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中途採用新時代


「採用の教科書」著者が教える、採用で失敗しないために必要なこと

2017.08.21

  • 採用
  • 経営・人事戦略
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慢性的な人材不足で、新卒、転職者の「売り手市場」が続く昨今。採用環境は厳しくなり、特に中小企業では人材採用に悩む声が多く聞かれるようになっています。そこで今回は『採用の教科書』シリーズ著者で、中小企業の採用支援を専門とする人材採用コンサルタント・稲田行徳氏から、採用を成功に導くコツをご紹介いただきます。

採用で失敗しないために、押さえるべき3つのポイント

筆者は中小企業の人材採用に特化した社会保険労務士事務所を設立し、経営者や人事の参謀役として採用活動を支援したり、大学の入試面接を入試担当教授と構築したりしています。

採用がうまくいかず困っているという経営者と話をすると、「うちの業界は人気がないから応募者が少ない」「応募があってもロクなのがいないけど、背に腹はかえられない」「面接の時はいい人材だと思ったが、採用してみたら違った」といった声をよく聞きます。しかし、こうした愚痴や悩みは企業側の“言い訳”です。応募者に責任を転嫁していては、自社の採用活動が改善されることはありません。以下では、採用で失敗しないために押さえるべき3つのポイントをご紹介します。

1.選考準備

「人が欲しい」と思ったとき、最初に行うことは何でしょう? 多くの読者が「求人広告を出す」と答えます。しかし「採用=求人広告」という発想になった瞬間に、採用は失敗します。誰もが思いつくような求人広告媒体をいくら見直しても、採用で成功することはありません。

今から話すことを実践してください。

まず、「今読んでいるこのページを閉じて、周囲を360度見渡してください」
その後、「赤いものを探しながら、同じように360度見渡してください」

先ほどと見え方が違いませんか?

人間の目というのは、「見ようと思っているもの」や「見たいもの」しか見えません。つまり、「赤を見よう」と思うことで初めて赤を探します。このように、事前に「○○を見よう」と決めていなければ、目に入っても見えません。求める明確な人材像もないままに面接や選考を行っても、良い人材を見抜くことはできないのです。

企業理念の明確化

求める人材像を明確にする前にやるべきことは「企業理念の明確化」です。「理念」とは今の組織の風土や考えの上にすでに成り立っているもののことを言います。その風土や考え方を文字にしましょう。企業理念が明確になると、それはそのまま他社との差別化にもなり、採用において応募者が会社を選ぶ理由になります。

ポイントは、理解しやすい言葉を使うことです。例えば「地域住民の生活を守る」という言葉だけでは伝わりません。「なぜ、その理念を掲げるようになったのか」という理由が大事です。経営者がどのような思いで始めたのか、その経緯を伝えることで、考えを知ってもらい、共感した人が応募します。

企業理念を明確にするためにしたやり方の例です。以下の質問に回答しましょう。

①  あなたの会社はどのような人たちのために、何を提供している組織なのか?
それを提供されたお客様に、最終的にはどのようになってもらいたいのか?

②  あなたの会社は何のために存在するのか?

③  地域や日本にとって、あなたの会社はどのように役立っているのか?

④  経営者は働いているスタッフの人生をどう考えているのか?

ここで作成された企業理念などを求人媒体でアピールすることで、その理念に共感した応募者が集まるようになります。理念に共感した応募者と、給与などの条件面で集めていた応募者では、明確に質が異なります。

求める人材像の設定

その後、人材像を設定します。「ウチの会社の理念はこれだ。大事にしていることはこれだ。だから、こういう人材が欲しい」このように理論立てて応募者に伝えられなければ、応募者の心には響きません。

現実にはこれらが不十分なまま採用活動をしているケースがほとんどです。だから入社後に「思っていた人と違う」といった雇用のミスマッチが起きます。

求める人材像の設定に関する誤り

筆者がコンサルティング先で「求める人材像は?」と尋ねると、ほとんどの経営者は次のように答えます。「やる気があり、コミュニケーションができて、行動力と協調性があって…」。こうした指標は漠然としすぎており、訓練しなければ選考で見抜くことは難しいと言えます。

面接で人を見抜くには専門スキルが必要なため、多くの人に会っている経営者でも、採用面接で人を見抜けないことは多くあります。しかし、視点を変えるだけで、高い面接スキルがなくても人を見抜くことができます。その視点とは「求めない人材像」つまり「一緒に働きたくない人材像」を設定することです。

求めない人材像

まずは「一緒に働きたくない人材像」を明確にします。先にNG項目を決めるのです。「求めない人材像」「会社や職場に合わない人材像」を列挙していき、それらの「求めない人材像」に該当しなければ、「一緒に働いて良い人材=必須項目を備えた人材」ということになります。

この必須項目を明確にした上で、「あるとなお良い条件(任意項目)」を加え、最終的に求める人材像を設定してください。なお、この条件を決めるときは自社の視点だけではなく、お客様の視点も忘れないようにしてください。求人広告を出す前に「企業理念」や「求める人材像」を明確にし、会社としての土台をしっかりと作ることが、採用を成功させる最短ルートです。

2.求人

本当に効果のある求人広告とは?

「採用の目的を達成するための求人広告とは何か?」を考えてください。中小企業の職場で長く働くということは、「会社や経営者を好きになってもらうということ」です。経営者のことが嫌いだったり、会社のことが嫌いだったり、ただ生活のための給与を払ってくれるだけの場所ととらえられていれば、モチベーションの関係から仕事ぶりにも影響が出るだけでなく、何より長くそこで働きたいとは思われません。つまり、「入社後に会社のことを知ってもらえばいい、好きになってもらえばいい。どういう社風なのかを肌で感じてもらえばいい」という考え方は誤りだということです。

採用の目的を達成できる求人の条件は「会社が求めている人材に、提供できるすべての情報を出し、ファンになってもらえること」。さらに「会社に合わない人材からは、この会社は興味ないので応募しないでおこうと思ってもらえること」です。この内容に合致しない求人は、採用に失敗する確率を上げます。

職場が好きで長く働いてもらうための求人方法

本当の良い求人とは、給与や福利厚生などの条件面をすべて消しても魅力のある求人です。例えば、

①  会社が存在する意義と今後進むべき方向を示す企業理念

②  経営者のこれまでの人生と仕事・スタッフへの想い

③  写真などの資料を使って具体的な仕事内容を示し、さらに仕事のやりがいを客観的に証明すること

これらの項目について、2,000字以上で書きます。こういう内容を求人の段階で伝えていないことが採用で失敗する確率を上げ、結果として会社を人材不足に陥らせます。

想いを込めた求人ページ

長く働いてもらえる人材を採用するための求人手法としては、自社ホームページをお勧めします。なぜなら、紙の求人媒体、就職ナビ系の求人サイト、ハローワーク・人材紹介会社にある求人票は、致命的とも言える「文字数制限」があるからです。制限により、こちら側が伝えたい理念や想いなどをすべて伝えることは難しく、掲載枠に入る情報しか求職者に伝えることができません。

筆者が実際に採用活動を支援する際、どの業種のどのような規模の企業に対しても毎回求人広告を使わず、その会社のホームページに追加した求人ページで採用活動を行います。ホームページでの採用は、初期の制作費用はかかりますが、長期的に見ると人材紹介料や求人広告費用が必要なくなる仕組みを作ることができるため、費用対効果は上がり続けます。

3.選考

準備で「求めない人材像」と「求める人材像」が明確になったのであれば、それらの各項目を選考で見抜く必要があります。例えばこのような感じです。

例)遅刻する人とは働きたくない場合

【ポイント】

・面接の際に遅刻はなかったか?

・何分前に到着したのか?

・これまでの職場での出社時間と就業開始時間の差

・あえて面接を就業時間と同じ朝早くに行う

・試用期間においても注意して見る     など

また、適性試験も検討しましょう。面接は人が人を見る以上、万能ではありません。面接が苦手な部分は他の選考方法でカバーするという考えが重要です。

面接を学ぶ

筆者は採用コンサルの際に、必ずその会社の経営者、役員、部長の中で、面接官として参加する可能性がある全員を集めて「面接官向けの研修」を開催します。なぜなら、質の良い応募者から応募があったとしても、実際に面接をする面接官のスキルが低ければ、優秀な人材を見抜くことができず、採用に失敗するためですすなわち、面接官のスキルの向上を無視した採用活動は失敗します。

実際、面接の手法は非常に奥が深く、それだけで1冊の本になります。しかし面接の手法というのは、つまるところ対話テクニックでしかありません。テクニックなどよりも前述の準備の方が重要であるということを常に頭においてください。

執筆者紹介

稲田行徳(いなだ社会保険労務士事務所 人材採用コンサルタント) 2000年長崎大学工学部卒業。社会保険労務士事務所、メーカー人事部を経て、2007年いなだ社会保険労務士事務所を設立。中小企業の新卒・中途採用支援を専門とし企業の採用戦略を構築する。メールマガジン【採用通信:本質】は、企業経営者や人事担当者など読者数3万人(http://www.sr-inada.jp/mensetsu/)。著書に「採用の教科書」シリーズ(ビジネス・ベストセラー出版)など。

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