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コラム

労基法違反に係る企業名公表制度がついにスタート!


あなたの会社では労働時間の把握は適正に行われていますか?

2017.07.21

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2017年5月、労働基準法違反のあった企業名が初めて公表されました。労働時間の把握について、自社の方法に不安を感じている読者の方も多いのではないでしょうか。
今回は、特定社会保険労務士の藤原伸吾氏に、「労働時間の適正な把握」について解説していただきました。

目次
  1. 適正な労働時間の把握方法とは?
  2. 1.原則的な労働時間の把握方法
  3. 2.自己申告制による労働時間の把握方法
  4. 3.申告時間と客観的なデータとの乖離時間は最小限に

適正な労働時間の把握方法とは?

労働基準法では、労働者の労働時間を適正に把握することが使用者に義務付けられています。しかし、労働時間を本人の自己申告制としている場合に、労働時間を過少に申告するよう指導したり圧力をかけたりするなど不適正な運用の結果、過重な長時間労働や割増賃金の未払いなどの問題が発生しています。

とくに、昨年マスコミを騒がせた大手広告代理店における新入社員の過労自殺事件。この事件では、自己申告による残業時間が月70時間未満であったのに対して、実際の労働時間は過労死の労災認定ラインとされる80時間を大きく上回る100時間超えの月が連続していた事実が判明して問題となりました。

そこで、今年(2017年)1月20日に出された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」およびガイドラインに関する通達の内容をもとに、労働時間の適正な把握方法について見ていくことにしましょう。

1.原則的な労働時間の把握方法

前述のとおり、使用者には労働者の労働時間を把握することが義務付けられていますが、これは、単に労働日ごとの労働時間数を把握するだけでは足りず、労働日ごとに始業・終業の時刻を確認し記録することが必要となります。

ガイドラインでは、労働者の始業・終業時刻を確認する方法として、原則として次のいずれかの方法によることとされています。


①使用者が自ら現認すること

②タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎とすること

本来、労働者の労働時間を把握し記録する義務があるのは、労働者ではなく使用者です。ですが、上記①のように使用者がすべての時間を把握し記録することは現実的に困難な場合も少なくないことから、多くの企業では、上記②のようにタイムカードやICカード、パソコン等によって労働者に自らの労働時間の記録を義務付けています。

ガイドラインでは、②の方法のうち、パソコンの入力などによる場合、その記録を基本情報としたうえで、必要に応じて残業命令書や報告書などの記録と突合することによって実態との乖離がないかを確認することとされています。これは、労働者が勤務時間として入力した時間以外の労働、いわゆるサービス残業を防止するための措置です。

2.自己申告制による労働時間の把握方法

労働時間の把握を上記の原則的な把握方法によるのではなく、自己申告制によって行わざるを得ない場合もありますが、その場合、使用者は次のような措置を講ずることとされています。

(1)労働者本人および管理者への十分な説明を行うこと

使用者は、自己申告制の対象となる労働者に対して、ガイドラインの内容を踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うことが求められています。説明すべき事項として、労働時間の考え方や自己申告の具体的内容、適正な自己申告を行ったことにより不利益な取り扱いが行われることがないこと等が挙げられています。また、管理者に対しても、自己申告制の適正な運用を含め、労働時間の考え方等についても十分な説明を行うこととされています。

(2)申告時間と実労働時間の間に乖離がないかの実態調査および補正を行うこと

自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し労働時間の補正をすることとされています。

とくに、入退場記録やパソコンのログイン・ログオフのデータなど、客観的に事業場内にいた時間の分かるデータがある場合で、労働者の自己申告により把握した労働時間と客観的なデータによる時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、必要に応じて労働時間の補正をすることが求められています。

(3)申告時間以外の在社時間の理由を報告させている場合、その報告が適正かどうかについて確認すること

自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由などを労働者に報告させている場合には、その報告が適正に行われているかどうかについて確認することが求められています。

その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていると認められる時間については、労働時間として扱う必要があります。

(4)適正な自己申告を阻害しないこと

自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものであるため、使用者は、労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこととされています。労働時間の適正な申告を阻害する措置の具体例としては、下記の事項が挙げられています。


①労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めないこと

②職場単位の割増賃金の予算枠や時間外労働の目安時間が設定されている場合に、その時間を超える時間外労働を行った際に、賞与を減額する等不利益な取扱いをすること

③実際には、三六協定により延長することができる時間数を超えて労働させているにもかかわらず、記録上、三六協定の延長時間を守っているようにすること

また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払いなどが、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認し、その要因となっている場合には、改善のための措置を講じることが求められています。

3.申告時間と客観的なデータとの乖離時間は最小限に

近年、労働基準監督署による事業所立入調査の際には、自己申告の時間とパソコンのログやビルの入退室記録等の客観的なデータとの間に1日30分から1時間以上の乖離がある場合、その乖離時間について、実際に労働者が労働していなかったかどうか重点的に確認が行われるケースが増えています。その際、企業としては、乖離時間が労働時間でないことについての説明が求められることとなるため、乖離時間をできるだけ最小限にするとともに、在社理由を確認するなどの取組みが必要となります。

乖離時間が生じやすいケースとしては、個々の労働者の判断で、早めに出社して新聞を読んだりコーヒーを飲んだりしている時間や、終業時刻後の自主的な学習の時間などが考えられますが、労働時間であるかどうかが曖昧にならないよう、まずは不必要に早く出社したり、業務終了後にだらだらと在社したりすることがないよう指導を徹底するとともに、業務に必要があるものについては、事前の申請を徹底することが重要となります。

事例として、事前申請がない場合には、執務室への入室規制を行い、労働時間管理を徹底すると同時に、執務室の防犯体制や機密管理の強化に取り組む企業なども見られます。

今年(2017年)5月より実施されている労基法違反企業の企業名公表の措置や、昨年来、時間外労働の上限規制の法改正議論が進められる中で、長時間労働の問題については、本ガイドラインに基づいて監督・指導がよりいっそう強化されることが見込まれます。労働時間管理の実態について、この機会にあらためて見直しをしてみてはいかがでしょうか。

参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)(厚生労働省)
リーフレット『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』(同上)

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執筆者紹介

藤原伸吾(ふじわらしんご)(特定社会保険労務士) 社会保険労務士法人ヒューマンテック経営研究所代表社員。東京都社会保険労務士会理事。労働関係諸法令をめぐる企業の労務相談、就業規則等の制改定、M&Aにかかる人事労務面からの総合支援やグループ経営強化支援、IPO支援等のほか、トータル人事制度の企画・導入指導など、人事労務全般にわたるコンサルテーションを手がけている。『基礎から学ぶ賃金・賞与・退職金の法律実務』(経営書院)、『人事労務管理 解決ハンドブック』(日本経済新聞出版社・共著)など著書多数。

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