企業コンサルタント大関暁夫の「組織と人事」
離職率の高い営業職、定着化のポイントは「営業のマニュアル化」
2015.08.07
定着率が悪い「営業職」
企業の経営資源3要素ヒト・モノ・カネのうち、一番扱いが難しいのはヒトであることは異論のないところでしょう。なぜヒトの扱いが難しいのかと言えば、ヒトの場合には「取り入れる(採用する)」、「管理する」という苦労以外に、抜けてしまうことを防ぐ「定着させる」という苦労が伴うからではないでしょうか。定着できなければ採用コストは増すばかり。従業員の定着率の低下は、企業収益圧迫の大きな要因にもなるのです。
この場合の定着率とは中途採用者の定着率ですが、実際に就業1年以内での定着率が5割を切るという中堅、中小企業は世の中にザラに存在します。なかでも定着率が悪いのは特に営業職。営業職の定着率向上は、多くの企業で悩みの種なのです。私に対する営業に関連するご相談でも、「営業実績の伸展」と「営業職の定着率向上」は不動のツートップです。
短期間で離職した営業職の一番の理由とは?
営業定着率に関して相談される方はたいてい、自社のノルマがきついから定着率が低いと思いがちなのですが、実はそうとも限らないのです。もちろん、ノルマの高さ、給与における歩合比率の高さ、勤務時間の長さ等が定着率に影響するのは否定の余地がない事実です。しかし、それとは別に重要なポイントが他にも存在するのだと言うことが、定着率向上のお手伝いをしたクライアント先での調査で分かりました。
調査は、過去6か月以内に退職した元営業職の人たちの追跡ヒアリングです。そこで分かったことは、短期間で離職する人ほどノルマや給与、勤務時間以上に思い悩んでいた事があったのです。それは、「実績が上がる気がしなかった」、別の人の言葉で言えば「何をしたら実績が上がるのか分からなかった」と言った悩みでした。このことが、彼らの離職意思を決定的にしていたのです。
さらに驚くことに、就業3か月以内に退職をした人でこのことを退職理由にあげた人は8割超と多く、他の企業でおこなった同様の調査でも同じ傾向が出ました。なかでもこの傾向が強い職種は新規営業です。
ルート営業の場合は、前任者からの引き継ぎ顧客で実績を上げられるケースもあり比較的、心が折れにくいのですが、一から自分ひとりの力での開拓を余儀なくされる新規営業は2か月、3か月と実績が見えないと、心が折れ「何をしたら実績が上がるのか分からない」という状況に陥って離職に追い込まれるというケースが多いのです。
解決策は「営業のマニュアル化」
では、この状況を打破するにはどうするのか。私の解決策は、営業のマニュアル化です。
「営業にマニュアル? 営業は個々のスタイルを重視すべきものであり、マニュアル化などナンセンスだ」、と思われる向きもあるかもしれませんが。それは間違いです。
営業実績を公式化すると、「営業実績=営業量×営業知識」です。要は営業量と営業知識をいかに増やすかなのです。そして、営業知識の中で最も重要なものは、営業基本スタイルです。
すなわち、その企業で営業実績を上げている営業マンのやり方(あるいは経営者が積み上げてきた自社営業の基本)を徹底的に分析して誰もが取り組めるノウハウに替え、それを営業基本スタイルとしてマニュアル化し、全ての営業マンに徹底させるのです。この徹底と一人ひとりの営業量を増やすような管理を実施すれば、営業実績が上がることは私の経験則から確実です。
マニュアルによって「何をすればよいか」が明確に
ではなぜ、この営業のマニュアル化が定着率の向上にもつながるのか。
それはこの営業マニュアルが、短期離職者の多くが口にしていた、「何をしたら実績が上がるのか分からない」という状況を打破できるからなのです。マニュアルを手にした営業社員は、まずこれを実践することに没頭することで、迷うことなく業務に専心でき、知らず知らずに実績を上げていくことができるからなのです。
離職率を下げ、採用コストの削減を
離職率が高まれば、それにつれて高まり、頭を痛めるのが採用コストです。
企業経営上ある意味余分なこのコストをいかにして下げるかは、人事部門の大きな命題でもあります。営業実績の伸展と営業職の定着率向上という2つの大きな悩み事は、実は同じ解決策で紐付けされるものなのだということを、何かの時に思い出していただけたらいいと思います。
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執筆者紹介
大関暁夫(おおぜき・あけお)(株式会社スタジオ02 社長) 東北大学卒。横浜銀行に22年勤務。経営企画、マーケティング、営業部門を歴任した。06年に独立し、コンサルタントとして「必ず実績が上がる営業チームづくり」をはじめ、企画、人事、営業面で数多くの企業を支援。若手時代には “リクルーターの神様”と呼ばれたこともある。採用に関する持論は「リクルーティングは自社を買わせる営業である」。
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