【第15回】研修マスターの6つ星“指南術”

上司から部下への「曖昧な指示」を「的確な指示」に変える3つのポイント

若手社員の中には、「上司の指示が曖昧」と感じている人が多いようです。特に最近では、さまざまな組織においてハラスメント問題などが取り上げられ、若い世代とベテラン世代の意識やコミュニケーションにギャップが生じていることが浮き彫りになっています。

そこで今回は、なぜ部下に「的確な指示を出す必要があるのか」という背景を含め、「的確な指示を出すためのポイント」を紹介します。

目次
  1. 上司が曖昧な指示を出すと、新入社員のモチベーションが下がる
  2. 相手に意図が伝わる「的確な指示」の3つのポイント
  3. ビジュアルイメージに慣れた社員に、口頭だけの指示はNG
  4. 「できる」「大丈夫」で信頼関係を築きながらスキルアップを目指す

上司が曖昧な指示を出すと、新入社員のモチベーションが下がる

筆者は仕事柄、新入社員研修で様々な業種・業態の新入社員と接します。2018年度も4月は約半月ほど、新入社員研修を担当しました。

その中に、職場配属後、指示はほとんど口頭で行われる組織が含まれていました。その組織では職場環境に合わせるために、研修での指示もできるだけ口頭で行い、わからないことは確認することに慣れてもらう、という意図でプログラムを構成し運営依頼を受けました。

そのプログラムは過去も実施しており、従来の新入社員は、曖昧な指示へのアプローチにも徐々に慣れ、コツを掴み、研修が終る頃にはある程度習得できていました。しかし今年はそういう兆しが全く見えない、むしろ、「確認できていないことを繰り返し指摘される」ためにモチベーションが下がり、段々ムードも暗くなっていきました。

曖昧な指示によって、認識のズレが生じる

そこで新入社員に、「確認のどんなところが難しいのか」と、問いかけてみると、

・何を確認したらいいかわからない
・聞きづらい、恥ずかしい、何度も聞いて迷惑をかけたくない、手間をかけたくない
・確認の重要性がわからない

といった意見が出ました。

一見すると、彼らに主体性がない発言に思えます。しかし、よく考えてみると、彼らが言っていることは正しく「指示そのものがイメージしづらく、彼らは指示通りやっているつもりなのかもしれない」そう捉えてみることにしました。

相手に意図が伝わる「的確な指示」の3つのポイント

そこで、研修の後半日程では、指導者やOJT担当者を対象とした研修では基本とされている次の3つの点を取り入れ運営しました。

①ビジュアルイメージを伝える
②期待水準を5W3Hで伝える
③確認のタイミングを設ける

※5W3Hとは

正確で漏れのないやり取りを行うためのフレームワークとして用いられる、以下の8つの疑問詞の頭文字を取ったもの。

  • What 何を(課題)
  • Why なぜ(動機)
  • Who 誰に(対象)
  • When いつ(時期・時間帯)
  • Where どこで(場所)
  • How どのように(手段)
  • How many どのくらい(規模)
  • How much いくら(価格)

指示を出した後の問いかけが、理解を進める

特に、指示を出したあとに「聞きたいこと、確認したいことはある?」と問いかける回数を増やしたところ、その効果は大きく、要点を捉えた確認が入るようになりました。

そして、その後の取り組みは、従来と同様。あるいは、それ以上。成果物の出来栄えも格段に良くなりました。特に全体的に活気が高まりました。

この経験を経て、「口頭だけの指示はもう止めたほうがいい」。指導する側が意識を変え、スキルを高めるほうが効果が高い。そう確信しました。

ビジュアルイメージに慣れた若手社員に、口頭だけの指示はNG

そう確信した理由の1つは、新入社員が社会人になるまでに受けた教育に由来します。昨今の教科書を見ると、驚くほど図が多用されカラフル。かつ大事な部分にはアンダーラインまで引かれています。

そのような教育環境から社会に入りいきなり指示が口頭だけ。それを聞き漏らさないようにすることからスタートとしなければならないのは、ギャップが大きすぎるのではないでしょうか

社会人となり、認められたい、貢献したい、という思いを持つ一方、やっていけるだろうか、本当に自分に向いている仕事だろうか、と気持ちが揺れ動いている時期に、聞き漏らさないように意識を集中し、大事なことが何か手探りの状態の中でやったことに対し、「ここが出来ていない」「あそこが出来ていない」「どうして確認してこない?」と、日々言われれば、誰でも落ち込み心を閉ざします。

心を閉ざした状態では、自分から進んで確認や質問はしなくなります。言われたことをやることに精一杯。指摘を受ければ「ちゃんと言ってくれればできるのに」という気持ちばかりが膨らんでいきます。

「できる」「大丈夫」で信頼関係を築きながらスキルアップを目指す

一方で、いつまでも明確な指示を求める状態でもいけません。そこで大事なことは、指導を段階的に設計し切りかえていくこと

最初のうちは、指導する側と受ける側での信頼関係を築く時期。ある程度「できる」「やれる」「大丈夫」、であると、自信をつけてもらうことや部下や後輩の能力を把握することに重点を置きます。そして、ある程度信頼関係が出来てきたら、徐々に確認することの重要性を伝え、確認すべきこと、自分で考えるべきことの範囲を増やしていく。段階的に取り組むと効果があがりやすくなります。

明確な指示を出すことで、チーム全体の生産性が向上

明確な指示を出すことに対して、上司や先輩は、指導をする上での準備が増えて大変に感じるかもしれません。しかし、部下や後輩がそれほどズレずに動いてくれて、モチベーション高く取り組んでくれたら、結果としては自分の時間を有効に使え、チーム全体の生産性も高まります。長い目で見たときの効果は大きなはず。

そのためにもまずは、

①ビジュアルイメージを伝える
②期待水準を5W3Hで伝える
③確認のタイミングを設ける

という3つのポイントからスタートしてみてはいかがでしょうか。

【参考情報】
コミュニケーションの責任を誰が負うか “受信者責任”から“発信者責任”へ
上司に感じるストレス第1位「指示が曖昧」への、上司/部下それぞれの対処法は?

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