組織能力向上エンジンとしての人財部門へ

今後は、行動定着よりも相互作用! キーパーソン・人財部門の役割は?

「効率追求」の姿勢が有効なのは、自組織が、「今後の需要などについて予測が立てやすいビジネス環境にある」という認識が適切な場合です。一方、急増してきているのは、自分たちがVUCA※1なビジネス環境にあると認識している組織です。こういった組織では、『自ら変化を創出』したり、(ニーズやウォンツの多様化※2、技術の進展などに伴う)『市場の変化に素早く適応』したりすることが求められます。あなたが所属する組織の人財部門では、『経営陣と緊密な連携』を取りながら、『状況認識の擦り合わせ』をされているでしょうか? 今回は、「将来予測がほぼ確実な環境」と「VUCAな環境」で求められる『組織能力を向上させる取り組み』では、何がどう異なるのか、人財部門やキーパーソンには何が求められるのか、主要なポイントについて整理してみましょう。

表:「『状況認識』の違いによって、『組織能力を向上させる取り組み』の内容は変わる」は、「将来予測がほぼ確実なビジネス環境」と「VUCAなビジネス環境」で求められる『組織能力を向上させる取り組み』 の違いについて整理したものです。 そして、端的に言えば、この表で左列右列を分けているのは、『予測可能性』です。

左列(予測可能ビジネス)右列(予測困難ビジネス)の相違を象徴する例としては、例えば、次のようなものが挙げられます。

A行の左列には、「JIS(日本工業規格)マークがついていて、『与えられた条件の下で、所定の期間、期待通りの性能を発揮してくれる製品』を提供するビジネス」などが当てはまり、A行の右列には、「選択肢やリスクなどについて説明された患者が、(医師が患者を必ず健康な状態に戻すと確約できなくても、許容範囲のリスクを受け入れて)外科手術の実施に同意する形で成り立っているビジネス」などが当てはまります。

(文字数に制約があるため、表で挙げた項目のひとつひとつについて詳しくは述べませんが、多かれ少なかれ、どれも『予測可能性』と関係しています。 B・C行の左列からは『特定の依頼を待つ姿勢』、右列からは『曖昧なウォンツを明確なニーズに変える関わり方』を感じ取っていただけるでしょうか。
F・G行については、図解:『閉鎖系』と『開放系』の働き方イメージ例をご参照のうえ、他社とは『競争』していればよいのか、『協働』しなくてはいけないのか検討なさってみてください。
H行の左列では、「状況や相手にかかわらず、『特定の行動』を取ればよい」という姿勢が有効でも、右列では、「相手から『望ましい反応(相互作用の結果や成果)が得られるまで、柔軟にアプローチを変える』のが大切」という姿勢が求められます)

電気・ガス・水道などのインフラ関連事業のように、「多数の人々の最大公約数的なニーズを一定の水準で満たす」ことが重要なビジネスや、コンビニエンスストアをはじめとする各種フランチャイズ・ビジネスなどでは、「標準化」との相性が良く、今でも左列に軸足を置いた組織能力向上の取り組みが広く行われています。

他方、近年では、「画一的で、中途半端な満足度しか生まない『顧客』向けビジネス」よりも「好みなどが異なる相手1人1人に高い価値を感じていただけるようにと、『個客』を志向したビジネス」が求められるようになってきている背景もあって、右列の重要性が増してきています。

コンセプト・アウト&ディマンド・イン※3といった言葉もありますが、右列で重要なのは、『状況分析や適切な課題設定、状況対応』を可能にするような深さ・頻度の『対話』です。 あなたが所属されている組織では、個々人の主体的な努力に頼るだけではなく、組織として、持続的な対話の場を設けていらっしゃいますか?

また、『組織の目的』を踏まえた上で、『ビジネス環境の現状や変化をうまく察知』し、事業戦略の立案や推進に活かせるよう、キーパーソンの『状況認識力』や、『適切に問題・課題・目標を設定する能力』を高め、『周囲の人々を束ねて導けるようなコミュニケーション』を体得できるように育成していらっしゃるでしょうか?

『経営陣と緊密な連携』を取って『状況認識の擦り合わせを持続的に行う』ことが求められる今、人財部門やキーパーソンには何が求められるのか、是非検討なさってみてください。

※1 VUCA
混沌として先が読めない状況を指す表現。Volatility変動性, Uncertainty不確実性, Complexity複雑さ, Ambiguity曖昧さ の頭字語がVUCA。

※2 ニーズ(needs)とは、顕在化した欲求のこと。 ウォンツ(wants)とは、本人が明確に意識していない、言語化や概念化がなされる前の、潜在的な欲求のこと。

※3 コンセプト・アウト&ディマンド・イン(concept-out & demand-in)
市場に(製品やサービスの)「構想」(concept:コンセプト)を提示し、その反応から市場の「要望」(demand:ディマンド)を推察し,市場の要望を満たすであろう仮説を基に製品やサービスを開発するアプローチのこと。 製品やサービスをメディア(media:媒介物)とした、「市場と企業(取引先など、さまざまな関係者を含むエコシステムの場合もある)の対話」と解釈されることもある。

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