ポイント制人事考課システムを活用して離職率低下と社員のモチベーションアップを実現した事例紹介

【誕生編】ポイント制人事考課システムの設計

ポイント制人事考課システムを活用して離職率低下と社員のモチベーションアップを実現した事例紹介(序章)の続きです。
【序章】人事考課に『ポイント=社員の個人保有点数』を必要とした理由と背景

離職率の高さと社員のモチベーションの低さに悩みながらも、なんとか量産にこぎつけたものの相変わらず続く人員不足と求人活動。
何とか歯止めをかけたいと思い、退職者へのヒアリングにより正直な退職理由を聞き出しながら打開策を模索し続けている最中、閃いたのが「ポイント制」でした。
本稿では「ポイント制人事考課システム」の肝である設計部分をお話しします。

※こちらの記事は下記のブログ記事「ポイント制人事考課システムで離職率低下とモチベーション向上を実現した話(2-誕生編)」を@人事の読者様向けに一部編集させていただいております。
https://tecci.net/point2/

御社の役に立つかもしれない、このポイント制人事考課システムの顛末を、よろしければお読みください。

目次

  1. ショッピングポイントから発想を得た「ポイント制人事考課」
  2. ポイント制人事考課システム設計の道筋
    考課要素:業績
    退職理由のリサーチ
    勤務・愛社意識
  3. 制度運用には、「公平な人事考課」ができることが前提になる

ショッピングポイントから発想を得た「ポイント制人事考課」

「人はなぜポイントに惹かれるのか?」

これが「ポイント制人事考課システム」構築のきっかけでした。

ある朝、テレビを見ていたらショッピングポイントについてその魅力や獲得方法、獲得したポイントの活用方法、他のポイントへの移行方法について詳しく説明していました。
そして多くの人が少しでも多くポイントを獲得するためにポイントが倍になる日や数倍のポイントが獲得できる特定商品を購入する様子も放送されていました。

振り返って自分のことを考えてみると、私自身もいくつかのポイントカードを持っており、獲得したポイントで支払いに補填したり、サービスの引換券に交換したときはとても得した気分になったことを再認識しました。

退職と補充のサイクルから少しずつ開放されてきた頃、離職率を下げる方法はないかと思い巡らせていたときにそのTV番組を見たのでした。

天啓を受けたような気になり早速「ポイント制人事考課システム」の設計を始めました。

ポイント制人事考課システム設計の道筋

とにかくいろんな疑問が湧いてきましたが、一つ一つメモに書き出しました。

  • 何に対してポイントをあげるべきか?
  • ポイント数は?
  • 人事考課はどのように行うべきか?
  • ポイントの管理方法は?
  • ポイントの交換方法は?
  • 間接部門への適用方法は?

何日間かそんなことを続けていくうちに少しずつシステムの基本構想が出来上がってきました。
目的は「離職率低下とモチベーションアップ」としました。

考課項目は従前から昇給や賞与時に行っていた人事考課項目を基本的な項目とし、次の表のようにまとめました。
※ポイント数については設計当初のものです。

<表の見方>
P1:ポイント数(職位:オペレーター~事務)
P2:ポイント数(職位:リーダー~係長)
P3:ポイント数(職位:管理職)
X1:ポイント数は1~3の範囲で管理職が決定
X2:ポイント数は経営会議にて決定。
※X1、X2は固定ではなく変動ポイント

考課要素:業績

これらの項目は、目標管理と連動し管理職には目標管理で設定した目標に達した場合ポイントを付与し、非管理職には各自の職位において与えられる業務をしっかりと完遂した場合に上司がポイントを付与することとしました。
改善工夫については意見箱で改善提案や不平不満を受け付けていましたが、報奨が明確になると提案意欲も湧くのではという期待もありました。

考課要素:能力

次に各部門のレベルアップと原価低減、モチベーションアップを図っていくために下記項目を設定しました。
基本能力についてはいわゆる職務分掌に規定されている各部門の職位毎にレベル分けをして付与ポイント数を決めていきました。
また間接部門を含め多能工化を進めるにあたり習熟的能力の中に多能性の項目を作り、さらに難易度とそれに対応するポイント数を決めました。

当時、生産部門の責任者が困っていた問題は、「辞めないけど出勤率の悪い社員が多くいること」でした。この改善を図らないと生産現場としては計画通り生産が進まず、毎月出荷残が累積されていく事態が起こりつつありました。

このように文章にするときれいに設計が進んだようですが、実際は出勤率の悪い社員を篩(ふるい)にかけるため、社員の多能工化を進めて行くつもりで表2の「多能性」を後から追加したりしました。多能工化を進めるための基礎として業務知識を基本能力として身につけさせることも合わせて必要でした。
それまではとにかく与えられた仕事をすれば良いと思っていたところにこのような考え方が入ってきたので少なからず反対意見もありました。

勤務・愛社意識

社員の定着を図るためにまず試用期間後の本採用時に本採用ポイントを設け、さらに入社日ポイントや誕生日ポイントで将来にポイントが獲得できることがわかる仕組みを作りました。
もう少し継続勤務すれば誕生日のポイントが貰えるとか、入社日が来るので貰えるとわかれば長くいたくなるのではないかと考えたわけです。

出勤率の悪い社員を良くするためにカウンセリングをしたり、出勤率の良い社員はそれをさらに継続できるように皆勤、精勤ポイントを設けました。
生産を安定させる上でシフト通りに出勤してくれないとその日一日の生産計画に狂いが発生し、一度狂うとその連鎖は続き月の生産実績や計画にも大きく影響し、生産体制そのものが混乱に陥る危険を孕んでいました。
もちろんある程度の余力を見越して計画してもそれを超えれば生産計画が根底から崩れます。こうなると日本の会社からは海外工場はダメかと簡単にレッテルを貼られることになります。

また愛社意識として作業場所以外でも破損仕掛けている場所、乱雑になっている場所等を報告した場合にもポイントが貰えるようにしました
こうすることで声高に騒いでいた5S活動に外国人労働者も積極的に参加するようになり、会社の美化や安全性向上に繋がっていきました。

制度運用には、「公平な人事考課」ができることが前提になる

このように考課項目の設定や基本的な考え方をまとめ、さらにそれぞれのポイント数を決め基本設計を完了しました。

実際にポイント制人事考課システムを運用し、どのような効果(変化)があったのかは、【完結編】「ポイント制人事考課システムの運用と効果。さらなる改善とモチベーションアップへ」で詳しく紹介したいと思います。
その前に、ポイント制人事考課システムに限った話ではなく人事考課で一番大事なことは公平な人事考課です。長年の習慣を修正することは一筋縄ではいきませんでしたが、「公平な人事考課」が出来ない限りどんな考課方法も意味を持ちません。

運用開始までの半年間を“運用準備期間”として、経営幹部が共通認識をもち、運用に臨むことになります。次回、【運用準備編】「ポイント制人事考課システム運用の前の大切な準備」へ続きます。

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