組織能力向上エンジンとしての人財部門へ
人財部門として揺らいではいけない『戦略』とは?
初回記事「『人事部、不要!』とはどういうことか?」では、人財獲得競争の激化について、5つの観点から解説しました。 既に『優秀な人財が働きたいと思う企業』として認知されていれば、「(個人には、主体的に能力開発に取り組むかどうかを選ぶ自由があると考え)組織としては人財を育てる努力はしない」という選択肢があるのかもしれません。一方、総務省「平成24年経済センサス」によれば、日本の企業のおよそ99%は中小企業であり、その大多数は、『優秀な人財が働きたいと思う企業』として広く認知されているとは思えません。今回は、「戦略」として「人財は育てるか?育てないか?」について、生態学的観点から検討してみましょう。
生態学には「生存曲線」という概念があります(図表1)。 ヒトや多くの大型哺乳類のように「少数の子を産んで、子の世話をよくして、成熟するまでの生存率を増加させる」という生存戦略を採るものは「Ⅰ型」、カキをはじめ多くの無脊椎動物や一部の魚のように、「多数の子を産み、ほとんどあるいはまったく子の世話をしない」ものは「Ⅲ型」、一部の無脊椎動物、トカゲやげっ歯類などは、「生存率が生涯を通して一定」で「Ⅱ型」と呼ばれています。
また、小さな体で短い寿命の動物の多くは、(栄養素などの制約が少なく、競争が少ないといった)生存に適した環境の下であれば、「指数関数型成長」を遂げて、生育地を素早く占有します(図表2)。 一方、ほとんどの環境では個体群成長に必要な資源に制限があるため、個体の成長率は環境収容力に近づくにつれて減少します(ロジスティック型成長)。資源をめぐる競争は、環境収容力に近い環境で激しいため、子供の生存より自分の生存にエネルギーを投資する生物が生き残ります。
ここで、「組織=個体群、個人=個体」として、企業の「人財・組織戦略」について考えてみましょう。
図表1の「Ⅲ型」は、「個人が自力で生きる」ことを前提とし、「個々人の雇用よりも、組織の存続を重視する」戦略です。そのため、「組織は、非常に優秀な人財だけを獲得・保持する仕組み」を構築し、「自分で市場価値を高め続け、熾烈な競争を勝ち残る実力を身につけた一握りの人だけが雇用される」状況となりがちです。 一方、「Ⅰ型」は、「個人を育成するために関係者が充分な働きかけを行う」ことを前提とし、「長期間に渡り、環境を整え、愛情を注ぎ、ストレッチを促し、組織と個人の方向性について整合性を図るなどして、優秀な人財が発生する確率を高める」という戦略です。結果として、「組織や仲間への愛着」が生じやすくなります。
図表2の成長曲線を見てみましょう。 イノベーションを興し、競争のない未開拓市場を切り開いていく戦略(ブルー・オーシャン戦略)が採れる間は、「指数関数型成長」を遂げることができても、複数のイノベーションを次々と興していけるかどうかはわかりません。 また、自社が競争の激しい既存市場(レッド・オーシャン)にあり、環境収容力の限界に近ければ、後継者や若手を育成するよりも、短期的視野に立った生き残りに必死になりがちかもしれません。
もちろん、図表1, 2は単純化したモデルでしかありませんし、今後の方向性を検討する際のひとつの側面くらいに捉えればよいのですが、経営陣と人財・組織部門の人々は、(例えば、人財育成にしっかり取り組む会社なのか、それとも、短期間かもしれないけれど即戦力に対して高額の報酬を提供する会社なのかなど)自分たちの方針を定め、全社で意識共有を図っておくことが大切ではないでしょうか? 「柔軟にアプローチを変えるべきルール」も数多くあると思いますが、「人財をしっかり育成するかしないかといった方針は、人財部門の担当者の異動などによってコロコロ変わるようではマズイ性質の戦略方針」だと、弊社では考えています。
『各部門』の収益向上に日々邁進している人々とは異なり、『経営陣と人財・組織部門の人々』は、全社~事業~機能などに渡る各種戦略を統合した視点から捉え、『現有能力で可能なことを実施する』だけではなく、『組織能力を伸ばし、市場競争力を高めていくために重要と思える取り組みを実施する』ことが責務であると、弊社では考えています。
人財育成と組織開発に関係の深い「戦略」について、あなたの所属組織では、今後どういった方針を持ち、具体的にどんな活動をしていくのが良さそうでしょうか?
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