外国人雇用とどう向き合うか Vol.2
特定技能試験に応募者殺到、技能実習制度の講習も満員。現状から見える外国人受け入れのこれからの課題
2019年4月に改正出入国管理法(以下、改正入管法)による新しい在留資格「特定技能」が創設されて2カ月が経過した。4月には全国各地で介護・宿泊・外食の3分野で技能試験が開催され、特に外食分野で応募が殺到して日程が追加されるなど、注目が集まっている。
特定技能の在留資格の創設に対しては「制度の検討期間が短すぎないか」「実質、移民制度ではないのか」などという懸念の声もある。外国人労働者を受け入れている現場での状況はどうなのだろうか。技能実習制度の養成講習の講師で、特定技能制度をはじめとした外国人雇用の専門家の永井知子氏に現状と課題をうかがった。
永井知子 特定社会保険労務士
コスモポリタン インターナショナル HRソリューションズ代表。青山学院大学大学院 法学研究科 ビジネス法務専攻 人事労務コース 修士課程修了(ビジネスロー)。イギリスで語学留学後、外資系企業の人事部やアウトソーシング会社にて10年以上勤務。主に給与計算・社会保険事務・就業規則見直し・労務相談等の業務を担当。海外赴任に伴う給与計算・社会保険事務、外国人の労務管理等専門誌で多数執筆。
特定技能の試験は募集すぐに満席に。ベトナムの増加率が目立つ
技能実習制度に関するさまざまな養成講習の講師をしている永井です。現場の募集の様子や、現状をお伝えしたいと思います。
まずは新しく創設された在留資格「特定技能」からお話します。さっそくこの4月から資格取得に必要な技能試験が3分野でスタートしました。
特定技能の技能試験は満席で、全ての試験が募集後にすぐに定員に達する状況です。受験者の出身国としてはベトナムやミャンマー、ネパールが大半を占めています。
特にベトナムでは近年、日本での就労を希望する人がめざましく増えており、厚生労働省が発表した外国人雇用状況によるデータでも外国人労働者の増加率はトップとなっており、技能実習制度でも半数がベトナムからの実習生となっています。既に技能実習を修了して帰国した元実習生で、特定技能の在留資格を取得し、また日本で働きたいと考えるベトナム人も多いという話もよく聞きます。
世論では、特定技能の在留資格による外国人度労働者の受け入れに対する懸念の声もありますし、技能実習制度については法令違反や劣悪な労働環境などが報道されることも多い中、日本での就労を引き続き希望する外国人が多くいることは、素晴らしいことです。
技能実習制度の養成講習も人気。参加者の意識の高さが特徴
技能実習制度は、2017年に大改正が行われ、全ての監理団体や受け入れ企業の責任者に法定講習を受講する義務が課せられました。私も講師を務めているこの講習は全国各地で開催されていますが、満席になることも多く、追加開催も頻繁に行われている状況です。
この法定講習の受講者が多いのは、現在では外国人労働者全体の20%が技能実習生ということもありますが、新規で技能実習制度への参入を検討している監理団体や受け入れ企業の数が増え続けていることも大きな理由のひとつであり、外国人技能実習制度の人気が高いことを日々体感しています。
受け入れる企業側である受講生からは「技能実習生を受け入れてから業績が上がった」「実習生を受け入れて本当に良かった」という意見も多く聞かれます。「労働意欲のない日本人よりも、一生懸命働いてくれる技能実習生の方がいい」という意見を聞くこともあるくらいです。
介護の分野で技能実習制度に参入するため講習に参加される人も増えています。技能実習の現場の状況がまだわからないために不安を感じている人もいますが、講習で必要な法令について学べますし、休憩時間中にベテランの受講生から生の意見やアドバイスをもらい、その後も受講生同士で情報交換をしている例も多いです。
技能実習制度や労働法関連について受講生たちの意識が高いことも特徴です。受講生からは働き方改革による有給休暇取得のルールや時間外労働についての考え方など、さまざまな内容で鋭い質問を受けることもよくありますし、技能実習生との接し方について相談を受けることもあります。技能実習制度についてネガティブな報道を聞くことも多いですが、実習生に真摯に向き合っている人達もたくさんいることを、多くの方に伝えたいと思っています。そうした事例が取り上げられている、下記の団体のセミナーなどもあります。
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マイナスイメージは制度の中身や実態を知られていないことから起きる
外国人雇用については、賛成意見から懸念を示す意見までさまざまな声が聞こえます。法令違反の報道がされることもあり、技能実習制度や外国人雇用そのものを否定する人が多いのも事実です。しかし否定派の中には、制度についての詳しい知識がなく、よって状況分析も正しくできていないのに、悪い報道が流れてくるからその制度は良くないのだろう、と決めつけている人も多くいます。
報道されている内容についても不透明なものも多いです。例えば、「日本全体での労災死亡率は10万人当たり1.7人であるのに対し、技能実習生の労災死亡率は10万に当たり3.7人、よって実習生の労災事故は倍以上」という報道例がありましたが、そもそも実習生が従事する職種は建設業や製造業が多いですから、労災事故率を比較するのであれば、業種などの条件を調整して分析しなければ意味がありません。
仮に「技能実習生の労働条件が良くない」という報道を見たり聞いたりした場合、そのままうのみにするのではなく、「最低賃金法は守られているか」「雇用契約書の労働条件はどう書かれていたか」「実習生に説明はあったか」「同じ職場の日本人の従業員の労働条件はどうか」など広い視野でとらえ、実態を冷静かつ的確に判断する必要があります。その上で是正すべき部分については徹底的に正すべきです。
外国人雇用の拡大は、批判よりも発展的な改善に向かうべき
そもそも外国人を受け入れることとなった経緯として、「現場で必要性があり、外国人労働者側の日本に対する希望や期待もあるからこそ制度の活用が急速に広まっているのだ」という原点に立ち戻る必要があります。ネガティブな報道があるからという曖昧な懸念で、代替案も考えずに安易な制度批判をすることは、何の解決にもなりません。そうした行為は、日本の社会が抱える根本的な課題を放置するどころか、後戻り不可能な袋小路に追い込む行為であることを直視すべきです。
日本における、少子高齢化の問題を認識していない方はいないでしょう。歩道を歩く高齢の方の数は増え続け、経営において最も問題なのが事業承継であり、福祉が最大の成長ビジネスであるという身の回りの現状を知らない方はいないでしょう。少子高齢化は今後も進んでいきますし、このままですと日本の労働力人口は落ち込む一方です。テレビを見ても、外を歩いても、店に入っても、新聞を見ても、そうした情報は満ちています。そんな中、問題から目を背け、単なる印象論で外国人雇用の制度を批判する風潮が見られることは残念なことだと思います。前述のとおり、外国人雇用ではさまざま問題もあり、それは放置してはいけないのは当然のことですが、日本が抱える問題の解決策を出すわけでもなく、第三者的に排外的な批判をするだけではいけないと思います。
そうした中でも、日本での雇用を目指す外国の若い方が多く居てくれることは、どれほど心強いことでしょうか。日本で働きたいと思ってくれる海外の若い方々の熱意をまっすぐに受け止め、問題がある箇所は誠意を持って対応し、長期視点で発展性に満ちた関係を形成していくために一人一人ができることをすべきです。
曖昧な批判をしても意味はなく、発展的に改善をしていくべき。日本は既にそういう時期に来ています。そして、そうした時代の要請によってできたのが特定技能制度を含めたさまざまな法改正なのです。日本の将来の発展のために、文化や人種を超えて、前向きに進んでいくことが求められていると思います。
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<外国人雇用とどう向き合うか Vol.1>
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