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21卒以降から「就活ルール廃止」 今後の新卒採用のあり方とは

2018年9月3日の記者会見にて、経団連の中西会長が「就活ルール廃止」の意向を発表。そこから約1カ月後の10月9日には、2021年春入社以降の新卒採用から「就活ルール」を廃止することが正式に決定されました。

参考:経団連会長、就活ルール廃止を発表 政府会議で議論へ 

2021年以降、従来の新卒採用を行っていくには限界があり、企業は採用のあり方を再定義する必要に迫られています。

そこで今回は、企業人事の立場から、企業の採用のあり方はどうなるか? について見解を述べたいと思います。

振り回される学生

現行の就活スケジュールにおける解禁日は、

・会社説明会などの広報活動は3月1日
・面接窓の選考活動は6月1日
・内定は10月1日

となっており、ここ数年は何度か解禁日は変更になるものの、ルール上ではほぼ上記の日程で敢行されていました。

しかし実際には、外資系企業や中小企業は就活ルールの対象に含まれておらず、また、ルール違反により罰則が生じることもないため、大企業であっても、多くの会社が抜け駆けして採用活動を行っていました。

「早い時期から動き出せば新卒採用はうまくいく」とは必ずしも言えないものの、ルールを守っている企業からすると憤りを感じるところです。また、本来は学業に専念するために定められていたはずのスケジュールが、結果的に長期化し「学業=就活」になってしまっていることは、政治的な問題にもなっています。

そういった背景から、経団連の中西会長は「経団連が採用の日程に関して采配すること自体に極めて違和感がある」との意向を発表。そして、経団連がルールをなくせば、自由な採用活動が一段と広がり、新卒一括採用を前提とする雇用慣行の転機となることを期待されています。

中西会長は、1970年に日立製作所に入社し、現在では取締役会長兼代表執行役を務めています。新卒社員を大量に採用している同社で、新卒入社からトップに上り詰めた中西会長が「就活ルール廃止」の意向を発表したということは、非常に意味があることです。世界的な人材獲得競争の中で、日本はそれだけ遅れているということを経営者の立場から感じているのでしょう。

2021年以降の就活ルールはまだ正式に決まっていませんが、早かれ遅かれ、世界の人材獲得競争に勝つためのやり方を各企業は模索していく必要があります。

企業にとっての新卒採用のメリット

では、企業が長年にわたり新卒採用を行っているのはなぜでしょう。

正直、人事の立場からすると、新卒採用は体力もいるし、特に繁忙期はしんどいのですが(苦笑)、それでも新卒採用を続けるのには理由があります。

中途では中々採れないような将来の幹部候補人材が採用できることや、毎年大学卒業者が入社することで組織の人員バランスが最適化できる、強固な社内ネットワークがお互いを支え合う、など有形無形のメリットがあるのです。

そして、仮に能力に差があったとしても、一律の同じ給与で採用できることも非常に大きいです。

最近では、ある特定の技術を持つエンジニアには、初任給から高い金額を提示する企業も出てきましたが、非エンジニアにおいては、学歴による差以外はほとんどが一律であるのが現状です。

考えてみれば当然です。

採用した時点では、その社員は営業ができるのか、マーケティングができるのか、経理ができるのかどうかは分かりかねます。集団研修を施した後、各部門に配属し、そこでの仕事の様子から初めて評価することができます。そのため、入社時点では新卒社員の能力を「評価しない」のではなく「評価できない」と言った方が正しいかもしれません。

学生の「就職」に対する意識が大きく変革している

今の学生は10数年前の学生と異なり、勉強や研究への意欲は向上し、就活が終わったからといって遊び呆けることは減ってきているように感じます。(まだまだ大学が、実務に直結するような高い質の授業ができていないという問題点はありますが)

就活を経て社会を知ることでより社会問題へ関心を持ち、内定後でもインターンをしたり、Webのプログラミングスクールを受講したりする学生も圧倒的に増え、学生個々人の意識は大きく変わってきています。

にも関わらず、大学時代は遊び呆けていて、会社に入ってから滅私奉公で頑張ってきたような典型的なビジネスパーソンは、学生の能力やスキルを知ろうともしません。

だから、面接で志望動機を聞いてしまうのです。

まだ実務経験もない、業界のことも知らない学生に、志望動機を聞いたとして何が分かるのでしょう? そこで分かるのは、自社に対する興味度合いだけです。

今回の中西会長の発言により、新卒採用のそもそものあり方とか、どうスケジュールに対応するかを検討することも非常に大事ですが、スケジュールを変更せざるを得ないほど、世界の人材獲得競争は激しく、学生の意識も大きく変わっているということを認識する方がよっぽど必要かもしれません。

新卒一括採用は「若年層の失業率」を下げる効果がある

一方で、日本全体で考えたときに、新卒一括採用は若年層の失業率を低く抑えることができるという効果もあります。

一部の欧米諸国では、1つの求人枠に対して、業務経験がある中途社員でも、在学中の大学生でも、誰でも応募することが可能です。現場が必要な人材像を応募者自らが定義し、採用エージェントを介することなく、企業と直接交渉しながら採用活動を進めていきます。そうすると、経験を持った即戦力人材の方が採用されやすく、学生は中々仕事に就けないということになってしまうのです。

だからこそ、欧米諸国では、大学で自分のやりたいことに直結する学部、学科を選択するし、自分がやりたい仕事に就くために学び直す「リカレント教育」が進んでいます。日本もこの先そのようになる可能性もありますが、今すぐは難しいです。

長期間の就業経験を通して、学生と企業のマッチングを図ることが重要

であるならば、今するべきことは一つ。

形だけのインターンシップはやめ、就業体験という名の会社説明会やグループディスカッションではなく、長期間一緒に働く就業経験をさせるべきだと思います。

実際に一緒に働くことで、短期間で圧倒的な成長をしていく人もいれば、面接では分からなかった能力やスキルを持っていることに気が付けるかもしれません。その評価に応じて、初任給は変わってもいいと思いますし、入社時から新卒社員に肩書きを与えてもいいかもしれません。

プロ野球のドラフトではないですが、初年度の年収に大きく差があったとしても、ビジネスも勝負の世界。自分の評価を受けて奮起する人もいれば、評価に納得いかず辞退する人も出てくるでしょう。事前にミスマッチも防げるなら、有効な手段です。

しかし、その世界が実現すれば、事実上、今の新卒一括採用、およびそれを前提とした日本型雇用慣行は終焉することを意味します。

いずれにせよ、今年は新卒採用の大きな過渡期となりそうです。

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