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いまさら聞けない人事マネジメントの最新常識

第5回「働き方とキャリア」

「1on1」「OKRとノーレーティング」「働き方改革」といった新しいキーワードから、「採用面接」「OJTとOff‐JT」などの定番用語までを幅広く網羅し、最新の心理学やキャリア研究の知見などを取り入れつつ、人事・総務担当者の実務に役立つポイントをリクルートマネジメントソリューションズの専門家が紹介します。
第5回目のテーマは「働き方とキャリア」です。新旧の働き方と労働観の関係性について考察しながら、働く環境が絶えず変化するこれからの時代に求められる「キャリア・アダプタビリティ」の考え方ついて組織行動研究所所長の古野庸一氏が解説します。

【関連記事】
第1回「採用と人材の戦力化」
第2回「育成と能力開発」
第3回「組織開発と関係性構築」
第4回「人材マネジメント」

目次

  1. いま、新しい働き方を模索している人が増加している」
  2. 「古い働き方」と「新しい働き方」の特徴。そして労働観が多様化する時代へ
  3. 新しい働き方を促進する3つの要因
  4. これからの時代に求められる「キャリア・アダプタビリティ」と人事が持つべき4つの視点
  5. 「働き方とキャリア」のまとめ
  6. 編集部より書籍紹介

いま、新しい働き方を模索している人が増加している

新型コロナウイルス感染拡大に伴って、一気にテレワークが普及した。また、家にいる時間が増えたこともあり、家族や地域社会との関係性、ワークライフバランスのあり方、副業や越境学習、働き方や今後のキャリアについて、考える機会が増え、いわゆる新しい働き方を模索している人も増加している。

今回は、あらためて「新しい働き方」の動きについて触れて、これからの時代に求められる「キャリア・アダプタビリティ」というキャリアの考え方について言及していく。

「古い働き方」と「新しい働き方」の特徴。そして労働観が多様化する時代へ

パラレルキャリア、テレワーク、プロボノ、ワーケーション等の新しい働き方が、ここ数年、働き方改革とともに注目されている。「新しい」働き方があるということは、「古い」働き方があるというのが前提である。従来の働き方、つまり古い働き方は、以下のような特徴がある。

「男性正社員が中心」「長時間労働」「有給休暇をあまり取得しない」「地域活動を行わない」「キャリアは会社に依存している」「60歳の定年までひとつの会社で勤め上げる」「朝早くから夜遅くまで職場で働く」というような特徴である。

逆に、新しい働き方の特徴は、「多様性」にある。正規社員だけではなく、非正規社員も想定している。パート・アルバイト、契約社員、派遣、業務委託など、雇用形態も多様である。全体として労働時間は短くなってきているが、労働時間は長い人もいれば短い人もいる。働く場所は、職場もあれば在宅もある。サテライトオフィスもあればリゾートもある。
ひとつの会社に依存するわけではなく、生涯を通じて転職を行うことも想定している。ひとつの会社に所属していても、他の仕事を行う、いわゆる副業を選択する人も増えている。ワークとライフの比重は、人によってさまざまであり、一人の人でも生涯を通じて変化する。20代のときはワークが中心であったとしても、そのあと、育児や介護のために労働時間を短くすることもあれば、地域活動やボランティアや趣味に時間を多く割く人もいる。

そもそもの労働観も多様になってきている。仕事が人生の中心であり、生きがいを求めている人もいれば、なるべく働きたくないと考えている人もいる。暇つぶしのように働いている人もいる。働き方も労働観も多様であると言うことは、ロールモデルになる人は見つけづらく、自分で自分のキャリアをデザインしなければいけない時代ともいえる。

新しい働き方を促進する3つの要因

そのような新しい働き方は、単なるブームではなく、これからも継続していく動きになると考えられる。なぜなら、新しい働き方を促進している要因が下記のように一過性ではないからである。

要因1:「人口動態」

要因の1つ目は「人口動態」である。
日本の人口は減少している。特に、生産年齢人口は減少しており、これからも減少していくと予測される。生産年齢人口の減少をカバーするために、シニア人材の活用が注目されている。

つまり、私たちは、長い期間、働くことが奨励されている。60歳で引退ではなく、70歳あるいは80歳まで働くことが期待されている。また、働く人が少なくなることは、個人のパワーが強まることを意味し、働く人の要望が重んじられる可能性は高く、そのことが新しい働き方を促進する要因になる。

要因2:「技術の進展」

2つ目の要因は「技術の進展」である。
ITやロボットの技術の発達によって、私たちが従事している仕事がなくなったり、仕事の仕方や内容が変わったりする可能性は高い。それは、ひとつの仕事に従事している期間は短くなることを意味している。長い期間働く一方で、ひとつの仕事寿命は短くなるということは、ひとつの仕事を生涯貫くことは難しくなり、複数の仕事を経験することが当たり前になっていく。

また、ITの発達は、テレワークの前提になる。音声や動画が遠隔地でも無理なくつながるのであれば、働く場所は自由になる人も多く、技術の恩恵を感じるところである。

要因3:「価値観の多様化」

3つ目の要因は「価値観の多様化」である。
この40年間、確実に起こっていることは、共働き世帯の増加と生涯未婚率の増加である。1980年に600万世帯であった共働き世帯は、現在1300万世帯弱に倍増している※1

つまり、結婚後も働く女性は増えていることを意味し、家事・育児は夫婦で分担することが当たり前になっている。在宅勤務の需要は、家事・育児の負担と相関しており、共働き世帯が増加すれば、在宅勤務希望は増えると考えられる。

ーーーー

生涯未婚率は、1980年に男女とも5%未満であったが、2015年には女性14.1%、男性23.4%になっており※2、結婚することが当たり前ではなくなってきている。つまり、結婚している大人もいれば、結婚していない大人もいるという社会になっている。そのようなことも労働観や働き方の多様性につながっていると考えられる。
以上のような3つの要因は、一過性のものではなく継続していくものと考えられ、新しい働き方を今後も牽引していくと思われる。

※1 厚生労働省『厚生労働白書』、内閣府『男女共同参画白書』、総務省『労働力調査(詳細集計)』
※2 国立社会保障・人口問題研究所『人口統計資料集2019年版』、内閣府『令和元年版 少子化社会対策白書』

これからの時代に求められる「キャリア・アダプタビリティ」と人事が持つべき4つの視点

上記3つの要因によって、働く環境は、絶えず変化している。特に、技術の進展速度は早まっており、環境の変化度合いは、より早くなってきている。そのような環境においては、先述したように、生涯にわたって、ひとつの会社で同じ仕事を行うことは難しくなる。転職することや違う仕事を行っていくことを視野におくことが求められる。
そのように変化する環境に適応していくことを目的にしたキャリアの考え方を「キャリア・アダプタビリティ」と言い、これからの時代に合った考え方である。キャリア・アダプタビリティの考え方を展開しているマーク・L・サビカスは、4つの視点を提唱している※3

視点1:「関心」

1つ目の視点は「関心」である。
自分の職業やキャリアの未来への関心であり、展望である。環境が変わるのであれば、その準備が必要になってくる。技術の発達に伴って、自分が行っている仕事が突然無くなることがある。

たとえば、ミシン、レコードプレイヤー、ブラウン管テレビに関わるような仕事や、駅改札業務や受付業務などは、かつて存在していたが、現在では激減している。今後は、内燃機関、銀行窓口、書店に関わる業務などは、激減していくことが予想されている。そのような未来を予想しながら、いざというときに転換できる準備が必要になる。

視点2:「統制」

2つ目は「統制」である。
偶然を待つのではなく、自らの責任で未来を創造していくスタンスである。

偶然にキャリアが広がっていくことはあるが、その偶然を呼び寄せるための行動やたまたま訪れた機会を活かす能力を持っていなければ、キャリアは拓けない。いずれにしても自分のキャリアは自分でコントロールするスタンスが求められる。

視点3:「好奇心」

3つ目は「好奇心」である。

自分の周りや未来を常に好奇心を持って探索して、自分の可能性を試すことが求められている。新しく経験に対してオープンになり、今までと異なる役割を試していくことによって、新しい自分の可能性を拓いていくことになる。

視点4:「自信」

4つ目は「自信」である。
自信がなければ、新しい挑戦は難しくなる。挑戦し、成功体験を蓄積し、自信を持ち、また新たに挑戦することが現代に必要な態度と言える。今までと異なることを始める場合、うまくいかないかもしれないという思いは誰にでもある。

しかし、過去はうまく乗り越えてきた経験があれば、次もうまくいくだろうという自信になり、行動を後押しする。そういう意味では、過去の成功体験を振り返り、自分なりに言語化しておくことが、未来に対する自信や希望につながると考えられる。

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キャリア・アダプタビリティはアメリカ発の考え方であるが、日本においても、人生100年時代、仕事の寿命が短くなることを考えると、これから益々、重要になってくる考え方だと言えるだろう。4つの視点に照らしわせたとき、会社の従業員一人ひとりがどういう状態であるのか、問うことが現代の人事には不可欠な観点であるだろう。

※3 Savickas, Mark L.  2005. The Theory and Practice of Career Construction.  Pp. 42-70 in Career Development and Counseling: Putting Theory and Research to Work, edited by S. D. Brown and R. W. Lent.  Hoboken, NJ: John Wiley & Sons.

「働き方とキャリア」のまとめ

働き方キャリアに関して、以下のことを述べた。

  • 新しい働き方を考える人が増えているが、古い働き方に比べ、新しい働き方の特徴は「多様性」にある。雇用形態や働く場所・時間、転職や副業、仕事に対する価値観などが人によってさまざまであり、その傾向はより一層強くなると考えられる
  • 新しい働き方を促進する3つの要因は、「人口動態」「技術の進展」「価値観の多様化」
  • 絶えず変化する環境に適応していくことを目的にしたキャリアの考え方を「キャリア・アダプタビリティ」と言い、これからの時代に合った考え方である
  • キャリア・アダプタビリティの視点は、「関心」「統制」「好奇心」「自信」。この4つに照らしたとき、会社の従業員一人ひとりがどういう状態であるのかを問うことが現代の人事には不可欠な観点である

連載「いまさら聞けない人事マネジメントの最新常識」【おわり】

編集部より書籍紹介

ジョブ型人事制度、1on1、OKR、働き方改革……1冊で最新人事用語がすべてわかる! 『いまさら聞けない 人事マネジメントの最新常識』

企業の働き方改革や人材育成・マネジメントを支援してきたリクルートマネジメントソリューションズ・組織行動研究所の専門家が編集しているのが特徴だ。人事の仕事に初めて就く人の「入門書」となることはもちろん、ベテラン人事が「知の再発見」を提供する。人事に限らず、現場のマネジメントに関わる管理職にもおすすめの一冊だ。
内容は、働き方改革関連法、パワハラ防止法、女性活躍推進法改定、新型コロナウイルスの影響などにともない、人事やマネジメント層に求められる業務も多様化・複雑化している背景のもと、「1on1」「OKRとノーレーティング」といった新しいキーワードから、「採用面接」「OJTとOff-JT」などの定番用語まで幅広く解説している。

【出版概要】
出版社:日経BP 日本経済新聞出版本部
発売日:11月17日(火)
価格:1,000円(税抜)
版型:単行本(小B6判・新書)
ページ数:184ページ
詳細:https://www.recruit-ms.co.jp/press/book/
http://amzn.to/3oc5Q0i(amazon.co.jp)

【目次】
第1章 採用と人材の戦力化
 インターンシップ、リファラル採用ほか
 Column ゆれる就職活動
第2章 育成と能力開発
 1on1、アダプティブ・ラーニングほか
 Column リモートワークで育成はできるか
第3章 組織開発と関係性構築
 チームビルディング、心理的安全性ほか
 Column 社員が自発的に働く職場とは?
第4章 人材マネジメント
 ジョブ型とメンバーシップ型、OKRとノーレーティングほか
 Column ジョブ型人事制度のワナ
第5章 働き方とキャリア
 働き方改革、同一労働同一賃金、シニアの働き方ほか

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