「働き方改革」における「産業保健体制整備」の必要性

「人材」から「人財」へ

2018年6月29日に可決され、2019年4月1日より「働き方改革関連法案」(正式名称:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案)が施行される。産業保健体制整備の必要性について、サービス開始から2年半で、日本全国1千事業所以上に産業医サービスを提供する株式会社Avenir代表取締役の刀禰真之介氏が解説します。

1.働き方改革における産業医・産業保健の立ち位置

企業の源泉は言うまでもなく、「人」であり、少子高齢化の日本において、「人材」から「人財」への真の転化が求められています。結果的に「採用力向上」、「離職防止」を実現し、企業の永続的発展の源泉となります。

安倍政権の「人生100年時代構想」、「年金受給70歳」という時代に突入し、「社員が長く健康に安心して働くことのできる職場環境構築」の重要度が増しています。「企業の採用力向上」、「離職防止」を実現する基準が、「産業保健」の立ち位置になり、「働き方改革法案」でも全ての企業にその対応が求められています。

産業保健を軽視し、社員の健康問題やメンタルヘルス問題、それに起因する過労死、過労自殺等の問題が万が一にでも起これば、莫大な損害賠償責任のみならず、社員のモチベーション、採用ブランディングなどの、企業成長を阻害する要因になりかねません。

平成が終わる現代において、産業医が機能する産業保健体制を整備しない会社は、「社員の心身の健康が維持されない」と評価される時代に突入しました。従って、「産業医、産業保健」への投資が、今後の企業成長のキーポイントとなります。

2.経営環境・労働環境の変化

労働安全衛生法が施行された昭和47年と比較すると、産業構造、社会的情勢、テクノロジーが大きく変動し、経営環境と労働環境に変化をもたらしました。それにより、工業的疾患などの影響が小さくなり、メンタルヘルス疾患が増加しています【図1】

これはさまざまな産業医の先生のお話しを伺い、考えた私なりの仮説なのですが、「IT化」と「高度化する職場、 職務」がメンタルヘルス疾患の増加要因であり、この流れを止めることはできません。従って、メンタルヘルス問題は対策をしっかりと行わない限り、影響がなくなることはありません。

まず、「IT化」ですが、20年前と比較すると情報量は20倍になっているにも関わらず、人の脳は進化していないため、人間が処理できるレベルを超え始めています。一説によると朝の1時間の通勤時間で得る情報量は20年前に1日で得る情報量とほぼ同じであり、パソコンで例えると︑脳がフリーズしやすい状況にあるのです。

また、「高度化する職場、職務」については、プレイングマネジャーが増え、「仕事の質と量」が20年前よりあがり、メンタルヘルス疾患を起こしやすい状況となりました。
加えて、リアルに共有する時間が減り、ハラスメントも無意識に起こるという負の連鎖に陥っている職場環境も少なくありません。電通事件では若い女性の自殺が社会的な問題となりましたが、実はプレイヤーからマネジャーへの転換が求められる40代男性の自殺のほうが相対的に数は多いのです。
皆様の職場でもプレイヤーは一流なのに、マネジャーになったとたんパフォーマンスが上がらない社員がいませんか。当然、プレイヤーとして一流でもマネジャーとして一流とは限らないのです。
そして、上手くいかない、真面目な方にメンタルヘルス疾患が発症してしまいます。

このような環境下で、働き方改革における産業医、産業保健として、企業は次の3つの対策を早期に計画し、実行し、PDCAサイクルを回していく必要があります。

❶過労死等防止対策
❷メンタルヘルス予防
❸フィジカルの健康維持、予防

3.産業保健における3つの改正点

2018年6月29日に可決された「働き方改革関連法案」において、労働安全衛生法領域(産業保健分野)では、「労働者の健康確保のための産業医・産業保健機能の強化」として、次の3つの改正が行われました。

「過労死防止対策」、「メンタルヘルス予防」、「フィジカルの健康維持、予防」の実現という観点から、今までの「必要であれば対処する」という方針から。「やらなければならない」という方針へと転換しています。
結果的に、産業医の権限強化と共に事業者にも合理的配慮が求められ、機能する産業保健体制の整備が急務となっています。

(1)産業医に対する情報提供等の充実・強化

【改正前】産業医は、労働者の健康を確保するために必要があると認めるときは、事業者に対して勧告することができる。

【改正後】事業者は、長時間労働者の状況や労働者の業務の状況など、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を産業医に提供する。

(2)産業医の活動環境の整備

【改正前】事業者は、産業医から勧告を受けた場合は、その勧告を尊重する義務がある。

【改正後】事業者は、産業医から受けた勧告の内容を事業場の労使や産業医で構成する衛生委員会に報告しなければならない。そして、衛生委員会において、実効性のある対策をたてて実行する。

(3)労働者に対する健康相談の体制整備、労働者の健康情報の適正な取り扱いルールの推進

【改正前】事業者は、労働者の健康相談等を継続的かつ計画的に行う(努力義務)。

【改正後】・産業医等による労働者の健康相談を強化。
→事業者は、産業医等が労働者から健康相談に応じる体制を整備する。

・事業者による労働者の健康情報の適正な取り扱いの実施。
→事業者による労働者の健康情報の収集、保管、使用及び適正な管理について、指針を定め、労働者が安心して事業場における健康相談や健康診断を受けられるようにする。

4.健康経営における産業保健体制の見直しが競争力の決め手となる

2019年4月の施行に向け、産業医・産業保健機能の強化にまつわる「働き方改革関連法案」の対応として、「健康経営の実現」を兼ねて、産業保健体制を見直す企業が増えております。

健康経営や働き方改革は、単純に「長時間労働の是正」や「テレワークの導入」をすれば結果や生産性向上に結びつくという話ではありません。

業界慣習や仕事の質等、企業ごとに事情が違います。すでに、労働環境、社会環境、テクノロジー環境の変化をいち早く経営課題として捉え、形骸的になりがちであった産業保健体制をいち早く整備し、結果的に「健康経営を実現」し、競争力を高めている企業と、そうではない企業では、早くも企業成長に大きな相違が出始めています。

5.まとめ

「健康経営」や「働き方改革」における産業保健は、「大きく生産性を向上させるもの」ではなく、「生産性がマイナスにならないようにするためのもの」であります。
そのために、フィジカル及びメンタルヘルスの健康を働き手が維持できる仕組みを提供し続ける企業が、人材を「人罪」とせず、「人財」へと進化させることができるのです。

最近、「社員のパフォーマンス低下しがち」、「休職する社員が増えた」、「離職率が高まっている」と感じている経営者や人事は、今一度、「健康経営」の基盤作りのために、産業医を含めた産業保健体制を整備し、機能させることから考えてみて下さい。これらが「人材」を「人財」へとする、全ての始まりなのです。

※情報はすべて2018年11月時点

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