組織のレベルアップとバリュー浸透が一度に叶う「社内イベント」のつくりかた
任意・強制の違いはあれど、朝礼、社員旅行、全社総会、部署飲み会、打ち上げ、誕生日会といった、何かしらの社内イベントを行っている企業は多いと思います。
皆さんのところには、どんな社内イベントがあるでしょうか?そして、社員はそのイベントに対し、どのようなイメージを抱いているでしょうか。
行うからには、形骸化した退屈なものを繰り返すのでは意味がありません。それどころか「飲みニケーション」という言葉がネガティブに捉えられるといった、ビジネス上での人間関係がどんどん希薄になっている状態を鑑みると、予算は無駄になり、かつ社員のモチベーションが下がるという本末転倒な結果を招くことさえ予想されます。
ですが、そんな今だからこそ、ポイントを押さえて『意味のある社員イベント』を行うことが必要なのです。そこで今回は、『意味のある社員イベント』を行う上で気を付けるべきポイントをお伝えします。
目的の明確化によって、社員のモチベーションを喚起する
社内イベントが行われている目的を明確に理解しており、即答できる人はどのくらいいるでしょうか。今読んでいるあなたは、「朝礼は何のためにやっているの?」「部署飲み会の目的は?」といった質問に対しての明確なアンサーを持っていて、即答することができますか?
全社員が答えられる状態ならば、社内イベントに対しネガティブな感情を持っている人がいない、もしくは他社に比べ大幅に少ない人数に留められているのではないでしょうか。なぜなら、人間は目的を確認できると“やらされ感”が減り、主体的に取り組むことができると言われているからです。
「目的」について研究をしているデイヴィット・イェーガーとデイヴ・パウネスクが行った実験によると、
①どうしたら世の中はもっと良くなると思うか ②今、学校で習っていることの中で、そのために役に立ちそうなことはあるか |
という2つの質問を受けた生徒は、受けていない生徒に比べ、
・試験勉強の時間が2倍に増加 ・エンタメ映像を見るか? 数学の問題を解くか? の選択肢に対し後者を選択する割合が多い |
という結果が出たそうです。このように、物事の先を想像し、目的の明確化ができると、「やろう!」という気持ちになりやすいのです。
「嫌々飲み会に参加する……」「行きたくないけど社員旅行に行く……」「意味が分からないけど、参加しないと気まずいから朝礼に参加する……」など、社員イベントに対するモチベーションが低い社員が多い場合、まずここから確認してみることをお勧めします。
「社内イベントは意味がない」のではなく、「意味がない社内イベントを行っている」
上記の通り、目的の周知が行われていないと、会社がせっかく予算をつけて「社員の皆に喜んでほしい」「仲間意識を高めてほしい」といった想いで社員旅行を企画しても、「強制ですか?」「全額会社持ちなら行ってもいいですけど……」といった悲しすぎるコミュニケーションが発生してしまう確率が高くなります。
たとえ任意参加であったとしても、「任意でも参加しないと気まずい」「自分だけ仲間はずれになっちゃうかも」といった感情を持つ人は少なくありません。
JTBワーク・モチベーション研究所がまとめた“社内イベントに関するコミュニケーション調査”では、経営者が考える社内イベントの効果として、
①社員や部門間での“コミュニケーション”に関する効果 ②社員の“モチベーション向上”に関する効果 ③“組織の理念やビジョンの浸透”に関する効果 |
を挙げていました。
※参考:社内イベントに関するコミュニケーション調査(JTBワーク・モチベーション研究所)
これらの効果を得られること認識し、社員にもそれを伝えることで、『意味のある社員イベント』にすることができます。例えば③で言うと、「仕事も遊びも全力で」という価値観(バリュー)を持っている企業が、その価値観を体現しつつリフレッシュするため、年に2回、必ず全社員で海外旅行に行く、といったものです。
社内イベントを行うことで得られる3つの効果
先ほど挙げた3つの効果について深堀りをしてみましょう。
【1】社内のコミュニケーションを増やし共感度を高めることで、「賢い集団」になる
社内イベントを利用して社員や部門間でのコミュニケーションを増やすと、このような効果を得ることが出来ます。
アメリカのカーネギーメロン大学で、賢い集団とそうではない集団を分ける要因は何か、という研究が行われました。すぐに思いつくのはIQの高さですが、
・メンバーのIQの平均値が高い集団ほど高いパフォーマンスを発揮する ・メンバーのIQの最高値が高い集団ほど高いパフォーマンスを発揮する |
という仮説を立てたところ、どちらも成立しませんでした。
最終的に鍵を握っていたのは、メンバー同士の“社会的感受性の高さ”でした。要は、“互いに共感し合っている集団ほど賢い”という結論です。他にも、全員が等しく発言している集団の方が賢いことが分かりました。
※参考:RMS Message vol.54(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)
共感は支え合いの原点であり、それなくして支え合いは成立しません。そして、支え合うことが出来ている集団ほど、より良いパフォーマンスを発揮することが出来ます。そして、この『共感度が高く、互いが互いを支え合う関係』をつくるのに最適なのが、社内イベントなのです。
【2】社員の自己有用感を高めることでモチベーションを上げる
社内イベントは、上手く利用することで社員のモチベーションを上げることもできます。
人には『自己有用感』というものがあります。これは、「属している集団の中で、自分は誰かの役に立つことができている」という感覚のことです。この自己有用感が低いと、
・すぐに諦めるようになる。挫折しやすくなる ・幸福度が低くなる |
といったことが起きます。
※参考:マズローの欲求5段階説をこの上なく丁寧に解説する。あなたの欲求はどのレベル?(自分コンパス)
人は、自分のためだけに頑張るということが極端に苦手です。そのため、誰かの役に立つことができていると思えないと、誰も見ていない場では頑張れなかったり、サボってしまったりするのです。
また、人には“所属と愛の欲求” というものがあり、人とのつながりの中でしか生きられません。その証拠に、ハーバード大学の調査によると、幸福度が高い人は人間関係が良好だという結果が出ています。
自己有用感は、誰かの存在を通してでしか感じることが出来ないため、「自己有用感が低い→人間関係が良くない→幸福度が低い」ということになってしまうのです。そんな自己有用感を高めるには、『自分の居場所と役割を作ること』が必要です。
※参考:3分でわかる!自己有用感を高める5つの方法(天才発掘塾)
ですが、普段の業務では先輩や上司等、役職が上の人にお世話になる機会が多いため、なかなかそうはいきません。
そこで、プライベートな状態に近い「社内イベント」という場を用意し、普段発揮することが出来ない能力を使える機会を作るといいのです。「斬新なサプライズ案がどんどん浮かぶ」、「アウトドアや料理のスキルが高い」、「プレゼントやお店選びのセンスが抜群」など、役職や年齢に関係しない能力をお持ちの方も少なくありません。
また、業務の担当範囲次第で埋もれてしまう能力というのもあります。この場合は、業務に結び付けたフィードバックを行ない、仕事の場でも能力を活かせるように促しましょう。
例えば……
普段はサポートに回ることが多い社員に、社内でのBBQイベントの幹事を頼んだところ、先頭に立って動くのも得意なことを知った。 そこで、「BBQ企画でのリーダーシップは素晴らしかったよ! 仕事でも是非発揮してほしい!」と伝え、プロジェクトのリーダーを任せることにした。 |
といった具合です。
【3】ミッションやバリューの浸透の場になる
社内イベントは、ミッションやバリューの浸透にも効果を発揮します。ミッションやバリューの浸透には、
①全員が共有できるように“言語化”し、 ②効果的な場を設け“共感”を得て、 ③“内在化”させるための仕掛けを設ける |
という3つのプロセスが必要となります。
また、リクルートマネジメントソリューションズの調査によると、ミッションやバリューの浸透が軌道に乗った企業には、以下の4つの共通要件があることが分かったそうです。
①上層部が先頭を切ってコミットすること。 ②経営理念に沿ったエピソードをシェアしたり、表彰したりすること。 ③周知のための媒体を作り、それを伝える人を用意してプロモーションをすること。 ④アンケートの実施や人事評価への組み込み等、内在化する仕組みを導入すること。 |
※参考:経営理念(ミッション&バリュー)はなぜ浸透しないのか?(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)
これらのプロセスや要件を満たすには、朝礼や社員旅行、全社総会、部署飲み会、打ち上げ、誕生日会といった社内イベントが大変有効となるのです。例えば、
・全社総会で、経営理念の再周知を行い、理解を深める ・朝礼で、経営理念に関するエピソードをシェアし合い、共感を深める ・上層部が、飲み会で、経営理念が決まった経緯について思い出を交えつつフランクに共有する ・経営理念にコミットできているか否かを人事評価の項目にし、イベント等の場で表彰する ・経営理念(特に行動指針)を体で理解できるイベントを開催する |
このような施策により、ミッションやバリューを効果的に内在化させることができます。
社内イベントは、目的を明確にすれば「バリューの浸透」にも有効な場になる
実力より年功序列、定年まで勤めるのが当たり前だった80年代までは、社内の人間関係への配慮を欠かさないことが、より良いキャリアを積むための必須条件でした。
ところが、バブル崩壊を経て成果主義や転職が当たり前になってきたことで、社内の人間関係に配慮するよりも自らの成績が重要視されるようになった今日。合理性や効率性を追求していくことで失われてしまいがちな、『互いが互いを支え合う関係』を意図的に作らなければならない時代になったのです。
そんな今だからこそ、会社が社内イベントという場を提供し、社員同士の関係を良好にしていくことが重要となるのです。
また、経営や採用、育成の方針として、ビジョンをメインにした戦略では勝てなくなってきている近年。ビジョンに注目が集まり始めたものの、まだまだその浸透につまずいている企業が多いのが現状です。
※参考:なぜ今、ビジョンよりもバリューが注目されるのか?
これに対し、株式会社GOの代表である三浦氏が『Mission / Vision / Value の“創り方”』というイベントの中で、「あらゆる抽象概念は行動に微分できるので、その行動のチェックリストというかルーツを仕込んでいくと、割と(浸透を)速められる」ということや、「単純に社内の評価としてフィードバックすると、行動に移っていく」という話をしていました。
※参考:Mission / Vision / Valueをいかに速く浸透させるか?効果的なのは「経営者の発信」と「評価制度」(logmi)
バリューに沿った行動を体で覚えたり、社内からの生の声をもらったりすることで会社のバリューを社員にリンキング(連結)させるには、社内イベントという場が最も有効となるのです。
今回は、意味のある社内イベントを行うポイントと、社内イベントによって得られる効果について紹介しました。これらの効果があることを認識した上で計画を立て、目的を周知することで、貴社の社内イベントが今までよりも効果の高いものとなれば幸いです。
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