仕事がデキる人事・総務のビジネスメール術(Web版)

【第10回】SNS全盛時代におけるメールコミュニケーションのあり方と注意点

ここ数年、コミュニケーションツールが多様化しています。SMS、Facebookメッセンジャー、LINE、ChatWork やSlackといったビジネスチャットなどを、社内コミュニケーションのために利用することがあれば、お客さまからメール以外のツールを指定されて導入することもあります。いずれも安易に使うと思わぬ事故を引き起こします。今回は、これらのツールを使用する際の留意点や、メールとの併用を含め、どのように使いこなしていくべきかについて解説します。

メールは別のコミュニケーションツールに取って代わられるのか

これまで、対面以外のコミュニケーションといえば、電話やメールが主流でした。しかし、ここ数年、それ以外の手段を使うケースが増え、社内ではメールをよりビジネスチャットツールを使うケースも目立っています。

チャットツールなどが使われるようになった背景には「効率重視」があります。この連載でもたびたび解説していますが、メールは状況や相手に応じてさまざまなスキルや理解力が要求されるため、コミュニケーションの難易度が高くなるのです。
具体的には、一般常識やマナー、場面に応じた言葉の選択、相手の理解力を推し量るスキル、読みやすいレイアウト構成力、文章力、日本語力などが必要になります。

文章力がないためにメールを書くことが億劫になる。敬語やマナーで悩む――。これらの要素を排除し、コミュニケーションをシンプルにしたのがチャットツールです。

チャットツールで伝える場合は、メールに比べると情報量を減らせるため、作成時間を短縮できます。
最低限の用件をシンプルに伝えればよく、内容の常時チェックが前提になり、やりとりのスピード化が求められるため、挨拶や署名は不要。丁寧な表現で書けば十分です。

確かに、このようなツールに100%移行できれば、業務効率はよくなるかもしれません。しかし、社外のお客さまや取引先に、自社指定ツールを強制的に利用してもらうことは難しいでしょう。社外の人とのやり取りが続く場合は、メールとの併用が前提になります。そうなると依然としてコミュニケーションの中心はメールのままでしょう。

このような観点から、メール自体はなくならないと考えています。特に目的や理由がなければ、メール以外のツールを無理に導入する必要はないでしょう。

社内のコミュニケーション量が多い、現場のライティングスキルが低い、または、短文でのコミュニケーションでも誤解を招いたり感情の衝突が起きたりしにくい状況である場合や、社内のコミュニケーションのみで使う目的なら、チャットなどのツールの導入は効果的とも言えます。

ツールにより求められるテイストが異なる

『営業や顧客サポートなど社外のやり取りでも、直接対話の機会は減り、SNSを利用したサービスが主流になりつつある。』(AERA 、2017年10月30号)という記事を見かけました。ただ、この記事を鵜呑みにするのは早計です。

ここで紹介されている住宅展示場の営業マンの話では、LINEを使ってお客さまの情報を取得しているそうで、その取得率は、以前の2倍になったようです(成約率については、触れていませんでした)。

お客さまは、住宅展示場にある、たくさんの工務店を回ります。すべての営業マンに個人情報を出したら、たくさんの営業を受けることは目に見えています。

メールでの連絡中止を求めるのはなかなか難しいですが、LINEは比較的簡単にストップ(ブロック)できます。そのため、お客さまは(しかたなく)LINEを教えているのかもしれません。メールでのコミュニケーションが嫌われているわけではありません。

もし、私なら、メールアドレスを最優先で聞いて、教えてもらえなければLINEを聞くでしょう。それと同時に、お客さまが好んでいる、求めている、コミュニケーションツールを確認します。

お客さまが求める限り、コミュニケーションのチャンネルは増える可能性があります。その一方で、LINEやチャットツールなどでの対応まで手が回らなくなり、撤退する企業も多数見受けられます。

メール、LINE、SNS……。それぞれ求められる文体や使い方が異なります。その使い分けができず、優先順位をつけた結果、メールのみにした企業もあります。

個人差はありますが、自動車や住宅などの高額商材を扱っている企業の営業マンが、LINEでペコリとスタンプを送ってきたら「ふざけている」と感じるかもしれません。
お客さまがスタンプを送ってきたからといって、スタンプを安易に返していいかは考えるべきです。相手との距離や相手が求めているトーン&マナーを把握して、バランスを取れなければうまくいきません。

ビジネスメールには求められるテイストがあり、仕事で使うツールとしての共通認識となるトーン&マナーがあります。
ビジネスメールの文章を軽くするといったら、どの程度なら許容されるかは比較的イメージがしやすいと思います。メールを利用してきた経験から、ある程度の目安を持つことができるからです。

ビジネスシーンでSNSを使って良いかを教える必要も

多数のツールを使い分ける場合、メールファーストになる企業は多いようです。LINEなどのツールが向くのは、以下のケースに限られてくるでしょう。

・完全に1対1(信頼関係ができている場合)
・企業にちょっとした質問をしたいとき(個人情報を出したくない場合)

「○○の在庫ありますか?」「○○の手続きが分かりません」というような、お客さまからの質問への回答は、手軽に使えるチャットツールも向いています。会話のように返事ができるものは、チャットツールで対応してもよいでしょう。

LINEの場合は、QRコードや赤外線を使うことで、電話番号やアドレスなどの個人情報を伝えずにやりとりを始められます。取引先の担当者との連絡(個人対個人)であっても、「LINE@」のように企業アカウントでのユーザーとの連絡(法人対個人)であっても、個人情報を出さずに気軽に質問ができる点がメリットとも言えます。

しかし、営業マンからの連絡を、チャットツールで始めていいかは判断が分かれるところです。結局、相手が通常、何を使ってコミュニケーションをとっているかが手段の選択基準になるのです。

SNSは、個人のアカウントとして開設したものを、仕事で使うケースがあります。その際、個人のSNSで発した情報が、会社のオフィシャルの情報と捉えられることもあります。社員が退職した際は、顧客との関係(つながり)を外部に持ち出すことにもなりえます。場合によっては、ライバル会社に転職して、そのまま営業することも考えられます。

SNSを仕事として利用することを許すべきなのか、会社でそれらのツールを提供するのか。退職したときのリスクや情報漏洩のリスク、そういった教育も、同時に必要になるでしょう。トラブルを事前に予測し、対処方法を教えることも、SNS全盛時代の世代を生きる企業には求められます。

コミュニケーションは相手が求めるものを使う

お客さまがメールを送ってきたらメールで返答するのが基本です。営業マンから「連絡はすべてLINEでお願いしています」と返答することは、まず考えられません。コミュニケーションは相手が求める手段で行う。これが鉄則です。

「ビジネスメール実態調査2017」では、仕事で使っている主なコミュニケーション手段の第1位は「メール」(99.08%)という結果になりました。メールを使っている人がこれだけいる以上、あと5年、10年は、メールが確実に活躍します。だからこそ、メールのスキルアップは不可欠。まずは、メールを使いこなせるようになることが、コミュニケーション力全般の底上げにつながります。

※一般社団法人日本ビジネスメール協会が実施している、日本で唯一のビジネスメール利用に関する実態調査。2011年から継続して行われている。2017年度は2,395人が回答した。

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