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ダイバーシティ推進の落とし穴  異質な候補者は「公平」に評価されない

2017.06.19

  • ダイバーシティ
  • 女性活躍推進
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米経済誌フォーチュンは先ごろ、「アメリカの産業界がダイバーシティを決して理解できない理由(Why Corporate America Will Never ‘Get’ Diversity)」と題した記事を掲載した。著者は投資コンサルティング企業エレヴェストのサリイ・クラウチェックCEO。アメリカの産業界でジェンダー・ダイバーシティ(性別多様性)推進が大きな成果を挙げられない理由について、自社の採用事例を踏まえて解説している。(以下、抄訳)

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ダイバーシティ推進は「よく言っても、脇道に逸れている」

近年複数の研究により、社内のジェンダー・ダイバーシティを強化することで、収益率や従業員エンゲージメント、顧客満足など様々な業績指標が改善することが示されてきた。これにも関わらず、アメリカの産業界におけるダイバーシティ推進は、「よく言っても、脇道に逸れている」とクラウチェックは指摘する。

この原因について彼女は、次のように自論を述べる。

「我々は女性の地位向上をマクロ問題、つまり企業や産業や社会が取り組むべき問題としてとして捉えがちだが、実際には、ミクロな要因に大きく左右される」

そしてクラウチェックは自身の経験から、このミクロ要因の中でもインパクトの大きい要素として、「人間は無意識に自分と似た人に惹きつけられる」ことを挙げる。

「最も良識があり、多様性推進に肯定的な人ですら、この無意識の傾向からは逃れがたい」と彼女は言い、最近自社で起こった人材採用の事例を引き合いに出す。

異質な候補者と、親近感の湧く候補者は「公平に」比較されない

エレヴェスト社はあるポジションの採用にあたり、最終候補者を2人に絞った。候補者Aの女性は「モヒカン刈りの頭髪を含めて」社員の大半とは異質な存在だった一方で、候補者Bはこれとは対照的に、既存の社員と共通項の多い人物だった。

経営幹部や採用担当者の意見はほぼ二分しており、48%が候補者Aを推し、残りの52%は候補者Bを推していた。

だがクラウチェックによれば、このデータには落とし穴がある。この統計には「控え目に言っても誤差がある」と彼女は言い、その理由として「社員らは自分と共通項の多い候補者Bに、より安心感を抱いている」ことを挙げる。この無意識のバイアス(偏見)を取り除けば、実際には候補者Aの方がはるかに有望な人材である可能性が高かったという。

そこでクラウチェックは、候補者Aを採用して、社内の多様性をさらに促進することを薦めた。しかしパートナー(共同経営者)はその判断に与することに慎重な姿勢を示した。いわく、「マネジャー(直属の上司)に決めさせるべき。彼らは当社のダイバーシティ・ポリシーを知った上で、この2人の候補者を残したわけだから」。

そして採用チームは最終的に候補者Bを雇うことを主張した。

マイノリティが「余分に優れた能力」を要求される風潮

ここでクラウチェックは、候補者AとBのどちらを選ぶべきかという判断をいったん保留した上で、こう問いかける。「もしマジョリティの外側にいる人間(=マイノリティ、このケースでは候補者A)が、頭角を現すチャンスを得るために『余分に優れる』必要があると仮定するならば、私の問いはこうだ──彼らはいったい、『どれくらい』余分に優れた能力を示せば良いのか?

この問いに対する1つの回答として、彼女はハーバード・ビジネス・レビュー誌が掲載した研究を引き合いに出す。企業が新製品を発表した際の消費者心理を探ったこの研究によれば、「人間は今現在の所有物の利点を、未知の物と比較して、理不尽なほど過大評価する」という。研究者らはこれを「ステータス・クオ(現状維持)バイアス」と呼び、このバイアスは非常に影響力が強く、消費者は既存製品の利点を未知の製品より3倍過大評価する傾向があると述べる。

クラウチェックによれば、ソフトウェア企業インテルの創立者である故アンディ・グローヴも同じ趣旨のコメントを残しており、彼は「新しい製品は、既存の製品より10倍優れていなければならない」と述べた。

以上を踏まえた上で、クラウチェックは次のように問いかける。

「マイノリティや女性が、ビジネスで出世するためには人並み以上に努力して結果を残す必要があるとよく言われる。もちろん私自身もそのように感じたときはある。だが10倍というのは、さすがに条件が厳しすぎはしないだろうか?」

マイノリティの価値観は、本当に企業に反映されているのか?

上述した候補者選択については、エレヴェスト社は結局クラウチェックの鶴の一声により、候補者Aにオファーを出した。しかしながら、候補者Aは「エレベスト社には自分の価値観が反映されていない」という理由からオファーを辞退してしまった。

クラウチェックは次のように記事を結んでいる。

「これは私としては残念な成り行きだったが、改めて現実を突きつけられる教訓的な出来事だった。以来、我々は以前にも増して、熱心に多様性推進に取り組んでいる。成功するまで決して歩みは止めないつもりだ」

参考:Sallie Krawcheck: Why Corporate America Will Never ‘Get’ Diversity (June 5 2017)|Fortune

翻訳編集=櫻谷知央

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