【第14回】研修マスターの6つ星“指南術”

仕事で良いチーム作りをするために、大切なのは「心理的安全性」

新年度がスタートして1ヶ月。チームメンバーの特徴もわかりはじめ、年度目標達成に向け本腰を入れていきたいGW明け。メンバーの気持ちもリフレッシュしているこの時期は、チームのムードづくりに最適なタイミングです。そこで今回は、チームリーダーとなる人に研修などを通じて知っておいてもらいたいことを紹介します。

「ほめられた経験」を聞かれ、沈黙する若手社員

入社から一定期間経過した若手社員を対象とした研修では「上司や先輩からどんなことでほめられましたか?」と問いかけることがあります。すると、ほとんどのメンバーが「ほめられたことあったっけ……」という表情を浮かべながら天井を見つめます。

反対に「注意を受けたことは?」と問いかけると、「報告が遅れたとき」、「納期が守れなかったとき」など、具体的に話します。

さらに、リーダー職である上司や先輩社員の研修では、どのようなタイミングでメンバーとコミュニケーションを取るか問いかけると、日常会話以外では、「気になることがあったときに聞いたり、話をする」と言います。つまり、コミュニケーションの中心は、日常会話かマイナスの事象があったときということです。

問題は「マイナス」中心のコミュニケーションにある

このようなコミュニケーションに対し問題を感じる人はそれほど多くないでしょう。しかし昨今、多くの組織でハラスメントやメンタルヘルス、そして休職、離職の問題が増加しています。上司や先輩は「メンバーが過剰に反応する」、「メンタルが弱い」と感じられているようで、「言い方、伝え方にはとても神経を使う」、「コミュニケーションが難しい」と言います。

しかし実は、本当の問題は「コミュニケーションが、日常会話かマイナスの事象が起きたときにしか行われていないこと」にあります

Google社が調査! 生産性が高いチームに必要なのは"心理的安全性"

そのようなコミュニケーションの問題を具体的に示した調査報告があります。それは、米国Google社が自社内の多数のプロジェクトチームと所属メンバーを対象とし、労働生産性の高いチームの共通点とその因子を導き出した調査「プロジェクトアリストテレス」です。「プロジェクトアリストテレス」は、2012年から2016年の4年間にわたり行われました。その結果として、生産性の高いチームには5つの共通要素があったそうです。その中でも最も重要なのは「心理的安全性が担保されていること」であったと結論づけています。

「心理的安全性」に必要なのは、肯定的なコミュニケーション

それでは心理的安全性とは、どのような状態を指すのでしょうか。具体的には、以下のような状態を指します。

  • チームにおいて必要とされている(あるいは存在が認められている)こと
  • 自由に発言ができる(馬鹿にされたり、揚げ足をとられることがない)こと
  • ミスや失敗に対し寛容に対処する(相互にフォローし合う、次につなげる)こと

まとめれば、相互に肯定的なコミュニケーションが取られている状態が重要だということです。

相互に肯定的なコミュニケーションを取ることが心理的な安全性に影響するのであれば、マイナスの事象が起きたときに取るコミュニケーションは、よほど前向きに対応をする必要があることがおわかりいただけるでしょう。しかし、現在行われているコミュニケーションの多くが「本人の反省を促すこと」で留まっている職場は多いのではないでしょうか? そうした職場では、メンバーは萎縮し、その状態が続けば、休職・離職といった問題に発展しやすくなります。もともとの原因は自分の側にあるにもかかわらず、管理職やリーダーは、若手側のメンタルの弱さやコミュニケーション力のなさに「近頃の若手は・・・」と吐露するのです。

「表情を観る力」をつける

それでは、現状のコミュニケーションをどのように変えていけばいいのでしょうか。私は、生産性の高いチーム、風通しの良いチームをつくるためのリーダー研修を実施する際、次のことを実践していただいています。

研修では「メンバーの顔を描く」ワークや「メンバーの好きなもの(こと)・嫌なもの(こと)を書き出す」ワークを行います。すると、よくわかっているメンバーのことは描け(書け)、よく知らないメンバーのことは描けない(書けない)ことに気づいていただけます。そのことに気づいていただいた後で、管理職やリーダーには、コミュニケーションを取る際に、2つのことを職場で実践します。

チームメンバーを知るために必要な「2つのアクション」

1つは、出社時と退社時に「声をかける」こと。出社時は「おはよう」、退社時は「また明日」。

そしてもう1つは、声をかけるときに「身体を向けて表情を観る」こと。表情を観ることを続けていると、元気があるのかないのか、困っていることがありそうなのかどうか、など、本人の様子から察知することができます。実は、察知することができていると、何かコトが起きてから対応する必要がなくなります。いわば注意する必要があまりないのです。注意するにしても、軽度で済み、する側もされる側も気分的にラクです。

さらに付け加えると、出社時と退社時の「声がけ」と「表情を観る」。この2つのアクションは、実は「相手の存在を認める行為」でもあります。これを続ければ続けるほど、メンバーは「大事にされている」、「認められている」と無意識に感じ、本来の力を発揮しやすくなります。

当たり前のことを地道に続けることが、良いチームをつくる

世間に名を残す経営者やリーダーのエピソードに、誰よりも早く出社し、社員に声をかける話などがありますが、知識の有無にかかわらず、人がどんなときにやる気になるのか、その経験から知っていたのかもしれません。

生産性や風通しの良い組織というと、何か特別な秘訣があるのでは、と、それを知りたくなりますが、実は誰でもできる当たり前のことを、地道にコツコツ続けられるかどうか。ここに秘訣があるようです。

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