2019年度新入社員のホンネから紐解く
新卒採用・新入社員教育で、本当に必要なのは「バリュー」だった
期待や希望を胸に抱き4月に入社してきた新入社員が、日を追うごとに意欲をなくし、やがて早期離職につながってしまう。そんなケースを目にしたことがある方は少なくないはずです。
その原因は、採用と教育の方針にあるかもしれません。
そこで今回は、新入社員を対象に2019年3月から5月にかけて独自に実施したアンケートの結果を公開したいと思います。アンケート結果から見えた2019年度新入社員の春時点での傾向と、次年度の採用、教育に有効な対策について解説します。
普段社内では言いづらい本音を含む、新入社員の生の声をお伝えします。本レポートが、新入社員育成のための参考になれば幸いです。
《調査概要》
●調査目的:
2019年度新入社員の方々が入社当初に抱く会社や仕事に対する考え方・傾向を知り、社内教育の一助となること。
●調査対象:
2019年度新入社員(有効回答数:697名)
●調査期間:
春 2019年3月1日(金)~2019年5月31日(金)
●調査方法:
アンケート用紙を配布し、各人の匿名性を保証した上で回答を依頼した。
2019年度新入社員の傾向2019年度新入社員が持つ4つの傾向
この度のアンケートから確認できた2019年度新入社員の傾向は、主に以下の通りです。
①入社前から転職予定。全体の約半数が5年以内の転職を視野に入れている。 ②就職先は「人」と「雰囲気」で決める。 ③入社当初のモチベーションやロイヤリティには、事業内容や具体的な業務より「人間関係」と「先輩の魅力」が影響する。 ④空気を読んで行動する傾向があり、「他社員からの評価」を気にする。ルールや正解といった、「明確な判断基準」を求めている。 |
傾向①入社前から転職予定。全体の約半数が5年以内の転職を視野に入れている。
今の会社での予定勤続年数を伺ったところ、「1年未満」、「1~3年」、「4~5年」と回答した割合の合計が全体の約半数を占める結果となりました(49.0%)。
ただ、その理由を見てみると明確な何かがあるわけではないため、入社後の教育で変えることができると言えそうです。“キャリアアップといえば転職”というあいまいな気持ちから回答している方が多く見られました。
②就職先は「人」と「雰囲気」で決める。
今の会社に入社を決めた理由を伺うと、表向きの理由では「事業内容」が27.3%と最も多く選ばれましたが、本当の理由では13.7%とほぼ半分に減り、二番目となりました。その代わりに、「社員の人柄」が本当の理由として最も多く選ばれています。
また、「理念・社風・企業文化」と回答した方多く、こちらは表裏共に三番目に多い回答でした。
実際の仕事内容についての理解がまだ乏しいため、選考段階でもイメージのつきやすい「社員の人柄」や「理念・社風・企業文化」が決め手となるようです。
③入社当初のモチベーションやロイヤリティには、事業内容や具体的な業務より「人間関係」と「先輩の魅力」が影響する。
今の会社での仕事は楽しそうだと思うかを伺ったところ、「とても楽しそう」、「楽しそう」と回答した割合の合計が8割を超えました(83.8%)。なお、どの選択肢を選んだ場合でも、社内の人間関係や先輩、上司への印象といった、『人』を理由に回答している方が多く見られました。
また、会社を自慢する際のポイントを伺ったところ、やはり「人間関係・他社員について」が最も多く挙げられました(26.6%)。
理由を見ると、既存社員に活気があることや仲の良さ、距離の近さを感じられることが、会社の好感度につながっていることが分かります。
反対に、会社に対し不満を持っているポイントを伺ったところ、「まだ無い・分からない」が最も多く、続く2、3番目には「労働時間・休日」「報酬・福利厚生」等の待遇面が多く挙げられました。
一方で、自慢したいこととして最も多く挙げられていた「人間関係・他社員について」を、不満として挙げる方が約1割いました。理由を見ると、入社前の説明不足やコミュニケーション不足から来ているものが多いことが分かります。こうした不満は早期離職の理由としても多く挙げられるため、早めに解決しておく必要があります。
複数の調査項目によって、会社のことがまだよく分からない時期は、人や待遇といった目に見えるもの、比較しやすいものに良くも悪くも注目が集まりやすいということが示されています。
中でも『人』による影響力が元も大きく、入社から数ヶ月間のモチベーションとロイヤリティはほぼこれによって左右されていると言えます。
④空気を読んで行動する傾向があり、「他社員からの評価」を気にする。ルールや正解といった、「明確な判断基準」を求めている。
働くことに関する不安や悩みを伺ったところ、「自分の能力・成長」「漠然とした不安」「知識不足」といった、“分からないこと”に対して不安に感じる方が半数以上を占める結果となりました(51.2%)。
理由を見ると、『人』から影響を受けるだけでなく、『人』にどのような影響を及ぼすか、すなわち直属の先輩や上司との関係性や、他社員からの評価についても重要視していることが分かります。
空気を読むことが得意な反面、正解を引けない見つけられないことに不安を感じやすく、場に馴染めるか、ルールを守れるかが気になるようです。
多くは時間が解決してくれる問題とはいえ、モチベーションダウン、ひいては生産性や成長速度に支障をきたすため、早めに解消しておく必要があります。
次年度の採用と教育は『バリュー』をメインに
改めて2019年度新入社員の傾向をまとめると、以下の4つになります。
①入社前から転職予定。全体の約半数が5年以内の転職を視野に入れている。 ②就職先は「人」と「雰囲気」で決める。 ③入社当初のモチベーションやロイヤリティには、事業内容や具体的な業務より「人間関係」と「先輩の魅力」が影響する。 ④空気を読んで行動する傾向があり、「他社員からの評価」を気にする。ルールや正解といった、「明確な判断基準」を求めている。 |
上記の結果から、新入社員の定着と生産性向上には『バリュー(価値観・行動指針)』をメインとした採用と教育が必要であると考えます。
そして、新入社員だけでなく、普段の業務で関わりの多い先輩・上司に、全社統一された明確な判断基準である『バリュー(価値観・行動指針)』を再度浸透させることが必要であると考えます。
※参考:なぜ今、ビジョンよりもバリューが注目されるのか?
主なポイントは以下の4つです。
1.アプローチと採用基準にバリューを絡めること。
会社の目標、業務内容等は、時代の流れに合わせて変化しやすいものです。
これらを軸に学生へのアプローチを行うと、内定から入社までの期間に何か変化が起きた場合、「内定承諾時には知らなかった」「予定していた業務と違うことをやることになった」「魅力を感じていたポイントが無くなってしまった」といった問題(ネガティブなギャップ)を引き起こしかねません。
※参考:早期離職はコミュニケーションで防げます! 新入社員の本音から導く4つの対処法
一方バリューは時代や環境といった周囲の影響を受けにくいものです。これを軸としたアプローチを行えば、入社後に感じるネガティブなギャップを減らすことができます。
また、バリューは“自社が求める人材を言語化したもの”とも言えます。これを採用基準とすれば、役員や人事担当以外の社員にとっても納得度が高い採用を行うことができます。
2.バリューを軸に丁寧に説明し、納得を促すこと。
毎年「新入社員のタイプ」を発表している産労総合研究所によると、2019年度新入社員は「AIスピーカータイプ」とのことです。
・自分の意志を表に出さず、能動的に動くことは少ない。しかし、内部には自らの考えと可能性を秘めている。
・丁寧に教え、理解させればしっかりとした仕事をしてくれる期待感がある。
という特徴から命名されています。
※参考:「2019年度の新入社員は「AIスピーカータイプ」…上司はどう接したらいいか聞いてみた」FNNPRIME
したがって、ただ提示するのではなく、背景等を踏まえて丁寧に説明し納得を促す必要があるのです。
例えば、アンケートにて提示された「労働時間・休日」「報酬・福利厚生」等の待遇面に対する不満は、入社前にきちんと説明することで度合いを下げることができます。さらに、人には“自らで行った選択を正解であると思うようになる”という思考が備わっています。
そのため、事前にしっかりと説明し、「納得の上、自分で選んだ」という自覚を持った上で入社してもらうことができれば、後々不満として挙がりにくくなるのです。この部分は個々の都合で簡単に変更できるものでは無いので、入社後に不満として表れても対応が難しい場合がほとんどです。
少々手間に感じるかもしれませんが、早期離職の防止に有効な一手であると言えます。
3.既存社員のバリュー浸透度を高める。
入社の決め手や、入社当初の新入社員に最も影響を与えるのは『人』です。「何をするか」より「誰とするか」に重きを置いています。社内の人間関係や、先輩、上司の魅力が新入社員のモチベーションにそっくり影響するものと思って差し支えありません。
人事担当はもちろん、他の既存社員も見られている意識を持っておく事が必要です。中でも、教育担当になった方は特に気を使う必要があります。
入社当初というのは、知識不足により物事を多面的に捉えることが難しい時期です。伝え方のニュアンスが違うだけでも「言っていることが違う」と思われかねません。その場のコミュニケーションに支障が出るだけでなく、そうした不満は人間関係構築にも影響します。
人は何を言うかよりも誰が言うかを重視する傾向があるため、教わる側の傾聴度が下がり、教育を進めづらくなるのです。それを防ぐためにも、まずは教える側の意識を統一させることが必要なのです。
4.入社後の教育はバリューから行う。
全社員に共通した明確な判断基準、すなわちバリューを示すところから教育をスタートすることには、
・指示の真意をつかみやすくなり、コミュニケーションが円滑になる
・自分で考えて行動できるようになるまでのスピードが上がる
・“分からない”ことによる漠然とした不安が減る
等のメリットが多数あります。
2019年度の新入社員は、“言われたことを言われた通りにやる”能力が特筆して高い反面、背景の深掘りや関連付けといった部分が少々不得意な傾向があります。
そのため、バリュー中心でなく、複数の教育担当から個人的な思考や方法をメインに教育を受けた場合、その下地になっているバリューの存在に気付くのに時間がかかってしまい、行動がちぐはぐになってしまいかねません。
以上の通り、新入社員の定着と生産性向上には、『バリュー(価値観・行動指針)』をメインとした採用と教育、および、先輩・上司に『バリュー(価値観・行動指針)』を再度浸透させることが必要であると考えます。
バリュー浸透が「早期離職防止」「生産性向上」につながる
これらのポイントをふまえた施策を自社のみで行うには限界があります。この度の調査においても、第三者が実施しているアンケートの中でなければ言い出すことのできないような本音が多々見受けられました。
弊社は、こうした調査による新入社員様の声や、科学的根拠に基づくオリジナルメソッド(情熱マネジメント®)を用いて、バリューを社員一人ひとりに浸透させるための研修を個社毎に開発しております。
■情熱マネジメントとは:http://www.jyounetsu.co.jp/blog/post/4967 |
社員の皆様に『自社の理念や行動指針を体現し、生産性高く働き、成長や幸せを感じてもらいたい』とお考えでしたら、ぜひ一度お話をお聞かせください。
年々、新卒の有効求人倍率が高まり、企業は空前の採用難となっています。にもかかわらず採用できた貴重な新入社員様の早期離職防止・生産性向上は、大きな経営課題と言えます。
本調査が、その解決の一助を担えておりましたら幸いです。
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