコミュニケーションの慣性であるように思います。

オンラインミーティングは、慣れ親しんだコミュニケーションの慣性を打破する可能性を秘めています。オンラインミーティング用の各種ツールの多くは、ご存じのとおり、すべての参加者が等分で画面に表示されます。左上から役職順に並ぶということもありません。また、場の雰囲気といった情報は対面に比べて伝わりません。

経営層いわく「現場から建設的な意見を出してほしい(しかし全然出てこない)」、マネジャーいわく「メンバーに活発に議論してほしい(でも自分が一方的に話して会議が終わる)」といった企業にとっては、オンラインミーティングの特長を生かすことで、これまでのコミュニケーションの当たり前を変え、フラットな組織風土をつくることができるかもしれません。

チャンス②「働きやすさの意味の変化」

「働きやすさ」という言葉にどのような印象を持っていますか。
「働く時間や場所について、自分の希望が尊重されること」でしょうか。それとも「育児や介護など、いざというときのための支援があること」でしょうか。「いい人たちに囲まれて仕事をすること」と答える人もいるかもしれません。様々な回答が考えられますが、「働きやすさ」は、仕事をする上での環境整備や、仕事への注力を妨げるものを取り除くことと捉えられています。

しかし、経営幹部の中には、働きやすさとは遠い世界でモーレツに働き、現在の地位に就く方がたくさんいらっしゃいます。そのため、「働きがい」という言葉で想起する、仕事へのやりがいや業務への献身、仕事を通じた自己成長といった「仕事に直接に関係すること」に比べて、「働きやすさ」は、低い位置づけとして捉えている方が少なからずいます。

リモートワークの進展はこうした考えにも影響を与えました。「ワークインライフ」によって、仕事に集中できる環境を自宅など、オフィス以外の場所で整える責任が、社員自身に移ってきました。つまり、働きやすい環境を整えることが、働きがいにつながるという関係性に変化しました。「働きがいか、働きやすさか」ではなく、「働きがいを実現する前提としての働きやすさ」へと変化を遂げているのです。

マネジャーは以前から多くの役割を担い忙しかったのですが、近年の「働き方改革」に伴って、メンバーの長時間労働解消のために、自分が仕事を引き受け、更なる負荷がかかるようになりました。「働きがいを実現するための働きやすさ」という考え方が浸透すれば、後回しになりがちであった、マネジャーの働きやすさ向上への取り組みが進む可能性を秘めています

チャンス③「社内外とのコラボレーションの機会創出」

リモートワークによって、これまで対面でやりとりできていたマネジャーや他のメンバーとの業務遂行が難しくなったという声を耳にします。一方で、これまで物理的な距離があった人との仕事はしやすくなっていませんか。リモートワークをしている場合、オフィスにいる人とも、もちろんリモートワークをしている人とも、オンラインでコミュニケーションをとることになります。

これは、プロジェクトを立ち上げる際は、最適な座組みを考えやすくなりますし、メンバーの仕事を割り当てる際も、物理的距離に左右されずに、メンバーの成長に寄与する仕事を考えることができることを意味します。

また、副業や社外専門家など、社外の知を自社に取り入れやすくなることを意味します。自社が社外とつながって新しい知を取り入れることができれば、メンバーはわざわざ転職せずとも、様々な機会を持つことができます。所属する企業がある、という安心感を持ちながらチャレンジすることが可能になるのです。自社が社外とつながり、自社にいながらにしてメンバーが外とつながれるという環境づくりができれば、メンバーの惹きつけにつながります。

「リモートワークがもたらす変化とチャンス」のまとめ

リモートワークがリモートマネジメントにもたらす変化とチャンスを見てきました。

単純に対面かリモートのどちらが良いかと論じたり、リモートワークを面倒で悪いものと一刀両断したりするのではなく、リモートワークのどのような部分に光を当てれば良いかがわかると、自社や自組織に合ったリモートマネジメントの方向性も見えてきそうです。

次回は、その「リモートマネジメント」とは何かを紹介します。

編集部より書籍紹介

いまリモートワーク下で起きている問題とマネジャーがすべきことが、すぐわかる『個と組織を生かす リモートマネジメントの教科書』

この本はリモートワーク下で役割の重要性がさらに増すマネジャーの負荷を大きくせずにいかにマネジメントを行えるかをアドバイスしています。メンバーが「個として立つ」「心の距離が近い」と感じる、「ここがいい」と思う、“3つの「こ」”の状態にするための支援方法のほか、“3つの「こ」”の状態にするための10のポイントについて、「ベースの行動」と「プラスアルファの行動」の2段階に分けて紹介します。

組織・人事のコンサルタントとしてこれまで 150 社以上を担当してきた武藤氏が、リモートワークが世の中で本格化する以前から、クライアントの働き方改革やリモートワーク導入支援を行ってきた経験や、リモートマネジメントを上手に行っているマネジャーへのヒアリングなどを踏まえて、リモートマネジメントのポイントをまとめています。リモートワーク下でマネジメントに悩むマネジャーだけでなく、経営層や人事部門、メンバーにも読んでいただきたい、幅広いビジネスパーソンにおすすめできる一冊です。

【出版概要】
出版社:株式会社クロスメディア・パブリッシング
発売日:2021年3月1日
価格:1,848円(税込)
体裁:単行本(ソフトカバー)
ページ数:304ページ
ISBN :ISBN-10(4295405167)、ISBN-13(978-4295405160)
URL :Amazon http://amzn.to/3szAgMC
株式会社クロスメディア・パブリッシング https://www.cm-publishing.co.jp/

【目次】
まえがき
序章 「リモートワーク」の現在地
第1章 リモートワークがもたらす変化とチャンス
第2章 リモートマネジメントとは
第3章 場面別、メンバー別でみるリモートマネジメント
第4章 リモートマネジメントのポイント
第5章 個として立つ
第6章 心の距離が近い
第7章 ここがいい
第8章 これまでのマネジメントとリモートマネジメントの違い
第9章 リモートマネジメントを助ける環境整備
あとがき

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