「その仕事、明日じゃだめですか?」…あなたは"残業の意味"を部下に説明できますか?
今年の4月に施行された「働き方改革関連法」。ひとしきり人事界隈を騒がせたものの、では各会社で実際に改革が進んだのか…というと、疑問符が浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
しかし、法律ができた・できないにかかわらず、「残業」については、社会の意識がだいぶ変化してきたと感じています。
今回のコラムは、今さらながらの「時間外労働の上限規制」について。これから、会社が残業を命じるには、コミュニケーションが求められるというお話をさせていただきます。
目次
- かつて、会社に尽くして死ぬのは美学だった
- 不満や疲れ…労働者のマグマは噴出した
- 「時間外労働の上限規制」おさらい
- 管理職に問われる「その残業の意味の説明責任」
- フワッとした「どうして?」が転職リスクを生む
- 残業の意味を改めて考える
かつて、会社に尽くして死ぬのは美学だった
「過度な残業は、法律うんぬん以前に、冗談抜きに『人の死』につながる」世の中がそう理解したのが、2016年に明るみになった電通の過労自死事件です。
電通だけの問題ではありません。日本では昔から「たくさん働くこと」がよしとされ、 「過重労働」は完全にポジティブではないにせよ、「耐えるべきもの」「がんばりの証」のようなものでした。「24時間働けますか」というCMが流行し、ネクタイ姿のビジネスマンが颯爽と窓から飛び込んでくるのが「カッコいい」とされていた時代を、覚えている方も多いでしょう。
ときたまニュースになった過労死も、「会社のために尽くして亡くなりました…」という、まるで戦死のようなニュアンスが強かったのではないでしょうか。
不満や疲れ…労働者のマグマは噴出した
しかし、会社がまるで軍隊のようだった時代はもう終わりました。仕事とプライベートは別もので、会社のために働いて死ぬなんてアホらしい、という風潮が生まれています。これは、日本人の中で「働く」の重要度が下がってきたということです。
その風潮を後押しするように、電通事件が起こり、SNSの発達によるブラック企業の内通や告発が増え、労働時間の超過が問題視されるようになりました。実際、過重労働に対する労働者の不満や疲れは、マグマのように溜まっていたのでしょう。
残念ながら、法律は、人の死によって整備スピードがあがるものです。電通事件に後押しされ、今回の働き方改革関連法における「時間外労働の上限規制」ができ、過重労働が日本全体の問題として取り上げられつつあります。
「時間外労働の上限規制」おさらい
@人事を読んでいる人事関係者にとっては「言わずもがな」でしょうが、いったんおさらいをしましょう。
今回焦点となる上限規制ですが、今までなかったわけではありません。36(さぶろく)協定を利用すれば、残業は認められていました。
しかし36協定で決められる残業時間には制限があります。そのため、企業の状況によって残業時間を柔軟に伸ばすため、36協定の特別条項を活用するケースがほとんどです。この特別条項を活用すれば、実質的に残業時間を無制限に伸ばすことができます。
今回の法改正は、そこにメスが入ります。「人を働かせていい時間は、無限じゃないですよ」と、法律が企業に「罰則付き」で突き付けたのです。
※参考:人事が必ずおさえておきたい 労働時間の上限規制と時間管理方法
管理職に問われる「その残業の意味の説明責任」
できた法律を守るのは当たり前として、今後、会社が気を付けないといけないのは、採用・育成面です。これから入社する人材には、「残業をさせる意味」をきちんと説けないと、ひずみが生まれてしまうでしょう。
いま会社にいる中年以上の人材には、「残業=努力」「残業=頑張り」という意識が染み付いているかも知れません。しかし今後は、「残業命令」自体が、かなりネガティブに捉えられる時代になります。
残業そのものは、悪いことではありません。必要であれば行うべき会社としての判断ですが、何が問題かというと、「その残業を命じるのに、明確な理由が必要になった」という点です。
今まで、残業は当たり前だ!何より優先すべきだ!という意識で仕事をしてきた管理職も、部下に対し、「なぜ、この仕事をやらないといけないのか」「なぜ、明日ではダメなのか」を、精神論ではなく具体的に語る必要が出てきたのです。
さらに、
「残業をしてでも成果を出すことが、自分のキャリアにどうつながるのか」
「会社にとって、この残業がどのような意義を持つのか」
「その先にいるユーザーに、どのようなプラスの効果をもたらすのか」
を、仕事のミッションとともにしっかり説明し、納得して取り組んでもらう責任も出てきました。これからの時代の残業は基本「悪」ですから、それを覆すだけの、納得できる理由が求められるのです。
フワッとした「どうして?」が転職リスクを生む
いま、洗脳されたように残業をしている社員も、ある日ふと「どうして俺はこんなに残業しているのか?」と気付くはず。残業をしても成果が上がらない…毎回デートを断っている…という事実を押し込めて会社に従っていても、疑問がフワッと頭に生まれてくるでしょう。
それまで、その人は「残業するのが当然」と思っていたはずです。皆がやっているし、頑張らないと将来も不安だし。しかしここまで世間が「残業ゼロでいこうよ」といいだし、SNSやニュースもそのような風潮になった今、その人は、その気持ちを解消しきれるでしょうか。
会社側は、「理解してもらうだけの理由を示して、残業してもらう」ことと同時に、「残業しない」という選択肢も提示する必要が出てきます。もしその選択肢がなければ、今後は転職リスクが上がるでしょう。また、今まで「残業しろ」の4文字で、定時後の社員を縛っていた管理職は、マネジメントが困難になる可能性があります。
「残業をさせるには、コミュニケーションが必要になった」。これが、「残業が存在する」すべての会社で、これから気を付けなくてはならないポイントです。
残業の意味を改めて考える
コミュニケーションの部分に問題がなく、社員が納得していればよいという単純な話ではありません。残業は常態化します。毎日21:00まで働いていたら、21:00が定時という意識になってしまいます。その時間感覚のバグは、放っておいてはなかなか解消しません。
まずは就業規則で残業のルールを決めましょう。ただし「その都度、残業延長届を出す」のようなルールは、書く方も書かせる方も面倒ですし、すぐに形骸化します。それより「残業の意味」についてのコミュニケーション手段を考える方が、根本的解決になるはずです。
納得できず、イヤイヤ行う残業で、生産性があがるはずはないことは、管理職も理解しているでしょう。もう命令で残業をさせる時代は終わりました。週に1回、もしくは月に1回でも構いません。その残業が会社にもたらすメリット・デメリットと、自分の時間を使い「働く」ことの意義について、会社も社員も、今一度考えてみる必要がありそうです。
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