有給取得義務化に向けて メディプラス編
有給取得率が30%以上アップ 他社事例から考える「有給取得義務化」対策とは
2019.01.18
働き方改革法案の成立により労働基準法が改正され、2019年4月から、企業は年間10日以上の有給の権利がある社員に5日以上取得させることが義務化された。
※参考:働き方改革関連法 年次有給休暇の取得の義務化について
しかし、厚労省の調査によると、有給取得について「ためらいを感じる」「ややためらいを感じる」社員は全体の63.8%に上ることが分かった。さらに、ためらいを感じる主な理由としては「みんなに迷惑が掛かると感じるから」(73.3%)「職場の雰囲気で取得しづらいから」(28.2%)などが挙げられる。
※参考:「年次有給取得促進サイト」(厚労省)
上記のように、社員が有給の取得に抵抗を感じている中、有給取得率を向上させるために、企業ではどのような取り組みが有効なのか。有給取得率向上のための取り組みを積極的に行う企業の事例を基に、人事・総務担当者が取り組むべきことを明らかにする。
社員の有給取得を促す「ユニークな休暇制度」25例
昨今、独自の休暇制度の導入により社員の有給取得率向上を図る企業がある。今回は、その中でも一風変わった「ユニークな休暇制度」25例を以下の表にまとめた。
三連休のない月の第三金曜日に有給取得を推奨する「残念月制度」や、バーゲンに行くことを宣言すれば半休が取れる「バーゲンセール休暇」など、その内容はさまざまだ。是非、自社の休暇制度を検討する際の参考にしてほしい。
有給取得率が30%以上アップした「メディプラス」の取り組みとは
次に、独自の制度と役職の導入により、有給取得率を30%以上上昇させた「メディプラス」の事例と、同社チーフ・スマイル・オフィサー(CSO)を務める岡元朋子氏に実施したインタビュー内容を紹介する。
企業情報
・会社名:株式会社メディプラス
・住所:渋谷区恵比寿4-6-1 恵比寿MFビル2階
・代表者名:恒吉 明美(つねよし・あけみ)
・従業員数:45名(契約社員・アルバイトを含む)※2018年9月現在
・主な事業内容:オリジナルブランド化粧品「メディプラス」企画・開発・販売
有給取得率を向上させた3つの施策
メディプラスでは、社員の有給取得率向上のため、主に以下3つの施策を行っている。
ファミラブ休暇
2016年10月制定。年末年始・ゴールデンウィーク・お盆などの連休に休暇を追加して大型連休を設定。家族や自身と向き合う時間として、特別休暇を支給。
ファミラブweek
2016年10月制定。3月と10月、国民の祝日と連動して一週間、平日の労働時間を縮小。出勤時間をフレックス制にし、ノー残業デーとしている。この週は有給を取得しやすい環境を作り、家族のライフスタイルに合わせて過ごすことができる。
休みをマネジメントする役職「CSO(チーフ・スマイル・オフィサー)」
2015年設置。社員の残業時間や有給取得日数を把握し、管理する役職。
「CSO(チーフ・スマイル・オフィサー)」は、メディプラスが設置した独自の役職だ。忙しい社員に休みを「人生の上で、自分が大切に思っていることは何か。それを大切にできているか」に気付くためのきっかけにしてほしいという思いから、一緒に考える役割として設置した。
生涯の過ごし方を人生の最後からさかのぼって考え、計画を立てる“バックキャスティング”をベースにアドバイスを実施。2016年からは社員が1年間の理想の働き方や休み方を考えて作成する「有給ペース配分表」を導入した。CSOは社員ひとりひとりに面談しながら一緒に社員手帳の「有給ペース配分表」を作成する。
また、有給を支給するだけではなく、CSOと共に予定化することは「休みを主体的にとってもいいんだ」という保証にもつながっているという。
メディプラス CSO岡元 朋子氏インタビュー
さらに、有給制度の導入の経緯や、導入後の社内の変化について、同社のCSOを務める岡元朋子氏に話を伺った。
株式会社メディプラス チーフ・スマイル・オフィサー
岡元 朋子氏
学生時代より薬学に興味を持ち、大学では遺伝子工学を専攻。卒業後入社した化粧品メーカーで化粧品の研究販売業務を学び、その後「自分たちが使いたい商品を作りたい」との思いから株式会社メディプラス代表の恒吉と共に化粧品会社を設立。取締役副社長として、商品開発、パッケージデザイン、ウェブサイトや広告出版物制作、経理業務など、幅広い業務を執り行う。
妊娠出産を機に販売業務から退き、CSO(チーフ・スマイル・オフィサー)に就任。従業員の残業時間や有給休暇取得日数を把握管理し、ストレスオフ組織として、よりよい働き方を社員と共に探していく役割を担っている。
―上記3点の有給制度を導入した経緯とは。
弊社社長の恒吉が起業後10年目に体調を崩したことが大きなきっかけ。その時は業績も伸びていたが、この出来事は、どんなに充実していても「休み」がないと心も体も壊れてしまうという証だった。
そこから弊社が取り組み始めたのが「ストレスオフ活動(※)」で、CSOの有給マネージメントもその一環だ。長期的なワークライフバランスを向上し個人の幸福度を高めることを目的とし、またそれこそが会社への貢献度につながると仮定して始まった。
※日常に意識的に取り入れたいセルフケアを中心にストレスと上手に付き合っていくためのさまざまな活動
―制度の導入後に苦労・工夫した点とは。
当初は有給に対する認識も低く「そもそも有給っていつもらえて、いつ消える」から説明する必要があった。また、有給を消化することが目的ではなく、「自分が心身ともに休める」ことはどういうことか?を探しながら計画するようにしている。
―有給制度を導入したことによって、社内にどのような変化があったのか。
CSOの設置から有給取得率が大幅に変化した。
2014年度:32.9%
2017年度:60.2%
社員の休み方も変化し、海外に一人旅をしたり、家族と一緒に出かけたりと、“今、大切なこと”に有給休暇の時間を使う人が増えている。
―有給取得率の低迷に悩む企業や人事担当者が、今後重視すべきポイントとは。
一番大事なのは、会社組織として「休むことは悪ではない」という姿勢を社員に丁寧に説明、提示すること。担当者だけではなく、組織のトップ側が「本当にそう思ってる」ことが何より重要だと考える。
細かいことで言えば、
・充実した休みをとった人をクローズアップする(1人で海外旅行に行ってさまざまなもの見てきた、ずっと念願だった祖母との旅行を実行できた、寝て過ごしてたら逆に世間との繋がりが欲しくなって仕事したくなった、など)
・具体的な計画がなくても仮でスケジュールに予定を入れていただく
などが挙げられる。
さらに、「取得計画を立てて」と号令するだけでは足りなく、フォーマットを用意する。”書かせる”、”提出させる”を「今やりましょう!」と具体的な機会をつくることが大事で、例えば、講習会等で上司と共に予定に入れることなどが必要になる。
「休暇制度の導入」と「トップからの声がけ」が改善の一手になる
「ユニークな休暇制度」やメディプラスの事例から、休暇制度の設備によって、社員の有給取得率向上を促進できることが分かる。
しかし、制度を導入しても、依然として社内に「休みづらい」雰囲気があっては、社員は有給取得を躊躇してしまうだろう。上司や組織のトップにあたる人物が、積極的に休暇制度を利用する、休暇取得に前向きな姿勢を伝えるなどして、日頃から「休みやすい」雰囲気をつくることが重要ではないだろうか。
【文:@人事編集部】
【編集部より】有給休暇に関する記事はこちら。
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