せまる「ストレスチェック」義務化
中小企業が取り組むべきメンタルヘルスとは
2015.08.10
労働安全衛生法の改正にともない、2015年12月から従業員50名以上の事業所に義務化される、従業員への「ストレスチェック」。目的は、企業のメンタルヘルス対策の充実・強化である。
「ストレスチェック」とは、労働者への質問とその回答から、個々のストレス状況を把握・診断するものだ。ストレスチェックの結果、高ストレスと判断された場合にはストレスチェックを行った医師などが労働者の同意を得て、事業所に通知できることになっており、メンタル不調を未然に防ぐ効果はもちろん、組織分析によって職場改善を図る効果も期待されている。
はたしてストレスチェックの義務化は企業に広まっていくのか、メンタルヘルス施策の現状と対策について、新卒の離職対策を軸に人材育成の研修を行う株式会社カイラボ代表取締役の井上洋市朗氏にお話を伺った。(※写真はイメージ)
ストレスチェックの義務化はうまくいくか?
井上氏は、厚生労働省の狙いどおりの成果をおさめるのは難しいのではないかと考えている。
その理由は、労働安全衛生法自体が企業内であまり重視されておらず、今回のストレスチェック義務化には具体的な罰則規定がないためだ。
例えば、障害者雇用の分野だと、法定雇用率を達成していない事業主は障害者雇用納付金を払わないといけないうえに、改善されなければ社名が公表される。しかし、ストレスチェック義務化に対しては、そういった具体的な罰則は定められていない。
メンタルヘルス強化の流れに対して、人事担当者の反応はどうだろうか。
「現場は『やらなきゃいけない』と感じているものの、施策に必要な予算確保には経営陣の説得が必要な場合も多く、ハードルを感じています。特に中小企業ではメンタルヘルス分野に本腰を入れて取りかかる経営陣はなかなか少ないのが現状です。大企業は労働基準監督署の監査も厳しいので、ほぼ100%なんらかのメンタルヘルス対策を実施しています。ですが、従業員50人程度の中小企業では、メンタルヘルスの施策に予算を投じる余力がない会社が多いというのが実情だと思います」(井上氏)
中小企業が取り組むべきメンタルヘルスとは
では、予算の少ない中小企業がメンタル不調者を減らすためにはどんな対策が有効になるだろうか。
多くの中小企業のメンタルヘルスの課題に向き合ってきた井上氏は次のように語る。
「メンタルヘルスの中でも一次予防に重点的にリソースをかけた方がいいと思います。一次予防というのは『メンタル不調になる前に日頃からストレスをためないこと』ですが、多くの企業はメンタル不調になりそうな人をケアする(二次予防)、メンタル不調になった人をケアする(三次予防)ことにばかり目を向けています。一次予防は具体的な成果が見えにくいという難点はあるのですが、メンタル不調者を減らす、離職率を減らすといった観点で考えれば効果は高いと思います」
今までとは違うメンタルヘルスのあり方が重要なようだ。
カイラボの場合、メンタルヘルスの問題を未然に防ぐための個人向けサービスとして、ストレスチェック義務化が決まるよりも前の2014年3月にストレス解消イベント紹介サイト「り~ふ」を開始した。個々人のストレスの度合いと、興味に合わせてストレス解消アクティビティを紹介し、「具体的な解消行動」を後押しするためだ。
「心の疲れをとる技術セミナー」や「犬とふれあうイベント」など具体的なアクティビティと、そのニーズがある個人をマッチングさせることで、「気軽にストレス解消」することを目指している。
今後はこうした個人向けサービスを法人向けにも展開するような例もでてくる可能性があるだろう。
「ストレスチェック」の義務化まで残り数カ月。予算が少ない中小企業にとっては、比較的低コストで実現できるサービス導入の選択も視野にいれつつ、メンタルヘルスへの取り組みを真剣に考えるべき時が来ているのではないだろうか。
執筆者紹介
松尾美里(まつお・みさと) 日本インタビュアー協会認定インタビュアー/ライター。教育出版社を経て、2015年より本の要約サイトを運営する株式会社フライヤー(https://www.flierinc.com/)に参画。ライフワークとして、面白い生き方の実践者にインタビューを行い、「人や団体の可能性やビジョンを引き出すプロジェクト」を進行中。ブログは教育×キャリアインタビュー(http://edu-serendipity.seesaa.net/)。
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