モチベーションを上げようとするのは間違い!? ~キャリアアップする新入社員が共通で持つモチベーション管理思考~
年間50名以上の経営幹部、人事教育担当の方と新卒や幹部の研修の打ち合わせを10年以上行う中で、順調に経営幹部として成長し、キャリアアップする新入社員の方と、そうでない方の違いが見えてくるようになりました。
キャリアアップする社員とそうでない社員の別れ道となるものは何なのか?「将来幹部になる/なれない新入社員の6つの思考習慣の違い」のうち、今日は4つ目の違いをご紹介します。
(1~3つ目の違いは、以下のリンクからご覧いただけます)
https://at-jinji.jp/expertcolumn/110
https://at-jinji.jp/expertcolumn/113
https://at-jinji.jp/expertcolumn/116
幹部になる新入社員の特徴「モチベーション依存思考<モチベーション管理思考」
将来幹部になる社員が持っている思考の特徴、4つ目は「モチベーション依存思考<モチベーション管理思考」です。
いずれも聞き慣れない言葉かと思いますが、私の中で以下のように定義しています。
・モチベーション依存思考:仕事のモチベーションを自分で管理しようとせず、なすがままに他人や環境に依存する思考
・モチベーション管理思考:仕事のモチベーションを自分で管理する思考
ここで出てくる「モチベーション」という言葉に対して、人によって「モチベーションとテンションは違う」、「モチベーションを上げる努力をするべき」、「モチベーションが上がる、下がるという認識はおかしい」といった、さまざまな意見があると思います。
私もその1人になりますが(笑)、多くの人が「らしさ」や「専門性」の雰囲気を出すためにこの「モチベーション」という言葉を使っており、日本では共通の定義が認識されていないように感じます。
そこで、まずは「モチベーション」という言葉の定義付けをしたいと思います。
「モチベーション」とは
「モチベーション」という言葉をネットや辞書で調べてみると、それぞれ以下の様に記載されています。
(出典:大辞林 第三版)
「動機を与えること。動機づけ。物事を行うにあたっての、意欲・やる気。または、動因・刺激」
(出典:デジタル大辞泉)
「人が行動を起こすときの原因、すなわち動機を意味する。組織の中では仕事への意欲を指し、意欲を持つことや引きだすことを動機づけと呼んでいる。 モチベーションが、個々人の意識に関する概念であるのに対し、モラールとは集団的な感情や意識に対して使われる概念といえる」
(出典:ナビゲート ビジネス基本用語集)
3つに共通しているのは「動機」というワードです。「動機」を辞書で調べると……と堂々巡りになりそうなので、私が個人的に「動機」という言葉が良く使われると連想するシーンで、その言葉の定義を説明します。
1つは、殺人事件が起こるドラマで、刑事さんが言う「犯人の犯行の動機は?」というセリフです。このセリフでの意味は、「人が意志を決めたり、行動を起こしたりする直接の原因」(出典:デジタル大辞泉)です。
この意味だと「モチベーションが上がる、下がる、ということがおかしい」という主張が理解できると思います。原因が「上がる、下がる」とは言わないですね。「犯人には、犯行の強い動機があったようです。」というように「強い、弱い」といった方が自然な印象を受けます。
また、別のシーンを挙げると、就職活動の面接やエントリーシートで使われる「志望動機」というものがあります。この場合の動機は、「倫理学で、行為をなすべく意志する際、その意志を規定する根拠。義務・欲望・衝動など」(出典:デジタル大辞泉)という意味で使われています。
よって、この場合は「上がる、下がる」というよりも、「ある、ない」といった表現の方がしっくりくると思います。
「motivation」という英単語を直訳すると、上記で記した「動機」という意味になります。しかし、「モチベーション」という言葉を辞書で調べると、現在は「やる気、意欲」といった意味でも記されています。
ですので、ここでは、モチベーションを「動機、動機づけ、やる気、意欲」と定義して話を進めていきたいと思います。「やる気」という意味が含まれていると、「上がる、下がる」という表現に対しても違和感はないはずです。
「モチベーション依存思考」と「モチベーション管理思考」の違い
以上の前提をもとに、「モチベーション依存思考」と「モチベーション管理思考」の違いについて解説します。
モチベーション依存思考とは、仕事のモチベーションを自分で管理しようとせず、なすがままに他人や環境に依存する思考です。上司が全く褒めてくれないからモチベーションが下がるし、それは自分で管理できるものではない、と考える社員が当てはまります。
モチベーション管理思考とは、仕事のモチベーションを自分で管理する思考です。上司が全く褒めてくれないから、モチベーションが下がるという時、どうすれば自分のモチベーションが下がるのをストップできるのか? と自己管理しようとする思考です。
他人や環境に依存せず、自分で高いモチベーションを維持しようとする「モチベーション管理思考」を持った社員は、高い意欲を持って仕事に取り組むことができ、その姿勢が成長へとつながっていきます。
3種類のモチベーションを管理し、意欲低下を防ぐ
では、モチベーションはどのようにして自分で管理することができるのでしょうか。
レビンのツァイガルニック効果、マズローの「欲求5段階説」における欠乏動機、ロックの目標設定理論など、「モチベーション」をテーマにした学術研究は数多くあります。しかし、それぞれの主張は異なり、「絶対にこれが正しい」と位置付けられたものはありません。
我々は、自分の仕事のモチベーションを、どうすることもできないものではなく、管理(マネジメント)できるものだと考えています。「モチベーションは上げようとしても上がらない。下がるのを止めるべく管理して、上がるのは待つだけ」というのが、我々が考えるモチベーション管理思考の基本スタンスです。
そこでここからは、モチベーションを
・toward motivation(希望系)
・away–from motivation(緊張系)
・own theory motivation(持論系)
の3つに分類して、種類別にモチベーションの低下を防ぐ方法をご紹介します。
1. toward motivation
toward motivationは「○○したい」「○○がほしい」というモチベーションです。「同期で一番最初に昇格する」といった、自分がなりたい姿や得たいものを明確にイメージし、それを達成しようとすることでモチベーションの低下を防ぎます。
2. away–from motivation
away – from motivationは、「○○は嫌だ」「○○は避けたい」というモチベーションです。「同期でビリになるのは嫌だ」といった、自分が避けたい姿や事象を明確にイメージし、それを回避しようとすることでモチベーションの低下を防ぎます。
3. own theory motivation
own theory motivationは、「お気に入りのシャツを着たら」、「大好きなチョコを食べたら」、「○○さんに誉められたら」「□□さんにダメだしされたら」、といった各人それぞれのオリジナルのモチベーションです。自分のモチベーションが上下する行動や条件を把握し、それを実行することでモチベーションの低下を防ぎます。
「モチベーション管理思考」を定着させるための問答集
ここでは、私が「モチベーション」というテーマでよくもらう質問の中から、皆さんに知っていただきたいものを3つご紹介します。
質問1「ニンジンをぶら下げるのは、モチベーションに有効ですか?」
はい。自分にとってやる気を起こさせるもの(=ニンジン)を提示・設定することは、モチベーション維持に効果的です。
ブレタ応用科学大学 ジェーレン・ナウィン達の研究によると、人は旅行の「計画」を立てるだけで幸福度が高まり、しかも、その気分は平均して8週間維持するといいます。そのため、単発的な「ニンジン」は、2ヶ月先のものを用意するとより効果があると言えるでしょう。
質問2「『他人と自分を比較する』ことと『昨日までの自分と今の自分を比較する』のとでは、どちらの方がモチベーション維持に効果がありますか?」
短期的に見るとどちらも効果はありますが、長期的に見ると、「自分自身を比較」する方が効果的です。心理学者ルース・バトラーの実験で、学生を2チームに分けて、テストを実施したものがあります。
「他の学生と比較して評価する」と伝えた後、テストへの意気込みをたずねると、「能力を示したい」「ミスを減らしたい」などと答えました。
Bチーム
「自分の成績の上がり具合を基準に評価をする」と伝えた後、テストへの意気込みをたずねると、「頭をきたえたい」「問題解決能力を高めたい」などと答えました。
その後、テストを何度か繰り返すと、Bチームの方が大きく成績が伸びました。テストが楽しいという声もBチームの方が多かったのです。
この結果から、長期的に見ると、他人との比較よりも自分の成長度合いを実感することの方が、モチベーションの維持に効果があり、さらには成果につながると言えます。
質問3「朝礼や社員旅行といった会社の行事は、モチベーションに影響するのですか?なにか意味はあるのでしょうか?」
それらの行事は、モチベーションに影響します。実施する意味があるものです。スタンフォード大学 スコット・ウィルターマス達の実験で、被験者達を3つのチームに分けて、それぞれ違う条件でカナダの国家「オー・カナダ」を聴いてもらったものがあります。
Bチーム:一緒に大声で歌ってもらった。
Cチーム:1人1人ヘッドフォンをして、違うテンポで聴きながら歌ってもらった。
その後、3チームのメンバーに、実験の報酬を1人占めするか、チームで山分けするかを選んでもらいました。A・Cチームでは、「1人占め」を選択した人数と「チームで山分け」を選択した人数は同程度でしたが、Bチームは「山分け」を選択する人が圧倒的に多かったのです。
つまり、同じ行動をとっていると認識できると、人間は協力関係を築きやすく、協力関係があるかないか、はモチベーションに影響します。多くの会社で朝礼や社員旅行を実施する理由の1つとして、これが当てはまります。
モチベーションを管理することで、自分自身の成長につなげる
今回は「将来幹部になる/なれない新入社員の6つの思考習慣の違い」の4つ目、「モチベーション依存思考<モチベーション管理思考」を紹介しました。次回の連載では5つ目の「違い」についてご紹介します。
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