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企業のリーダー育成はなぜ失敗するのか?

2017.08.09

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全米人材マネジメント協会(SHRM)は先ごろ、「今こそリーダーシップ開発をアップデートせよ(It’s Time to Update Leadership Development)」と題した記事を掲載した。著者は、同団体のリサーチ担当副社長のショナ・ウォーターズ氏。既存のリーダーシップ開発モデルの問題点を指摘し、組織固有のニーズに即した新たな取り組みに着手すべきと述べている。(以下、抄訳)

企業のリーダーシップ開発は「創造的破壊」を必要としている

ウォーターズ氏は、リーダーシップ開発について「人財管理分野において、今まさに『創造的破壊』を必要としている分野だ」と記事冒頭で表現。

多くの組織でリーダー教育が行き詰っている原因は「仕事の世界において、これまでの『派閥主義』や『階層性』が薄まり、組織で重視されることが『仕事の進め方(process)』から『文化(culture)』へと移行しつつあるため」と論じる。

SHRMが昨年発表したレポートでは、「自社のリーダーシップ開発プログラムはとても効果的」と答えた人事プロフェッショナルはわずか6人に1人しかいない、と指摘。

さらに「既存の開発プログラムは、社員個人の業績への好影響はあっても、組織業績の改善にはつながりづらい」とも述べ、この現状は「リーダーの育成に多くの資金と時間を費やす企業にとって残念な結果だ」とウォーターズ氏は話す。

一般技能を教えるだけでは、優れたリーダーは生まれない

組織のリーダー開発が実を結ばないのは、リソース不足や経営陣のサポート不足なども要因だが、ここにはもっと根本的な原因がある、とウォーターズ氏は主張。

それはリーダー開発プログラムが伝統的に、周囲を感化する方法や戦略考案のコツといった「一般技能(general skills)」ばかりを教える趣向が強いことだという。

こうしたいわば「リーダーの処世訓」的なプログラムは、その組織固有のニーズを度外視しているために、トレーニングを受けた個人の業績を短期的に改善することはあっても、組織の長期的な業績に貢献することはないとウォーターズは指摘。

さらにこの手の開発プログラムは非常にコストがかかるため、企業は必然的にその投資を選択的に行わざるをえず、「ポテンシャルが高い」と認知された一握りの社員しかその恩恵を受けることができない、とも述べる。

以上の経緯を踏まえて、ウォーターズ氏は「リーダーシップ開発のモデルと手法は、改革を必要としている。良いニュースは、SHRMの調査では人事プロフェッショナルの半数以上が、すでにプログラム改革に着手していると答えたことだ」と言う。

未来の職場のリーダーを育成する4つのヒント

ウォーターズ氏は、リーダーシップ開発研究教育を専門とする「Center for Creative Leadership」が挙げた4つの将来的トレンドを次のようにまとめている。

垂直的開発(Vertical development)

従来型のいわゆる「水平的開発」では、基本的スキルやコンピテンシーの強化を通して、社員の「現在の職務レベル」における知識や技能の幅を広げることを目指していた。この重要性に変わりはないが、不確実性が増す未来の仕事の世界においては、目の前の会社の置かれている状況だけから判断するのではなく、会社全体、国全体、世界全体から物事を捉え「より上位の複雑な職務におけるリーダーシップ能力」を築くことが重要になる。

個人的決定権(Individual ownership)

既存のリーダーシップ開発モデルは、人事を含めて組織側がイニシアティブを握るモデルだった。だが将来的には、個々の社員にトレーニングの内容やスケジュールを自己決定できる権限を与えていくことで、より高い効果が得られる。

集合的リーダーシップ(Collective leadership)

未来の職場においては階層性がより薄まり、流動性が高まるため、リーダーシップ・スキルをより多くの社員らに幅広く分散させていく必要がある。

革新(Innovation)

スピード感を持ってより多くの実験を行うことで、未来の新たな環境の要求に応えていく必要がある。

「様々な取り組みに手をつける前に、まずは自分の働く組織に固有のニーズを理解することだ。まっさらな状態から開発プログラムを再構築して、組織内で自然に発生する学習機会を活かすことにフォーカスするといい。大幅な改革を行うには、今が絶好のタイミングだ」とウォーターズ氏は結んでいる。

参考:It’s Time to Update Leadership Development (July 24 2017)|SOCIETY FOR HUMAN RESOURCE MANAGEMENT

翻訳編集=櫻谷知央

【編集部より】リーダーシップ教育について、この他の記事はこちら。

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