「最優秀エージェント」受賞企業が伝える採用の秘策【第4回】
コストと工数を最小限に抑える採用手法とは
前回は面接にフォーカスし、常に採用目標を達成している「デキる人事」の仕事ぶりについてお話ししました。
※参照:「マーケ視点」で面接をデザイン! 目標達成している人事の面接とは
今回は、採用コストに着目し、費用と工数を最小限に抑えながら結果を出す採用手法とそのバランスについて考えます。
目次
- 中途採用1人当たりの採用費用は?
- 採用しても、活躍できなければ意味がない
- 多様化する採用手法のメリット、デメリット
- リファラル採用を成功させるには
- 今後活発化する若手採用の手法とは
- 全員人事で、採用難時代を乗り切る
中途採用1人当たりの採用費用は?
株式会社マイナビが実施したインターネット調査「中途採用状況調査(2018年)」によると、2018年の中途採用の予算は平均781.9万円、実績は平均716.9万円という結果になっています。また、営業職採用にかかった求人広告費は1人あたり56.8万円。近年需要が高まっているITエンジニアの場合は同じく79.7万円というデータが出ています。
この結果からもわかるように、さまざまな採用手法が選べるようになった現在でも、従業員数300人以下の企業では主に求人広告を使った採用活動を展開しています。また、採用コストを捻出できないなどの理由から、ハローワークのみで採用活動を実施している企業も多いのではないでしょうか。
求人情報が無料で掲出でき、さらに各種助成金制度を活用できるのは、ハローワークを利用する大きな利点です。しかし、無料といっても求人票の作成や手続きに関わる担当者の人件費は発生しています。それにも関わらず、採用に繋がらない結果になってしまっては意味がありません。
そもそも、各社があらゆる手段を使った積極的な採用活動を行っている中、ハローワークに求人票を出すのみという待ちの姿勢では、満足な結果は得られません。
一方、連載第2回目のコラムでもお伝えした通り、現在は採用と同じく定着率の向上にも注力する必要があります。社員教育や制度の見直しなどにも予算を割かねばならず、その影響から採用予算を縮小せざるを得ないケースもあるでしょう。
採用しても、活躍できなければ意味がない
採用のコストと工数の削減は企業にとって重要な課題ではありますが、中途採用における最重要項目は入社後に活躍する見込みのある人材を採用することです。そのことを踏まえ、必要な人材の確保と、コスト削減を両立できる採用方法について、緊急度に応じて考えてみます。
基本的には自社サイトや無料の求人サイトで必要ポジションごとに求人情報を掲載。通年募集の体制を整えつつ、リファラル採用活性化に向けた施策を同時に進めます。また 「要件に合致する人材がいれば紹介して欲しい」と複数のエージェントにリクエストを出し、同時に情報収集を行いましょう。
早急に欠員を補充しなければならない場合は、採用活動に必要な手間と時間=コストと割り切ります。紹介や派遣などを利用して早急に対応することが望ましいでしょう。緊急事態に会社選びから始めていたのでは遅いので、普段から複数の紹介会社や派遣会社と情報交換しておくことも大切です。
中小企業の採用活動ではハローワークはおろか、有料求人広告のみの利用も今や得策とはいえません。外部コストである広告費に加え、採用担当者の人件費という内部コストを投入しても「採用ゼロ」で終わるリスクがあるからです。
採用開始の情報を開示しただけで応募が殺到するような人気企業、人気ポジションの場合はまだまだ利用価値は大きいですが、それ以外の求人で広告費を回収することは、今後ますます難しくなるでしょう。
紹介会社の利用は採用時に年収の30%程度の手数料が発生します。しかし、採用に繋がらない場合は初期費用がかからないため、低リスクの採用手法であるといえます。近頃は大手の総合エージェント以外にも、業種・職種に特化したブティック型サービスも増加しています。入社後の活躍が見込める人材を紹介できるエージェントを利用すれば、採用のミスマッチや早期離職のリスクを回避できるのもメリットです。
採用活動以外でも煩雑な業務が発生する人事担当者のパフォーマンスを改善する、いわゆるHRテック領域の進歩は年々加速しています。長期的な視点を持ってコスト削減を考えれば、サービスの選定や導入時に発生する手間を差し引いても、試す価値はあるでしょう。
紹介会社や派遣会社からは、最新のHR情報を入手できます。弊社も人材紹介会社ではありますが、勤怠管理や人事考課など、人事・労務関連のご相談を受けることも少なくありません。業務効率化のためにHRテックツールの導入を検討しているが、自社に合ったサービスの選定が困難であるといった場面で、他社事例や業界事情を熟知した営業担当者が持つ情報は、有益なものとなるでしょう。
多様化する採用手法のメリット、デメリット
ここで改めて、採用手法それぞれのメリット、デメリットを整理します。必要人数やポジション、企業の規模や採用予算によって最適な手法は異なります。うまく使い分けて、自社に最適なバランスを探りましょう。
求人広告
メリット
・幅広い層に訴求できる
・広告制作時に自社の強みやアピールポイントの棚卸ができる
デメリット
・初期費用がかかる
・情報が一方通行のため、双方妥協した採用になりがち
・応募多数の場合は選考、日程調整、合否連絡などの手間がかかる
人材紹介会社
メリット
・採用業務をアウトソーシングでき、担当者の手間が省ける
・入社後の活躍までを見越した採用となる可能性が高い
・人事・採用に関する最新の情報が入手できる
デメリット
・採用時に成功報酬として手数料が発生する
・複数の会社と取引するのがベストだが、その分対応に手間がかかる
リファラル採用
メリット
・採用ミスマッチや早期離職のリスクが低い
・採用にかかる外部コストが抑えられる
・離職防止の施策も同時に行える
デメリット
・フローを構築し、一定数の採用を実現するまでに時間がかかる
・競争が起きにくくなり、伸びない組織になる危険性がある。
ダイレクトリクルーティング
メリット
・ピンポイントで欲しい人材にアプローチできる
・採用ノウハウを社内に蓄積できる
デメリット
・スカウト業務などが発生するため採用工数が増加する
・成功報酬のほか、システム利用料などのランニングコストが発生する
リファラル採用を成功させるには
低コストで採用が可能なこともあり、近年注目を集めているのが社員の人脈を元にした採用活動であるリファラル採用です。事前に求職者の人柄やスキルについて把握でき、また社風を理解してもらいやすいことから、急速に確立されつつあります。
リファラル採用を活性化するには、紹介者へのインセンティブ導入や入社後のケアなど、仕組み構築が必要です。しかしそれ以前に、現社員がやりがいをもって働けていなければ、友人や知人に入社を勧めることなどあり得ません。つまり、リファラル採用を成功させるために必要なものは、従業員エンゲージメントの向上、これに尽きるのです。
リファラル採用は前述したようなデメリットもありますが「採用コストの削減」と「定着率向上」という2つの課題を同時に解決できる施策でもあるので、企業規模問わず積極的に取り入れたい採用手法です。
今後活発化する若手採用の手法とは
上記以外にも今後導入・活用が進むであろう採用手法があります。採用コスト削減に繋がるケースもありますので、参考にしてください。
インターンシップ制度
実務を経験することで社風が理解でき、ミスマッチが防げるインターンシップ制度。今後は新卒採用のみならず、中途採用にも広がっていくと考えらます。立ち上げ時のルール整備が煩雑になりますが、フロー構築後は有用な採用手法として定着するでしょう。
出戻り再雇用
退職した社員を再び受け入れる形での採用です。一旦退職した会社への再入社を決断する社員は、愛社精神がより高まる傾向にあることから、即戦力として活躍する可能性大。また、外の世界で得た知見が持ち込まれるため、社内業務の活性化が期待できます。
人材業界経験者の採用
これまで積極的に中途採用を行っていなかった中小企業が一転して「攻めの採用」を実践するのは難しいのが現実です。そのため、紹介会社など人材業界出身者を新たに採用し、人事部を再構築する企業が増えています。スタートアップ企業などで人事・採用業務を経験した優秀な人材が増えていることから、今後は20~30代の若手採用担当者の活躍が期待できるでしょう。
全員人事で、採用難時代を乗り切る
明けのタイミングで転職を!と考える求職者は多いもの。逆算すると、秋には本格的に転職活動を始動する必要があり、これから年末にかけてはまさに転職市場が活発化するシーズンです。
採用担当者にとってもここからが正念場。早い段階から役職者の面接予定をブロックするなど先回りして計画を立て、率先して社内を巻き込んだ「全員人事」で目標を達成しましょう。
ここまで4回にわたり若手採用のトレンドと秘策についてお伝えしてまいりました。本連載が採用活動の一助となれば幸いです。
第5回につづく
【第5回】不人気業種、地方の中小企業経営者が取るべき採用の施策とは
連載記事一覧(第1~4回)
https://at-jinji.jp/provider/column/554
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