TOEICスコア500点未満のレベルから始める
英語苦手層がグローバルに活躍するための効果的英語学習法
「ものづくり」の日本がグローバル化するためには、技術職の方のグローバル化は避けて通れない課題です。一方で語学や文化など割り切れない事柄を苦手として「英語」に対してアレルギー反応を示す理系・技術職の方が多く存在することも事実です。企業はその抵抗感をいかに緩和し、技術職の方のグローバルな舞台での活躍への手助けをすることができるか、といったことに頭を悩ませています。
そこで、今回はTOEICスコア500点突破を基準にした英語苦手層へ向けた効果的な学習法について、学会での論文の発表を続けながら、大学や企業向けに英語研修を提供している、鈴木武生先生にお話を伺いました。
500点突破のための学習法
TOEICテストは常に進化を続けており、近年では、より多様な英語アクセントと新出題形式が採用されています。また、スピーキングやライティングの能力を測定する「TOEIC® Speking&Writing Tests」が企業間にかなりのスピードで普及しつつあります。
TOEICテストを受験する多くのビジネスマンにとっての悩みの種は、一夜漬けの勉強が効かないところです。しかし、昇格や海外赴任など、一定のスコアを企業から求められている多くの人にとって、スコアを最短期間でアップすることが必要であり、いかに効率的にスコアアップを図るかが課題となっています。そこで、今回はTOEICスコア200~400点レベルの人が、500点を突破するのに最も効果的な方法について、前半では方法論の概要を示し、後半ではQ&A形式を通じて説明をしていきます。
では、まずTOEICスコア200~400点のゾーンと、目標スコアである500点レベルが、それぞれどのような位置づけにあるのかについて解説しましょう。下記の表をご覧ください。説明の便宜上、最低スコア10点から220点未満を第1レベル、220点から470点未満を第2レベル、そして470点以上(550点あたりまで)を第3レベルとします。
【各レベルの特徴】
第1レベル:断片的に単語を並べる程度で、実質的にコミュニケーションできるレベルには至っていない。
第2レベル:きわめて限られた範囲において非常に初歩的なコミュニケーションは図れる。370点前後が英検3級レベル(中学卒業程度)、400点以上が英検準2級レベル(高校中級程度)となっており、400点を境に学力差が大きく広がるスコアゾーンである。
第3レベル:470点を超すと、限られた範囲内ではあるが、一部の業務コミュニケーションが図れるようになる。このスコアを超え530点前後になると英検2級に相当する。
第1レベルの人のための学習法
まず第1レベルの学習者は、英語の仕組み自体が全く見えず、学習そのものが苦痛となっている場合が多くなっています。そのため、まずは次のことから始める必要があります。
2.基本例文
3.音読
英文法の体系は日本語のそれとは大きく異なり、独自のパラダイムを持っています。これを理解するためには、品詞(名詞、動詞など)、代名詞(we, themなど)活用、5文型についての理解が必須で、これをおろそかにすると、その後の学習が全く理解不能になる可能性があります。参考書は『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。』(学研教育出版)などが分かりやすくてよいと思います。
これと並行して押さえておきたい、効果の高い学習法は基本例文の学習です。多くとも100例文程度の暗記ですが、これが後々の英語基礎力の伸びを支える大きな基盤になります。おすすめの参考書には『99パターンでわかる中学英語文型の総整理』(学研教育出版)があります。
このほか、欠かすことができないのは音読学習法です。先に紹介した学習書2冊にはいずれも音声CDが付属されています。出てきた例文は必ずすべて音読する習慣を身に付けてください。リスニング力は知識ではなく、運動的な反射神経を必要とします(だから一夜漬けができない)。TOEICテスト・セクション1で目標とするスコアを上げるのに必要な基礎リスニング力を付けるには、音読練習を行うことで脳内に反射神経回路を作る以外に方法がないのです。
第2レベルのための学習法
第2レベル(特に前半)にいる人には、中学レベルの文法知識の完成、例文の音読、そしてオンラインによる初歩的な会話の練習が効果的です。
このレベルでは前述の第1レベルでの学習項目に加え、次の文法知識を整理する必要があります。
・助動詞
・分詞・不定詞
・特殊な代名詞や形容詞(each, every, noなど)
・関係代名詞・関係副詞
・be interested inのように複数単語でまとまりをなす連語
・強調構文などの特殊構文
ここでも『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。』が効果的ですが、もしすでにTOEIC370点くらいを持っている人であれば、同じ学研教育出版の『高校英文法をもう一度ひとつひとつわかりやすく。』を始めるとよいと思います。この際にも、必ず音読は続けるようにしてください。音読訓練はボディーブローのようにあとになってじわじわと効果が出てきます。
また、第2レベルになったら、オンラインによる会話練習も始めるのが効果的です。最近はさまざまなオンライン会話サービスを低価格で利用することが可能です。オンライン会話練習のメリットは、耳から聞いた音声を理解する「英語脳」を作ると同時に、知らず知らずのうちに英文法の定着を図ることができる点です。この「英語脳」を作るには、DVDやCDではなく、人間相手に練習を行うのが最も効果的であるという研究結果も報告されています。
この学習法は言い換えるなら、英語力の「筋力トレーニング」と言えるでしょう。日本人が英語が苦手なのは、「単に受験勉強が悪い」というのではなく、むしろこうした「英語の筋トレ」を学校教育の段階で全く行っていない点にあります。
第2レベル後半に入ったらTOEIC公式問題集やその他レベル別問題集を使って、各パート別の形式や傾向に慣れるための勉強を始めてください。特にパート1(写真問題)、パート2(応答問題)、パート5(穴埋め文法問題)ではそれぞれ80%以上の正解率を目指すようにしてください。
公式問題集以外の問題集としては、語彙用に『TOEIC L&R TEST 出る単特急 銀のフレーズ』や文法用として『1駅1題 新TOEIC TEST文法特急』(いずれも朝日新聞出版)などが定評があります。
学習者のためのQ&A
Q1.TOEICのリスニングが聞き取れません。どうやったらリスニングに強くなりますか?
第1ステージの人は音読をおすすめします。まず音源に続けてテキストを見ながら必ず音読する習慣をつけてください。
第2ステージでも同じですが、TOEICスコア370点を超えている人は、音読を行ったあとシャドーイングを行うようにしてください。シャドーイングとは、テキストを見ずに、音源に合わせ、聞こえたことをぼぼ同時に繰り返す訓練です。これは単語を言い間違えたり、言い損ねたりしてもかまいません。
次の文頭からまた始めればよいのです。個人差はあるものの、継続すると数か月で驚くほどリスニング力が伸びたのが実感できます。
Q2.文法はどうやって学習したらよいですか?
第1ステージおよび第2ステージ前半の人は、中学校文法を上記に示した方法で復習してください。
このレベルの人の場合、TOEIC向けの問題集や参考書で始めることはおすすめしません。TOEICはあくまでもテストなので、TOEICテスト用教材は、文法項目を必ずしも系統立てて説明していないからです。
Q3.英語アレルギーです。どうしたらよいでしょう?
過去の挫折感もしくは失敗を恐れる緊張感がアレルギーの原因になっているものと思われます。前者の挫折感に打ち克つためには、「実際にやってみたら問題が理解できた!」「思いのほか解けた!」という成功体験が必要です。
上記の第1・2ステージにおける中学文法の学習法を参考にしてください。
話す場面での緊張感は英会話カフェやオンラインレッスンで簡単な会話を実践し、「ああ、私にもできるんだ」という経験を積むとよいでしょう。筆者にも経験があるのですが、これを繰り返すうちにおのずと精神的バリアが取り除かれていきます。
Q4.(理系の方でよくある悩みとして)学習を進めていても、知識がちゃんと積み上がっているか不安です。効果的な学習の順序などはありますか?
はい、英語学習には順序があります。特に文法システムが大きく異なる日本語と英語の間ではなおさらです。英語の学習を(筆者なりの独断で)家の建築に例えると、
(2)基本例文:床
(3)高校文法:柱
(4)音読およびシャドーイング:壁材のための木材
(5)会話練習によるリスニング力アップ:壁、外壁
(6)単語・連語・イディオム:窓、電気、水道、ガス、屋根、家具
(7)実践会話力:客人を招いたり、家でパーティーが開ける
のようなイメージになります(正確には一致しないかもしれませんが)。例えば、中学文法や高校文法をないがしろにして、語彙の丸暗記を行うことは、家の基礎コンクリートもないのに屋根を作るようなものです。また、家具(単語)を置くためには、しっかりした床(基本例文)が必要となります。家も床もないうちから家具を買い集めても、野積みになるばかりで無駄になってしまうでしょう。
そのためにはまず(1)、(2)、(3)の順序で学習を行う必要があるのが一つ、そして(4)と(5)のいわゆる「英語筋トレ」を並行して行うことが重要です。ひとたび(5)が十分行えるレベルになれば、その他の学習項目については順不同で学習しても効果上の違いはありません。
さあ、では自分のいる位置を確かめ、実際に計画を立て、基礎力づくりにとりかかりましょう。重要なのは一度にまとめて勉強するのではなく、(できれば)毎日こつこつと継続することです。量より継続が大事なのです。
プロフィール
鈴木 武生(すずき たけお)
元商社マンから日本語教師、翻訳者、通訳者、辞書編纂者を経て独立。東京大学大学院博士課程修了、Ph.D(言語学)。
英日中の意味論、構文論、語用論。タイヤル語の文法記述
株式会社アジアユーロ言語研究所代表取締役
業務内容
スキル系企業向け研修(ビジネスコミュニケーション、異文化理解)、研修プログラムデザインのコンサルティング、辞書編纂および辞書データ処理、翻訳・通訳
跡見学園女子大学・早稲田大学講師(英語、異文化接触、語用論、国際メディア論)
日中韓辭典研究所(CJKI)顧問
ファブリス株式会社教務アドバイザー
WITHUS講師(英語、中国語、異文化)
東進ビジネススクール講師
日経ビジネススクール講師(英文ビジネスライティングコース)
著作:『英会話のピンチ切り抜け術 成功するコミュニケーションのコツ』(NHK出版)
辞書:『講談社漢英学習字典』春遍雀来編
翻訳書:『詳説 正規表現』Jeffrey E.F. Friedl(著)、鈴木武生(訳)
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