「オンライン研修」はリアル研修を超えられるのか?
この度のコロナ禍により、今年初めて研修のオンライン化を検討することになったという企業様は多くいらっしゃるでしょう。一方で、「研修効果が下がるのでは?」という不安から、なかなか踏み切ることが出来ない方も多いようです。
そうしたお客様のご要望もあり、長年対面での研修をメインに行ってまいりましたが、いざオンライン研修を行ってみたところ、多くのメリットが見えてきました。よって、タイトルに対する結論は、「オンライン研修は、リアル研修に”負けない”」です。
ただし、そのためにはいくつかの課題を乗り越えなくてはなりません。
今回は、オンラインでもリアル研修と同じ研修効果を得るためのポイントをお伝えします。
合宿からオンラインに切り替え。受講生が涙するほどの研修に。
まず、事例をご紹介します。
毎年新卒研修を発注いただいている、誰もが名前を知っている大手電子機器メーカーさんのケースです。
今年も4月初旬に3日間の合宿研修を行う予定でしたが、直前に感染拡大の状況が激しく変わり、感染防止のためたった2週間で2度も計画を変更しなければならなくなりました。
↓
変更①:合宿ではなくオフィスでの研修を3日間(4月2週目)
↓
変更②:オンライン研修を3日間(4月2週目)
このクライアントさんでは、「クライアントや上司から求められる高い要求を乗り越える経験をして、自社のバリューを体現する(現場で失敗したときに『もうダメだ』と思うのではなく、『PDCAサイクルを回し続けよう!』と考える)人材に育ってほしい」という目的のもと、合宿研修を行っています。
研修では、グループ対抗でプレゼンをして役員陣を納得させるというプログラムによって、パワーポイントを使う経験や、優勝を目指して質の高いプレゼンを作り上げるという経験を積んでもらうと同時に、同期の結束を強めることも行っていました。
そんな様々な狙いがあって合宿という形をとってきた研修をオンライン研修に変更することになったため、「当初の目的を達成できるのか?」という課題にかなり悩まされました。
しかし、研修最終日の、現場での行動について決意表明をするワーク中に、「他グループに負けたことがあまりに悔しく、涙を流しながら話す」受講生が現れました。それほどまでに本気で頑張ることで得られる体験を生みだすことに成功し、人事担当の方が掲げた目的を達成することができたのです。
『リアル』で『ハイパフォーマーな講師』が『face to faceでフィードバック』するのがベスト、というのが教育業界の定説。
上記はほんの一例です。
新型コロナウイルスの影響を受けた2020年3月から、クライアントさんの要望によって、通常通りリアルで実施する予定だった研修のほとんどをオンラインに変更しました。新卒研修のピークだった4月分だけでも30社以上(※)を数えました。
(※内訳…大手:従業員1万以上、中堅:従業員500名以上、ベンチャー従業員30名以上が混在)
なおかつ、弊社ならではの大きな課題に立ち向かう必要がありました。
弊社はValuesist(バリューシスト)に特化した教育コンサル会社です。
Values(価値観、行動指針)にist(体現する人)をつけた造語。※商標登録申請中
[メイン事業]
・各社のValues(価値観、行動指針)を浸透させる研修。新卒・幹部研修等
・各社のValues(価値観、行動指針)を評価に反映させる人事評価制度
・各社のValues(価値観、行動指針)の構築支援
自社のValues(価値観、行動指針)に共感し、体現する人材を育成することが、企業には最も必要だと考えています。
そのため、大半の研修はValues(価値観、行動指針)をテーマとしています。
各社のValues(価値観、行動指針)には以下のようなものが多く、
[各社のValues(価値観、行動指針)としてよく挙がるもの] | |
・どんな時も当事者意識 ・圧倒的相手目線 ・どうせやるなら、楽しく ・なぜ?を大切にしよう |
・自己責任でポジティブ ・自らの意思で、自ら考える ・いつも素直に、誠実に ・10日後の100点より、明日の30点 |
これを浸透させるには、
・インタラクティブであること(受講生が受け身にならず、かつ共感を生み出すため)
・グループで実務に近いケーススタディを反復し、不足している点を自己認識してもらうこと(仕事に関する様々なWhyをロジカルに腹落ちしてもらうため)
といったことがmust条件です。
このmust条件を、オンラインで満たすことができるのか? が大きな課題でありました。
そして、教育研修業界では、「上記のようなmust条件は『リアル』で『ハイパフォーマーな講師』が『face to faceでフィードバック』しないと実現できない」、というのがマジョリティであり、定説でした。
以下に、「オンライン研修とリアル研修のメリット・デメリット」をまとめました。
※図はクリックすると拡大します。
弊社の各クライアントさんも「バリュー研修をオンラインでやるのは難しい」とお考えでしたが、何とかしてリアルと近しい教育の場を作り上げたいという想いで、二人三脚でこの課題に取り組みました。
そんな3,4,5月を経た結果。「オンライン研修はリアルを超えられる!……と確信するまでには至らないが、同等の教育の場であれば作ることができる!」という自信を得ることが出来ました。
もちろん、上記のメリデメが示す通り、リアル研修とオンライン研修には大きな違いがあります。今までの研修をただ画面越しにやるのでは、思うような成果を得ることはできません。
次の項で気を付けるべきポイントをご紹介します。
Values(価値観、行動指針)といった腹落ちが難しいテーマにも対応可能な6つのポイント
まず、オンライン研修をインタラクティブに進める方法についてです。受講生が受け身にならず、かつ共感を生み出すために行います。これには、2つのポイントがあります。
①アプリのグループ分け機能を使ってリアル研修と同じフレームワークで実施する。
オンラインMTGアプリは、グループ分けができるもの(zoomやWebex)を選んでください。
その機能を活用すれば、リアル研修でよく用いられる
個人ワーク
↓
グループワーク
↓
グループのアウトプットを全体共有
↓
講師からのフィードバック
というフレームワークが使えるため、講師が一方的に話すだけの退屈で身にならない研修を回避することができます。
②模造紙や付箋に代わり、チャット機能やGoogleスライド、スプレッドシートを活用する。
グループのメンバーで意見を出し合うような、模造紙や付箋を使って行うワークは、代わりにアプリのチャット機能やGoogleスライド、スプレッドシートを活用しましょう。
例えば、講師がチャットで各グループにGoogleスライドのURLを送ります。受講生は模造紙の代わりにGoogleスライドを作成し、発表時はそれを画面共有します。後で文字を入力したり、ペンで書きながらフィードバックしたりといった事も可能です。
このようにすれば、受講生のアウトプットを全員が見ながら講師がフィードバックするという、リアルと同じフレームワークで実施することができます。
次に、グループワークで実務に近いケーススタディを学ぶ方法についてです。グループワークは互いの気づきを共有できるため一人で学ぶよりも多くの学びを得ることができ、また、不足している点を自己認識しやすい環境を作ることが出来ます。
これをオンラインでやるには、4つのポイントがあります。
①テキストは紙で用意する。
ワークの中には情報量が多いものもあると思います。そのようなワークを行う場合、必要な情報をすぐに手元で見ることができるようにしなければなりません。リアル研修で配るようなテキストを、受講生の家に事前に郵送し、紙のテキストがある状態をつくりましょう。
データのみで共有した場合、受講生はビデオ通話とテキストへの入力を1台のPC上で行わなくてはなりません。画面を半分ずつ使用して小さい文字を見ることになったり、いちいち画面を切り替えたりする手間がかかり、研修のノイズになってしまいます。
②受講生の本気を引き出すワークを設計する。
これについてはリアルの研修でもそうすべきなのですが(笑)、やはり受講生が思わずのめりこんでしまうようなワークを設定し、FUNを生み出すことが重要です。
例えば、前述のクライアントさんで行ったようなワークです。グループ対抗で役員陣にプレゼンして優勝を目指すとだけ書きましたが、これはつまり複数社のコンペで、決裁権を持つ人物を納得させるようなプレゼンを行い、1社だけが受注するという状況を想定したワークなのです。
③グループ内での役割を設定し、傍観者を0にする。
リアルでの研修であれば、1グループの人数は6~7名でもOKです。しかし、オンライン研修の場合は4名がベストな人数になります。そして、タイムキーパー役、メモ役、プレゼン役、ファシリテーター役と、それぞれに役割を設定した上でワークに取り組んでもらいます。
これで、オンラインだと起きやすい”傍観者”が生まれる可能性を限りなく0にすることができます。
④雑談タイムを設ける
リアル研修であれば、休憩時間等に受講生同士で「最近どう?」といった雑談をすることができ、発言しやすい場づくりに繋がりますが、オンライン研修だとそうはいきません。
代わりに、「仕事に関係ないことで3分間話し続ける」といったワークで強制的な雑談タイムをつくることで、受講生同士の活発な議論やコンフリクトを誘発することができます。
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以上が、Values(価値観、行動指針)をテーマとした研修をオンライン化する中で分かったポイントです。ざっくりまとめるとこの3つ。
・インタラクティブ×グループワークができるオンラインツールを活用する(zoomやWebex、Googleスライド等)。
・「現場と似た設定×失敗体験×FUN」の3要素を満たしたケーススタディを多数用意する。
・オンラインならではの強制的な雑談タイムを設定する。
これを踏まえてmust条件を担保すれば、リアルと同じくらいインタラクティブな研修を行うことができます。そして、受講者に自分が不足している点を自己認識してもらうことや、入社時に抱えがちな仕事に関する様々なWhyに対する答えをロジカルに腹落ちしてもらうということが可能になります。
Values(価値観、行動指針)は1社1社で違いますので、提供している研修や人事評価制度は必ず各社毎にフルカスタマイズしています。今回はそのフルカスタマイズした30社以上分の研修を1社1社オンライン化させていくことになったため、本音では凄まじく大変であり二度目は勘弁……という気持ちもありますが、
それ以上に、この課題をクライアントさんと二人三脚で乗り越えて、「Values(価値観、行動指針)のようなスタンス系の研修はオンラインでは無理」と言われていた定説を覆すことで得られた自信と喜びは、代えがたい財産となりました。
まだまだ続くオンライン研修への切り替えの波
株式会社ビジネスコンサルタントが698組織を対象に行った調査によると、49.8%の企業が、オンライン研修の実施または導入を決定しているそうです。
また、59.9%の企業は、今後の導入を検討しているという結果も出ていました。
株式会社ビジネスコンサルタント(BCon)|【調査結果】「オンライン研修」実施状況アンケート結果(PR TIMES)より
人はのど元過ぎれば熱さを忘れてしまうものですが、緊急事態宣言が明けたとはいえ、まだまだ不安定なこの世の中。オンライン研修ができる体制を整えておくことは、企業にとって優先すべき事項なのではないでしょうか。
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