アンケート結果から見えた2020年度新入社員の傾向と今後の対策
コロナ禍における採用と教育も「バリュー」を軸にすべき理由
期待や希望を胸に抱き4月に入社してきた新入社員が、日を追うごとに意欲をなくし、やがて早期離職につながってしまう。そんなケースを目にしたことがある方は少なくないはずです。
その原因は、採用と教育の方針にあるかもしれません。
そこで今回は、2020年入社の新入社員を対象に、独自に実施したアンケートの結果を公開したいと思います。アンケート結果から見えた2020年度新入社員の春時点での傾向※と、今後の教育や、次年度の採用に有効な対策について解説します。
普段社内では言いづらい本音を含む、新入社員の生の声をお伝えします。本レポートが、新入社員育成のための参考になれば幸いです。
●調査目的:
2020年度新入社員の方々が入社当初に抱く会社や仕事に対する考え方・傾向を知り、社内教育の一助となること。
●調査対象:
2020年度新入社員(有効回答数:285名)
●調査期間:
2020年3月1日(日)~2020年8月31日(月)
●調査方法:
アンケート用紙を配布し、各人の匿名性を保証した上で回答を依頼した。
※コロナの影響により入社当初に受ける研修の実施時期が後ろ倒しになって受けた回答者もいるため、調査期間が8月31日、回答の傾向を「春時点」としています。
2020年度新入社員が持つ4つの傾向
この度のアンケートから確認できた2020年度新入社員の傾向は、主に以下の通りです。
①入社前から転職予定。全体の約半数が5年以内の転職を視野に入れている。
②就職先は、何をどんな環境でするかより、「誰とするか」で決める。
③入社当初のモチベーションやロイヤリティには、事業内容や具体的な業務より「人間関係」と「先輩の魅力」が影響する。
④空気を読んで行動する傾向があり、「他社員からの評価」を気にする。ルールや正解といった、「明確な判断基準」を求めている。
傾向①入社前から転職予定。全体の約半数が5年以内の転職を視野に入れている。
今の会社での予定勤続年数を聞いたところ、「1年未満」、「1~3年」、「4~5年」と回答した割合の合計が全体の約半数を占める結果となりました(49.0%)。
ただしその内の半数は、“入社先には関係なく当初から転職や独立を想定している”という回答でした。“成長の環境や待遇に不満が無い場合は継続したい”という意見も見られることから、キャリアアップのいち手段として捉えていることが分かります。
傾向②就職先は、何をどんな環境でするかより、「誰とするか」で決める。
今の会社に入社を決めた理由を聞と、表向きの理由では「事業内容」が30.7%と最も多く選ばれましたが、本当の理由では13.4%とほぼ半分に減り、四番目となりました。その代わりに、「社員の人柄」が本当の理由として最も多く選ばれています。
何をどんな環境でするかより、誰とするかが入社の決め手となるようです。特に、先輩社員がイキイキと働く姿や、会社と社員の向く先がしっかり合致しており、団結している様に魅力を感じた方が多いようです。
傾向③入社当初のモチベーションやロイヤリティには、事業内容や具体的な業務より「人間関係」と「先輩の魅力」が影響する。
今の会社での仕事は楽しそうだと思うかを聞いたところ、「とても楽しそう」、「楽しそう」と回答した割合の合計が8割を超えました(84.2%)。なお、どの選択肢を選んだ場合でも、社内の人間関係や先輩、上司への印象といった、『人』を理由に回答している方が多く見られました。
また、今の会社を好きかや、会社を自慢する際のポイントを聞いたところ、やはり「人間関係・他社員について」を理由に回答する方が最も多く見受けられました。
理由を見ると、既存社員に活気があることや仲の良さ、距離の近さを感じられることが、会社の好感度につながっていることが分かります。
反対に、会社に対し不満を持っているポイントを聞いたところ、「まだ無い・分からない」が最も多く、続く2、3番目には「労働時間・休日」「報酬・福利厚生」等の待遇面が多く挙げられました。
理由を見ると、入社前の説明不足やコミュニケーション不足から来ているものが多いことが分かります。こうした不満は早期離職の理由としても多く挙げられるため、早めに解決しておく必要があります。
また、自慢したいこととして最も多く挙げられていた「人間関係・他社員について」を、不満として挙げる方が約1割いました。
複数の調査項目によって、会社のことがまだよく分からない時期は、人や待遇といった目に見えるもの、比較しやすいものに良くも悪くも注目が集まりやすいということが示されています。
中でも『人』による影響力が元も大きく、入社から数ヶ月間のモチベーションとロイヤリティはほぼこれによって左右されていると言えます。
傾向④空気を読んで行動する傾向があり、「他社員からの評価」を気にする。ルールや正解といった、「明確な判断基準」を求めている。
働くことに関する不安や悩みを聞いたところ、「自分の能力・成長」「漠然とした不安」「知識不足」といった、“分からないこと”に対して不安に感じる方が半数以上を占める結果となりました(54.6%)。
理由を見ると、『人』から影響を受けるだけでなく、『人』にどのような影響を及ぼすか、すなわち直属の先輩や上司との関係性や、他社員からの評価についても重要視していることが分かります。
空気を読むことが得意な反面、正解を引けない見つけられないことに不安を感じやすく、場に馴染めるか、ルールを守れるかが気になるようです。
多くは時間が解決してくれる問題とはいえ、モチベーションダウン、ひいては生産性や成長速度に支障をきたすため、早めに解消しておく必要があります。
次年度の採用と教育は『バリュー』をメインに
改めて2020年度新入社員の傾向をまとめると、以下の4つになります。
①入社前から転職予定。全体の約半数が5年以内の転職を視野に入れている。
②就職先は、何をどんな環境でするかより、「誰とするか」で決める。
③入社当初のモチベーションやロイヤリティには、事業内容や具体的な業務より「人間関係」と「先輩の魅力」が影響する。
④空気を読んで行動する傾向があり、「他社員からの評価」を気にする。ルールや正解といった、「明確な判断基準」を求めている。
上記の結果から、新入社員の定着と生産性向上には『バリュー(価値観・行動指針)』をメインとした採用と教育が必要であると考えます。
そして、新入社員だけでなく、普段の業務で関わりの多い先輩・上司に、全社統一された明確な判断基準である『バリュー(価値観・行動指針)』を再度浸透させることが必要であると考えます。
これらを実施する上でポイントとなるのは以下の3つです。
1.アプローチと採用基準にバリューを絡めること。
上記の通り、入社を決めた本当の理由として最も多く選ばれたのは「社員の人柄」でしたが、次に注目されていたのは「報酬」や「勤務環境」といった待遇面や、「事業内容」でした。
しかしこれらは、時代の流れるスピードが速い現代、特にニューノーマルと呼ばれるこれからの世界において、変動する可能性が高いものです。
これらを軸に学生へのアプローチを行うと、内定から入社までの期間に何か変化が起きた場合、「内定承諾時には知らなかった」「予定していた業務と違うことをやることになった」「魅力を感じていたポイントが無くなってしまった」といった問題(ネガティブなギャップ)を引き起こしかねません。
※参考:早期離職はコミュニケーションで防げます! 新入社員の本音から導く4つの対処法
https://at-jinji.jp/expertcolumn/175
一方、バリューは、時代や環境といった周囲の影響を受けにくいものです。これを軸としたアプローチを行えば、入社後に感じるネガティブなギャップを減らすことができます。
また、バリューは“自社が求める人材を言語化したもの”とも言えます。これを採用基準とすれば、役員や人事担当以外の社員にとっても納得度が高い採用を行うことができます。
2.入社後の教育はバリューから行うこと。バリューを軸に丁寧に説明し、納得を促すこと。
バリューを示すところから教育をスタートすることには、
・指示の真意をつかみやすくなり、コミュニケーションが円滑になる
・自分で考えて行動できるようになるまでのスピードが上がる
・“分からない”ことによる漠然とした不安が減る
等のメリットが多数あります。
2020年度新入社員は「デジタルネイティブ」等と呼ばれる、学生時代からインターネットのある環境で育ってきた世代です。さらに、SNSや動画サイト等の発展により、自分の好きな時間に好きな情報だけを得ること、コミュニケーションにおいては、好きな人とだけ関係性を持つことが可能な環境下にいます。
こうしたツールを使いこなせることは多くのメリットを生みますが、その一方で、情報が不足している状態や、考え方が異なる人と関わることへの心理的ハードルが高い傾向があります。また、自らの行動が評価に直結することをよく理解しているため、他者からの見え方への関心も極端に高い傾向にあります。
これらは、
・自分の意志を表に出そうとしない
・率先する者がいない場面では能動的に動くことができない
・失敗を気にしすぎて消極的になる
という行動として現れます。したがって、ただ提示して実践によって理解が深まるのを待つ方法は効率的とは言えません。しかし、何か指示するたびに背景から丁寧に説明し、納得を促すというのも現実的ではありませんし、受け身なままでは成長もできません。
これらの問題は、全社員に共通した明確な判断基準、すなわちバリューを示すところから教育を始めることで解決することができます。即戦力化するためには初めから実務の教育をメインにすべきでは?と思われるかもしれませんが、まずは土台を作ることが重要なのです。
実は、上記の特徴以外にも、
・出さないだけで、自分の意見はちゃんと持っている
・関係が構築できた人に対しては、自らの能力を活かして積極的に貢献しようとする
・理解、納得した上であれば、やり遂げる能力が高い
という可能性を秘めています。
これらの長所を発揮してもらうために、まずは安心して行動ができるようになる状態を作っていきましょう。
3.既存社員のバリュー浸透度を高める。
入社の決め手や、入社当初の新入社員に最も影響を与えるのは『人』です。「何をするか」より「誰とするか」に重きを置いています。社内の人間関係や、先輩、上司の魅力が新入社員のモチベーションにそっくり影響するものと思って差し支えありません。
そこで重要になるのが、既存社員のバリュー浸透度を高めることです。
入社当初というのは、知識不足により物事を多面的に捉えることが難しい時期です。伝え方のニュアンスが違うだけでも「言っていることが違う」と思われかねません。その場のコミュニケーションに支障が出るだけでなく、そうした不満は人間関係構築にも影響します。人は何を言うかよりも誰が言うかを重視する傾向があるため、教わる側の傾聴度が下がると教育を進めづらくなります。
しかも、コロナ禍によって「複数人がリアルタイムで意思統一することのできる環境」が当たり前ではなくなってきました。メールや電話によるクローズドなやりとりが増えたという企業様は少なくないでしょう。
そんな今だからこそ、今まで以上に、教える側の意識をバリューに統一させることが必要なのです。
テレワーク下におけるバリューの重要性については以前にもまとめておりますので、よろしければ合わせてご覧ください。
※参考:テレワークのマネジメント課題は、ツールの導入では解決しない
https://at-jinji.jp/expertcolumn/236
バリュー浸透が「早期離職防止」「生産性向上」につながる
これらのポイントをふまえた施策を自社のみで行うには限界があります。この度の調査においても、第三者が実施しているアンケートの中でなければ言い出すことのできないような本音が多々見受けられました。
弊社は、こうした調査による新入社員様の声や、科学的根拠に基づくオリジナルメソッド(Values linking)を用いて、バリューを社員一人ひとりに浸透させるための研修を個社毎に開発しております。
社員の皆様に『自社の理念や行動指針を体現し、生産性高く働き、成長や幸せを感じてもらいたい』とお考えでしたら、ぜひ一度お話をお聞かせください。
年々、新卒の有効求人倍率が高まり、企業は空前の採用難となっています。にもかかわらず採用できた貴重な新入社員様の早期離職防止・生産性向上は、大きな経営課題と言えます。
本調査が、その解決の一助を担えておりましたら幸いです。
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