中途採用新時代/本音を引き出す面接法
候補者の素顔を見抜くコンピテンシー面接とは?
2017.08.28
中途採用を成功させる最大のポイントは、面接で候補者を見極め、自社に必要な人材を見逃さないことです。候補者がどんな人材かどうかを判断するには、表面的な質問をするだけでなく、その人の考え方を深く掘り下げなければなりません。
どんな質問をすれば、相手の本音を引き出すことができるのか? 面接コンサルタントとしても活躍する株式会社リージョナルスタイル代表取締役の高岡幸生氏が、すぐに実践できる面接法を解説します。
1.面接とは何か
一言で言えば「過去の事実を掴むこと」である。人間は過去の囚人であると言われる。この世に魂と肉体を持ち生まれ落ちてから、今ここで面と向かい合うこの瞬間に至るまで、どのように魂を磨いてきた人物なのかを見極める場が面接である。
人間は生まれてから今日に至るまで、日々判断の連続である。朝起きてから眠るまでずっと判断を重ねる。いわば判断の集積が今日の自分を作っていると言える。ゆえに人間を見抜くには、その人物の判断の歴史を詳らかにすることが必要である。小学校、中学校、高校、専各・大学における学業・部活動・アルバイトなど、どのような目標を設定し、そこに向けてどういった努力をしてきたのか、あるいは社会人になる際の就職先選び、仕事、転職といったその人物の歴史を知ることが大切である。
こうした面接は「行動特性=コンピテンシー」面接と言われる。その人物の過去の印象的な出来事について掘り下げていき、仔細に聞くことで、その人物の行動特性(コンピテンシー)を知り、将来の行動を予測するという面接手法である。
面接ではエピソードを出来るだけ「具体的に」質問し、その人物の過去の「行動」「判断」がリアルにイメージできるまで掘り下げる。おかれた環境を確認することで、その取り組みの「難易度」をはかる。そうしてこの人物の「成果の再現性」を測定し、自社に採用すべきかどうかを判定していく。これが行動特性(コンピテンシー)面接である。面接ではこちらから伝えることは第二義であり、話を聞くことが第一義である。話を聞くことに時間のほとんどを割くべきである。そして話は思いと事実とに分けて聞く。
さらに面接は、その人の理解という目的の他に、その人を口説くという目的もある。人間は聞かれれば聞かれるほど口説かれていく。誰しも自分のことを理解し、自分のために行動してくれる人を好ましく思う。応募者を正確に理解しようという姿勢がまず共感を呼び、正確に理解する過程で人材は口説かれていくのである。
2.話はどのように聞くか
話は具体的に聞く。一つの質問への答えに対して数字や固有名詞を徹底して聞き、状況がイメージできるくらいにまですることが、お互いに満足のいく面接を行うポイントである。「儲かってまっか?」「ボチボチでんな」という商人同士の有名なやりとりには、抽象的な問いには抽象的な答えしか返らないことが象徴的に示されている。
例えば営業系の管理職経験者の場合、どのような経緯で会社に入社したのか、管理した組織の人数は何人で、戦略立案から具体的な打ち手などどこからどこまでが守備範囲だったか、さらにその人物の上司への報告はどんなで、業績に対する予実管理はどこまでやっていたのか、そして前職をなぜ退職したのか、その理由を聞いていく。
事実を事実として残し、判断する。これが面接である。事実とは過去の真実のことであり、名詞や数字で語られるものを言う。形容詞ではなく、誰もが聞いて納得の行く具体的な事がら。すなわち事実と数字が、もっとも正確にその人を判断する材料になる。
過去の事実しかその人間を語れないというのは、いくら面接で将来への夢や意欲を語っても、その背景である過去の事実がなければ、その夢や意欲が実現する可能性が保証されないからである。留学体験やスポーツにおける、誰もが感心する事実は、その後に新たな感心する事実を生み出すもとになる。精神的にも肉体的にも高い水準の達成感を得ている人材は、今後も新たな事実を生み出す可能性が高いのである。これを再現性という。
また面接では、聞きにくいことも具体的に聞きたい。「ほかに面接の進んでいる社名を教えてください」「その会社から内定が出て弊社からも出た場合はどちらを選択しますか」などの聞きにくいことこそ具体的に聞き、いまその場で対策を打つことが大切である。
3.中途採用の面接
前職の退職理由が主たる会話となる。その候補者が今度の転職で何を求めているかが、彼・彼女の「欲求」であり、その欲求に応える「提示」こそが「口説き(フォロートーク)」となるからだ。それゆえ「同じ退職理由を繰り返させたくない」というスタンスを伝えることが、腹を割った効果的な面接になる第一歩となる。
候補者と良好な関係を築くことが採用結果をもたらすかのような錯覚があるようだが、採用面接で大事なのは入社後のマネジメントの方向性を聞き出すことである。つまりマネジメントでこの人物を戦力化できると踏んだら採用すべきなのだ。自社が欲しいように全てが揃った人材など簡単には出会えない。そう思ったほうがいい。「少し物足りないがここをこうすれば戦力になる」そう思えたら積極的に採用すべきなのだ。
4.面接で気をつけたいこと
面接の鉄則としては印象(見た目、資格、知識)だけで採用しないこと。勘で採用してはいけないが、採用する根拠を見出せるならその勘のとおりにすること。迷ったら採用してはいけないこと。面接の場で結論を出す(後から考えても結論は出ない)ことなどが重要である。
また面接で陥りやすい間違いがいくつかある。面接者自身との比較で判断をするケース。個人的な好き嫌いで合否の判断をするケース。また、何かひとつでも優れた点(応答、発言、容姿、風貌)があったらすべてが優れていると判断してしまうケースもよくある。履歴書の文字が丁寧で几帳面なので、性格も几帳面だと判断するということもよくある。文字を見ただけで性格はわからない。
5.内定の出し方
採用競争が激化しているため、せっかく内定に至っても辞退となるケースが増えている。辞退を防ぐには、内定を出すまでの過程を見直す必要がある。内定の出し方そのものもさらに重要である。
内定を出すまでには、お互いの情報を収集する時間を十分に取らねばならない。会って30分面接しただけで「ぜひ弊社に来てください」と口説かれても、口説かれているほうが「私の何を理解しているのか」と拍子抜けしてしまう。やはり経営者が何度も会い、できるだけ多くの社員も面接に立ち会い、お互いの納得感を深めることが重要である。
そして内定の出し方がさらに重要だ。内定を出す際に実践すべきこととしては、直接会うこと、握手をすること(これまで面接した人で握手攻めにすること)、本を渡すこと、“長い付き合いになるね”など後から断りにくくなるような殺し文句を言うこと、などがある。中小企業が電話一本で「○○さん、内定です、おめでとうございます」と言われても、「中小企業が何を上から目線で」と思われるのがおちである。
6.UIターン採用における面接
求人倍率が高止まりしている昨今、地方の経営者が着目している採用に、UIターン採用がある。2011年の東日本大震災や政権による地方創生政策の影響で、以前よりは人の流れができているが、目に見えてUIターンしている人が増えている状況にはない。
UIターン転職には2つの大きなハードルが存在する。一つは「求人情報の不足」。これだけネットが普及しても、UIターン転職を検討できるレベルにまで地方の求人情報を集めるのは至難の業。そもそも大手転職サイトは、広告出稿料金が地方企業にとっては高額なため地方の求人が集まりにくく、東京本社の営業案件ばかりという状態だ。一方、人材紹介会社は成功報酬型の料金体系のため、企業にとっては求人を預けやすい。ゆえに地方では人材紹介会社により求人が集まる傾向にある。「地元の無名な企業には怖くて応募できない」「そもそもどうやって探すの?」といった悩みをお持ちのUIターン希望者は、具体的な相談ができることからより紹介会社に集まる。
もう一つのハードルは「給与水準の低さ」である。転職活動が始まって、内定通知書が出て初めて年収がわかるが、年収の下がり方に愕然とすることもよくあることだ。奥様の反対にあってUIターンを諦める方も多い。UIターン転職に関わるコンサルタントは「地方の年収水準はどのくらいなのか?」「生活できるか心配」このあたりの質問に丁寧にお答えするところから転職サポートを始めていく。
ゆえに企業がUIターン人材と出会ったときには、このあたりへの気遣いが重要なポイントになる。おおまかに言えば、待遇、仕事内容、業界・会社、労務環境、職場環境といったところだろうか。つまりUIターン転職で「得るもの」「失うもの」を整理してあげたうえで、地方で働くことの意義・価値を伝えていく。
地方出身の人は誰しも「培ってきた自分のスキルを地元で活かしたい」「せっかくなら故郷に恩返しがしたい」との思いを持っている。それでもせっかくUIターン転活動を始めて内定が出て、提示された条件では「失うもの」が多いと、なかなか意思決定できなくなる。希望条件に優先順位をつけてもらい、配偶者や家族の合意を得てもらい、何かを得ようとする為には、何かを捨てる勇気が必要という世の習いを理解いただくこと。
これらを転職活動の最後までぶれずに持ち続けられるような求職者であれば、UIターンは成功するだろう。すぐの転職を希望している人はともかく、1年先、2年先のUIターンを希望する人も多い。面接する側が気配りをしながら丁寧に希望を聞き出すことが大切だ。そして気の長い採用活動になることを覚悟せねばならない。
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執筆者紹介
高岡幸生(たかおかゆきお/株式会社リージョナルスタイル 代表取締役) 北海道大学卒業。1991年株式会社リクルート入社(自社採用2年、採用実務コンサルティング15年)。福島県に営業所立上げ、新潟支社長、北海道から沖縄までの東名阪を除く30道県の事業部長。2008年Uターン転職専門の人材紹介会社・リージョンズ株式会社を札幌市に設立、2009年Uターン転職専門の人材紹介事業をフランチャイズ展開する株式会社リージョナルスタイル設立に参加、代表就任。Uターン転職のための人材紹介事業の全国展開を開始。著書「採用を変える、組織が変わる」(2009年、エイチエス出版)。
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