特集

働きやすい職場づくり~エウレカ編


制度に対して「甘え」がないのは社員と経営陣の信頼関係があるから

2017.07.07

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人事制度や福利厚生をベースにして、働きやすい職場づくりに成功している企業を紹介する特集の第2回。前回のサイバーエージェントに続き、今回は成功企業の事例としてエウレカを取り上げる。

目次
  1. 従業員にとって使いやすい制度導入のために~エウレカの事例
  2. シンプルに考えれば、必要なものは自然と見えてくる
  3. 「面倒」や「困っている」を起点にする
  4. 一気に充実させたファミリー支援
  5. 他社事例を徹底研究
  6. 「まずは自分たちが幸せでないと」

従業員にとって使いやすい制度導入のために~エウレカの事例

たとえ優れた人事制度・福利厚生制度を導入していたとしても、それが利用しにくい制度だとしたら意味がない。エウレカでは、社員と経営陣の距離が近く、制度の提案もフラットに言い合える。それが「従業員にとって使いやすい」制度の導入につながっている。新たな福利厚生制度を導入する際には社員へのアンケートやヒアリングを実施。社内に制度適用の当事者がいない場合は他社事例を参考にしている同社。その制度設計への情熱は参考になる部分が多い。経営管理本部人事総務部の進 真穂さん【写真】に話を聞いた。

進 真穂(しん・まほ)

エウレカ経営管理本部人事総務部 人事企画/デザイナー。2013年2月デザイナーとして入社。2016年人事総務部へ異動。

エウレカの「働きやすい職場づくり」のポイント!

  • 社員が成長するための投資を惜しみなく行い、海外カンファレンスへの参加費用も、全額会社が負担する。
  • 「キャリア支援」と「家族向け支援」を兼ねそろえた充実の福利厚生プログラム「baniera(バニエラ)」制度がある。
  • 社員同士がお互いの立場や状況を思いやり、制度を利用しやすい雰囲気を作っている

シンプルに考えれば、必要なものは自然と見えてくる

「風邪などで体調が悪いときに、ムリして働いても生産性は上がりません。しっかり休んで次の日に頑張ってもらうほうが、トータルパフォーマンスは上がります」
こう話すのは、エウレカ(東京・港区)人事企画担当の進真穂(しん・まほ)さんだ。恋愛・結婚マッチングサービスの「Pairs(ペアーズ)」を運営するエウレカでは、人事制度や福利厚生制度の構築は、常に「シンプルであること」を意識するという。

「せっかく作った制度でも、申請・承認フローが面倒で社員が使わないのでは、意味がありません。社員から『手続きが面倒』などの声があれば、フローを見直すこともよくあります」(進さん)

例えば、同社では社員がまだ数名だった創業当時から、有給の生理休暇を導入していた。理由は冒頭の通りだ。しかし、以前の休暇申請は〈利用者の申請→上長承認→人事承認後、システムに有給の生理休暇を付与→再度、利用者が申請〉と面倒なフローになっていた。

「申請が面倒臭くて取る気にならない」という社員の声を機に、フローは利用者の申請と上長承認のみで利用できる形に変更された。現在、女性社員のおよそ3割、生理痛のある女性社員のほぼ全員が生理休暇を取得している。

「面倒」や「困っている」を起点にする

エウレカで制度を新設・変更するのは、社員が面倒や手間だと困っていることが起点になることが多いという。それと同時に、社員がより成長できるための環境整備は、会社の「投資」として積極的に進めてきた。

米アップルの世界開発者会議「WWDC」や、米グーグルの開発者向けイベント「Google I/O」などの海外カンファレンスへの参加費用(航空券代、ホテル宿泊費、カンファレンス参加費)は、入社年次を問わず、会社が全額負担する。また、椅子は長時間座っても疲れにくい高級チェアに統一し、パソコンのスペックやキーボード、ソフトウェアなども業務に応じて自由に選べるようにしている。

「社員と経営陣の距離感が近いので、お互いに組織や事業の成長という共通の目標を見据えて『これがあるともっといいよね』とフラットに話せる環境です。甘える、制度に乗りかかるという感覚ではないですね」(進さん)

一気に充実させたファミリー支援

エウレカの福利厚生プログラム「baniera」の一例

2008年に創業したエウレカは、2017年5月現在、業務委託やインターン生を含め社員数は約130名、そのうち女性社員は約40名を占める。台湾、シンガポールにも現地法人を設立し、現在は、アメリカ、イギリス、オーストラリア、台湾、韓国、フィリピンなどの外国籍社員も約10名が在籍している。2015年にはM&AによりNASDAQ上場の米国IAC(Inter Active Corp)の傘下に入り、成長スピードはさらに勢いを増している。

これまでも福利厚生に力を入れてきた同社は、2016年6月、新たな福利厚生プログラム「baniera」(右図)を導入。英会話学習サポートなどのキャリア支援をさらに充実させるとともに、家族向け支援として、結婚・出産・育児支援などの新たな項目を追加した。
「病児シッターの無料利用」「妻が出産を迎えるときには3日間の出産応援休暇」などのほか、子どもや配偶者の誕生日には特別有給休暇の取得が可能で同社からのバースデープレゼントも贈られる。

「baniera」という単語は、古代ギリシャ語で「お風呂」の意味を持つ。お風呂はアルキメデスが浮力の原理を見つけた場所で、そのとき「エウレカ!(わかったぞ!)」と叫んだという有名な逸話がある。

福利厚生プログラム「baniera」の名前には、「エウレカでのひらめき・成長を支える場所になれば」との思いが込められている。

他社事例を徹底研究

エウレカ経営管理本部人事総務部 人事企画/デザイナーの進真穂氏

「社員が100名を超え、年齢やバックグラウンドもさまざまな社員が増える中、福利厚生をより充実させていこうと始動したのがbanieraプロジェクトでした」(進さん)
プロジェクトを推進してきた進さんは、デザイナー職から人事総務部に異動した直後に自身の妊娠が判明。「当事者として、これから出産・育児を行う自分が必要だと感じることを、社員とその家族のために制度として考えよう」と、制度設計に取り組み始めた。

これまで新たな福利厚生制度を立ち上げる際には、社員へのアンケートやヒアリングを行ってきた同社。しかし、家族向けの制度を立ち上げるタイミングでは、社内に当事者が少なかったため、進さんはまず徹底して他社の事例を調査することにした。人事交流会でも積極的に情報交換を行い、人事制度が際立つベンチャー企業や女性活躍が目立つ企業に は直接ヒアリングを申し込んだ。
「私が作りたかったのは、出産や育児、介護など、家庭の事情やライフステージの変化による”あきらめ”がない仕組みです。介護関連はまだこれからという部分もありますが、まずは当事者が増えてくる出産・育児を行う社員たちのサポート体制を中心に考えました」(進さん)

病児シッターの制度は、進さんがママ社員の多い企業にヒアリングを行った際に「とても助かっている」という声が多かった制度だった。「仕事が忙しい時期に子どものインフルエンザで会社を一 週間休まなきゃいけなくなると、もう本当に心が折れる。そんなことがきっかけで会社を辞めたくなることもある」。進さんはそんな切実なママ社員の声を聞き、病児シッター制度を取り入れることを決めた。

現在では、進さん自身も病児シッターを利用しており、その有難さを身にしみて感じているとのこと。育児休暇中でも、月に一度、上司との面談ができる「育休中1on1(イクワン)制度」や、重要な会議に出席ができる「イクカイ制度」を設けたのは、まさに当事者である進さん自身のこだわりだった。進さんは、産後半年で復帰する前に、2回ほど子ども連れで上司イクワンを実施した。

「自宅でずっと〝母〞として過ごしていると、ビジネスをする感覚が薄れてしまう。会社に来るだけでも感じられる”ビジネスの空気”があって、『ああ、私もがんばらなきゃ』と思えるんです。自分で作った制度に助けられました」(進さん)
イクワン・イクカイ制度では、ともに会社に子どもを連れてくることが許可されている。スカイプによる参加も可能だが、「育休中は完全に仕事から離れたい社員」も想定して、あくまでも制度の利用は任意となっている。

「まずは自分たちが幸せでないと」

「家族構成や通勤時間、仕事以外で抱える問題などは、一人ひとり違います。さまざまな制度がそれを必要とする社員たちに浸透しているのは、社員同士でお互いの立場や状況などの違いを思いやるからだと思います。誰かが喜べば一緒に喜ぶ。悲しめば一緒に悲しむ。そんな雰囲気なので、『あの人だけズルい』といった声はないですね」(進さん)

そんな社風には、同社が提供するサービスも関係しているかもしれない。結婚・恋愛マッチングサービスは、愛とテクノロジーを掛け合わせた「ラブテック」技術として、新たに注目されている。
「『世界中の人々の人生を豊かにするものを自分たちの手でつくり出す』が私たちのビジョンです。まずは社員とその家族の人生が豊かで幸せなものでなかったら、良いサービスを作れるはずが ありません」(進さん)

「どうすれば、社員が一番パフォーマンスを発揮できるか」の答えは「社員の幸せ」にある。同社の福利厚生の設計思考は極めてシンプルだった。

【2017年5月取材:聞き手、撮影・玉寄麻衣】

企業プロフィール

会社名:株式会社エウレカ
Facebookを利用した恋愛・婚活マッチングサービス「pairs」や、カップル専用アプリ「Couples」を運営。2015年5月にMatch、OkCupid、Tinder、Ask、About.com、Vimeoを運営する米IACグループ傘下になる。
所在地:東京都港区南青山2-27-25ヒューリック南青山ビル5・6F
事業内容:恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」、カップル向けコミュニケーションアプリ「Couples」の運営
設立:2008年11月20日
社員数:130名(アルバイト含む)
URL:https://eure.jp/

【特集:働きやすい職場づくり】


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執筆者紹介

玉寄麻衣(たまよせ・まい) 1979年生まれ。立命館大学政策科学部卒業。外資系大手人材派遣・人材紹介会社で、営業として主に中小企業の人材採用をサポート。その後フリーランスのライターとなり、人材採用、人材育成、大学教育、広報・PR、企業経営等に関する取材・執筆を行う。

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