外国人雇用とどう向き合うか Vol.1

特定技能制度 ・技能実習制度のあまり知られていない本当の目的

2019年に入ってから、外国人の労働制度について報道される機会が増えている。
改正出入国管理法(以下、改正入管法)が4月に施行され、新たに創設された特定技能制度で初めての試験が行われたという報道や技能実習制度の実態についての報道も多い。さまざまな意見が飛び交っているものの、それぞれの制度の目的や課題点の理解が浸透していないのが現状だ。

外国人雇用について、東京都社会保険労務士会の松井勇策氏が深掘りするこのシリーズ。1回目は制度のそれぞれの目的について見解を述べてもらった。

松井 勇策 (社会保険労務士・産業カウンセラー・Webアーキテクト)

東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング社会保険労務士事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。IPO支援、労務監査等の人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。

外国人雇用を取り巻く制度の方向性

外国人雇用について報道が増えている中、制度趣旨の情報が少ない状況であることが気になっています。 外国人の労働に関する法律や制度は、今後の日本社会に大きく関係することは明らかです。制度趣旨を見ていくと、こうした制度を活用して企業の目指すべき方向性も見えてくるはずです。

改正入管法では新たに特定技能の在留資格が創設されました。特定技能制度の趣旨としては、現在の技能実習制度をより拡大していく「接続した制度」だと言えるため、まずは技能実習制度から見ていきます。

1.技能実習は国際的な経済発展を可能にする制度として作られた

技能実習制度が法施行されたのは1992年。今年で27年目となり、ずいぶん古い感じがする方も多いかもしれませんが、制度趣旨通りの正しい活用がされれば、まさに今後の日本経済や社会の発展をもたらすことのできる制度であると言えます。80年代後半からのバブル期の時期は、日本では30万人を超える不法就労者があふれていたと言われています。当時は全産業が人材不足であり、アジア圏では人余りの状態が続いていました。そうした中で不法就労者による治安の悪化の懸念や、不法就労に関わる違法なビジネスが問題となっていました。

当時から、さまざまな専門技能を持つホワイトカラーを中心とした外国人労働者の就労は可能でした。しかし、高度経済成長をもたらし、現在も日本の国際競争力の源泉になっている製造業や、耐震設計をはじめ極めて高レベルな建設業などの第一次・二次産業の現場において人材不足が顕著でした。ただ、上記の不法就労の実態や諸外国の例からも、単なる規制緩和を行うことは不当な労働を野放しにする恐れがあります。

そうした中で「厳格に規制された監理団体のもとに、3年(現在は5年も可能)などの規定された期間、外国人労働者への技能の実習計画を立てて就労を行い、実習が終了し帰国した後は、その技術を生かした母国での産業発展を促進する。それにより、日本の競争力の源泉となった技術である、製造・建設・農業等の技術を持った労働者を創出し国際的な経済発展を図る」ということを制度趣旨として、1992年の第3次臨時行政改革審議会の答申を基に、技能実習制度が創設されました。

2.技能実習制度の改正と改正入管法(特定技能制度)

技能実習制度は近年、「単純労働を受け入れるための隠れ蓑として、実習・教育という名目を利用している」という批判を国内外から浴びながらも、存続しています。それは、もともとの制度趣旨に則った一部の発展的な事例や、人材不足経済の現状にけん引されたからでしょう。

例えば、地方では採用が極めて困難になっていますが、貴重な技術の継承を外国人の技能実習生が担っている例が多数あります。また、下記のリンクの事例のように、実習を経た技能実習生が帰国後に会社を設立し、協業・取引に発展したという例もあります。
»【参考】一般社団法人未来友の事例

そうした中で、2017年11月に大きな制度改正が行われました。技能実習生の監理団体の全ての監理責任者や、受け入れ企業の技能実習責任者に、関係法規の順守や労災防止の理解徹底のための講義への参加が義務付けられました。また、監理団体の認可要件や技能実習生を受け入れる企業に対する監査の強化も行われ、全体的に実習生を守る観点から規制が強化されました。

2019年4月施行の改正入管法によって創設された特定技能制度は、技能実習を終えて技能が確立した労働者や、試験によって技能が確立している労働者に対して、さらなる日本での技能習得やキャリアの拡大のために設けられたものだと言えます。制度趣旨を見ると、技能実習が目指しているものと同じく、日本を含む国際的な経済発展のための制度であるのです。ただ、技能実習の受け入れ職種が80職種に対して特定技能は14職種と、限定的であるのが現状です。

3.技能実習制度、特定技能制度の目指すべき方向性

技能実習制度は主管官庁が法務省から厚生労働省へと変わり規制を強化。労働基準法の遵守(最低賃金、残業手当、労働時間等)も強化され、より健全な運用が目指されていると言えます。特定技能制度についても、外国との間の協定や日本国内の支援機関などが厳格な規制のもとに置かれる制度であり、同様の規制が考慮されています。こうした基準の順守や規制の強化が必要なのはもちろんですが、企業担当者に改めて理解してもらいたいのは、そもそもの制度趣旨が「制度を通じた国際的な経済発展」であるということです。

少子高齢化や人口減少の問題がありながらも、技術資産や経済資産がまだまだ蓄積されている日本の技術を国際的な協調に生かす外国人雇用制度には、大きな可能性があると言えます。単に制度の悪い点に着目したり最低基準を順守したりするのではなく、実際に経済発展に繋がっている事例や工夫に着目し、本来の制度趣旨の実現に寄与していくことが必要だと言えるのではないでしょうか。

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