特集

働きやすい職場づくり~オイシックス編


「ママ社員」が働きやすい制度と環境を作り上げ、復職率100%を目指す

2017.07.14

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生産性向上が叫ばれる昨今。社員が安定的に高いパフォーマンスを発揮するためには、安心して働ける職場づくりが欠かせない。その根幹となるのは、人事制度・福利厚生制度だ。ライフスタイルが多様化し、働き方改革も進む中で、従来の制度や施策が見直しを迫られている。今、人事・総務担当者は何を改善し、どんな制度を作り上げれば良いのか。前回に引き続き、生産性向上や社員満足度を高めることに成功した制度を導入している企業を紹介していく。

産休・育休後の復帰率はなんと96%!~オイシックスの事例

産休・育休取得率100%、産休・育休後の復帰率96%。多くのママ社員が活躍するオイシックス(東京・品川区)で、この高い復帰率を支えるのが、Oi39(オイサンキュー)&Oi19(オイクキュー)と呼ばれるママ社員向けに用意された制度とカルチャーである。さらに2017年3月からは、育休を経て復帰する社員に向けて、育休復帰プログラムの導入を開始した。これらの制度は、出産や育児などライフステージの変化に直面する人を支え、パフォーマンスを最大化させることが、企業の成長につながるという考えのもと実施されている。人材企画本部人材企画室の井原邦博氏【写真右】と柴本沙恵氏【左】に話を聞いた

井原邦博(いはら・くにひろ)

オイシックス株式会社 人材企画本部人材企画室 室長。2012年入社。EC事業部を経て、2015年より人事に。採用教育、各種制度作りを担当。

柴本沙恵(しばもと・さえ)

オイシックス株式会社 人材企画室。2004年入社。カスタマーサポートを経て、2008年より人事に。2011年と2015年に1年間の育児休暇をとり、復職。その経験を生かした育休復帰プログラムを企画、施行している。

オイシックスの「働きやすい職場づくり」のポイント

  • 産休・育休取得率100%、産休・育休後の復帰率96%を支える制度がある。
  • 育休復帰後の際の不安を解消する「育休復帰プログラム」を設け、復帰する職場の上司や同僚に対する講座も用意。
  • とにかくまずトライアルでやってみる社風があるので新しい制度を実行しやすい。

ママ社員へ向けた柔軟な制度は、会社の成長のために不可欠

オイシックスは、有機・特別栽培野菜や添加物を極力使わない加工食品など、安全性に配慮した食品・食材を、インターネットを通じて宅配するサービスで急成長する企業。「子どもに安心して食べさせられる食材」をコンセプトに、働く女性や小さな子どものいる家庭を想定したサービスを展開しており、実際の顧客のほとんどを女性が占める。商品開発では、同じ視点を持った女性社員の声を積極的に取り入れ、最近は「Kit Oisix(キットオイシックス)」という、1回分の献立の主菜と副菜が時短で作れる商品をヒットさせている。

現在は社員約200名のうち半数が女性。ママ社員も増え、産休・育休を経て復職する社員も多い。同社はそうした社員が活躍し続けられるよう、制度などを柔軟に変更してきた。

「今まで、会社で成果を上げて働いてきた人材が、妊娠・出産をきっかけに働きにくくなってしまうと、結果的にその人の持っているスキルやノウハウを生かせないため、会社としてもったいないことになってしまいます。会社の成長のためには、柔軟に対応していくことが必要不可欠です」(井原邦博氏)

スムーズな職場復帰をサポートする「育休復帰プログラム」の実施

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2017年3月からは新たに「育休復帰プログラム」をスタートさせた

もともと、年に数回開催するブランド体感会(オイシックスが契約する生産者のもとへ社員が出向き、収穫や手作りの作業を通じ、自社ブランドを体感するイベント)などには、家族連れで参加できるという社風。育休中に、子どもを連れて会社に顔を見せに来る社員も多い。こうした風土の上に、東日本大震災の際、交通事情で出勤できない社員がいたことから、必要に迫られて構築したリモートアクセス(遠隔地から職場の情報ネットワークにアクセスできる)のシステムがあり、在宅勤務を可能にしている。また、子どもの急な体調不良などにも対応できるよう、2時間からの時間有給取得も可能。さらに育休から復帰する際、認可保育園に子どもが入れなかった場合、認可保育園に転園できるまで、保育料を会社が補助している。

こうした背景のなかで、昨年度(2016年4月1日~2017年2月10日)は約20名の女性社員が産休・育休に入った。社員の約1割にあたることから、復職希望者のできるだけスムーズな復職をサポートするべく、2017年3月から「育休復帰プログラム」を実施。復職前研修を行っている。

プログラムでは復職者が陥りやすい、子どもの体調不良による仕事の中断や環境の変化によるママ自身の体調不良、復職後の家族への不満など、あらかじめ想定できる事象に対し、その際の心構えや対処法をレクチャーする。また、上司や同僚向けにも「復職者受け入れの心得講座」を開くなど、双方の立場に合わせた内容になっている。

参加者は子どもと一緒に来社してもらい、講座中は講義に集中できるよう会社が手配したベビーシッターが子どもを預かる。あえてベビーシッターに頼むことで、子どもと離れる経験をしてもらうのも、復帰プログラムの一環だ。

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4月には初めて「復職式」を開催した

さらに4月には、会社から復職社員への期待と歓迎の気持ちを伝えるため、初の「復職式」を開催。復職に際して、改めてモチベーションを上げてもらうイベントとした。

今回の育休復帰プログラムを企画・実行したのは、人材企画室の柴本沙恵氏だ。2人の男児の母親であり、現在も”時短勤務”中の柴本氏が、自身の出産後、復職した際に感じた苦労や反省がプログラムに生かされている。

「長男を出産後に復帰したときは、仕事への意欲が強すぎて仕事を抱え込み、家族とも衝突。負のサイクルに陥りました。また、産休中に起こった東日本大震災が大きなきっかけとなって、社内の状況も仕事のスピード感も大きく変化していました。そのため、復帰から半年間は精神的にも体力的にも自分のペースがつかめず、苦しい時期を過ごしました。そうした経験をもとに、育休復帰プログラムは、復帰前から復帰後を含めた半年くらいを、初期段階のスパンと考えています。今後は効率的に仕事を進めるためのスキルを学ぶなど、マインドとスキルをセットにし、プログラムをブラッシュアップしていきます」(柴本氏)

復職率100%を目指すママ・パパ支援

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本格的な料理も味わえる社内バー

「当社はWebでものを売るというビジネスをやってきているので、『まずトライアルで実験してみる。良ければ実行・拡大する』という考え方が会社の社風としてあります。人事制度でも、”制度ありき”ではなく、問題に直面した社員の声を聞き、その都度トライアルし、良いものを制度化してきました」(井原氏)

仕事にプラスに働くことが前提ではあるが、兼業も認められている。夫の地方転勤に伴い通勤できなくなった社員は、全面在宅勤務を可能にした例もある。また、社内には商品開発のためのキッチンがあり、そこでは月に一度、アフターファイブに社内バーを開催。有志が料理を作り、社員間のコミュニケーション活性化を図っている。他にも、「パワーナップ」と呼ばれる仮眠をとるためのスペースや、集中したいときに籠るための「集中ルーム」も設置。社員主導で、良いと思われることを積極的に取り入れ、働きやすい環境を作ってきた。

経営統合を見据えた新たなサポートシステムが課題

オイシックスは2017年10月に有機・無農薬野菜販売の草分け的存在である「大地を守る会」との経営統合を行う。オイシックスではこれを第二創業と位置づけ、さらなる市場拡大を目指す。社員数は約2倍になり、社員のライフステージやニーズもさらに多様化することが予想される。

「創業当時はベンチャーとして、組織は20代を中心に構成されていましたが、16年の時が経ち、結婚、出産というライフステージの変化を迎える社員が多くなりました。今後は親の介護など、新たなライフステージを迎える社員も増えることでしょう。統合後を見据えて、多様な変化に直面する人のパフォーマンスをどう最大化できるかというのが、経営面での重要課題の一つです」(井原氏)

【2017年5月取材:聞き手・土井ゆう子、撮影・D.C.カンパニー】

企業プロフィール

会社名:オイシックス株式会社
各家庭に野菜を届けるサービスを行っている。野菜だけでなく、肉・魚、加工品など幅広い品目を取り揃えている。
所在地:東京都品川区東五反田1丁目13番12号 いちご五反田ビル(受付は4階)
事業内容:有機野菜などの食品宅配専門スーパー「Oisix」(おいしっくす)を運営
設立:2000年
社員数:205名(2016年3月末時点)
URL:https://www.oisix.co.jp/

【特集:働きやすい職場づくり】

執筆者紹介

土井ゆう子(どい・ゆうこ)(ジャーナリスト) インテリア雑誌の編集者を経てフリーに。インテリア、料理、旅など日々の暮らしの楽しみをテーマにしたものから、ビジネス関連まで幅広いジャンルで取材・ライティングを行う。「英国カントリーサイド 庭の美しいB&Bに泊まる旅」(NHK出版刊)、「大学生まれの食品 美味しいお取り寄せ」(双葉社刊)、「日経住宅サーチ 快適リノベLIFE」など多数手がける。

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